ホーム > NEWS > 松たか子と阿部サダヲが夫婦に扮した スリリングで衝撃的なラブストーリー 『夢売るふたり』舞台挨拶レポート
『ゆれる』『ディア・ドクター』で人間の深層心理を鋭く切り取り、数々の映画賞を総なめにした西川美和監督が、松たか子と阿部サダヲを迎えて描くスリリングで衝撃的なラブストーリー『夢売るふたり』が大阪ステーションシティシネマほかにて上映中だ。松たか子演じる主人公・里子とともに結婚詐欺を繰り返す夫・貫也を阿部サダヲが演じ、夫婦の結婚詐欺に巻き込まれていく女性たちを、田中麗奈や木村多江、鈴木砂羽らが演じている。本作の公開に先立ち、主人公・里子を演じた松たか子と、里子とともに結婚詐欺を繰り返す夫・貫也に扮した阿部サダヲ、貫也に騙されてしまう独身OL・咲月を演じた田中麗奈と西川美和監督が来阪し、舞台挨拶を行った。
松たか子と田中麗奈という女優ふたりと阿部サダヲが登場するという、大阪ではなかなかない豪華なキャストの登場に会場からは拍手とともに歓声が上がる中、まずは、それぞれの挨拶から舞台挨拶は始まった。松が「暑い夏に相応しい映画なのかどうかは、これから皆さんにゆっくり堪能していただきたいと思います」と苦笑いとともにコメントすれば、松扮する里子の夫役を演じた阿部が「まだまだ暑いですが、この映画を観ると色んな意味で涼しくなる人もいるんじゃないでしょうか」と笑顔で語り、劇中で演じた夫婦役さながらの息の合い方をみせていた。一方、阿部演じる貫也に騙されてしまう独身OL・咲月に扮した田中は、「私は作品を観て、震えるぐらいにゾッとしたので、夏にぴったりの映画だと思います(笑)」と、咲月の目線でコメントしていた。
そして、話はそれぞれが演じたキャラクターの話に。特に、松が演じた里子は夫を愛していながらも、夫に複数の女性との結婚詐欺を促す妻という、なかなか理解されにくいキャラクターだろう。里子を演じるにあたって松は「どこが難しいのか、里子の要素の何が自分の中にあるのかないのかがわからないことが難しいし、不安だと思いましたが、そういうことを自分は仕事にしているんだと開き直って、西川監督や阿部さん、田中さんも初めてご一緒する方が多かったので、きっと何とかなると思って飛び込みませていただきました」と笑顔で語っていた。また、そんな松と夫婦役を演じた阿部は「毎日がお祭りでした(笑)」と語りながらも、妻を演じた松と愛人である咲月に扮した田中に挟まれた立ち位置だったからか「普段はそんなことはないんですが、変な汗をかいています(笑)。なんだか悪いことをしている気分になるんですね(笑)」と言いながらも、次々に女性を騙していくという、かなりのモテぶりを発揮していた貫也のキャラクターについては「気分は悪くなかったです。でも、そういうキャラクターで売ってないですし(笑)。かっこよくも、背が高いわけでもない人がモテていくのがこの映画の面白いところかもしれませんね(笑)」と今までにないキャラクターを演じた戸惑いを語っていた。一方、貫也と騙されてしまう咲月を演じた田中は「松さんと阿部さんがふたりでいると、撮影中じゃなくても夫婦みたいに見えてくるんです。だから、思わずちょっと遠くから離れて見てしまうようなところはありました」と複雑な心境を吐露していた。
また、夫婦を演じた松と阿部について西川監督は「撮影に入る前からおふたりは夫婦みたいでした。皆さんしっかり脚本を読んできてくださって、キャラクターの根っこの部分を理解してくださっていたので、撮影自体はハードだったと思うんですが、過酷な撮影の中でもNGも出ませんでしたし、皆さんの情熱を感じました」と俳優陣を絶賛。一方で、松と阿部は夫婦役を演じ、田中からも監督からも“本物の夫婦みたい”と言われているにも関わらず、松は「とてもシャイな方なんですけど、どこまで受け入れていただいているのかわからないんですが、嫌な気には決してならない心地いい関係でした」と語っていたが、阿部は「どこまでくっついていいのかわからないし、あまりくっつくと嫌がられるだろうし」と戸惑っていたようだった。
それぞれ控えめながらもお互いについてのコメントが飛び出した中、最後の挨拶では、「自分と重ねて観るのか、誰か知っている人に重ねて観るのかはわかりませんが、こういう人たちも街の片隅に生きていると思って、寛大な気持ちを持って登場人物たちを見つめてもらえると嬉しいです」(松)、「今も、色んな人に感想を聞きたいんですが、この作品は観た後に、男と女とは、とか夫婦とは、など誰かと話し合いたくなる、面白い映画だと思います」(阿部)、「夫婦って何だろう、男と女の関係って何だろうとか、わからないところが面白いと思います」(田中)、「この映画を糸井重里さんが観て“観れば観るほどややこしい”と言ってくださったんですが、生きていくことや人と関係性を結ぶことってそういうことだと思うんです。自分で作って言うのもどうかと思いますが、この映画って観ても観ても飽きないんです。登場人物みんながイキイキしているので、涼しくもなりつつ、エネルギーが満ちた映画なので、熱くなる映画でもあると思います」(西川監督)と、それぞれ違う視点から作品をアピール。自分の今の状況によって、誰に感情移入するのか変化するスリリングで衝撃的なラブストーリーだ。
(2012年9月19日更新)
●大阪ステーションシティシネマほかにて上映中
【公式サイト】
yumeuru.asmik-ace.co.jp
【ぴあ映画生活サイト】
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