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ゲーム世代へ贈るリアルで普遍的な青春映画!
『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』

 ゾンビ映画への愛情たっぷりに描いたコメディ『ショーン・オブ・ザ・デッド』('04)、そして、刑事ものへのオマージュとサスペンス&アクションが爆発する『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』('07)という傑作を生んだイギリス出身の映画監督、エドガー・ライト。彼の最新作がブライアン・リー・オマリーの同名コミックを原作とした『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』だ。
 …このけったいなタイトルの作品、どんな内容!?と思うだろうが、ストーリーは読んで字の如く「スコット・ピルグリム君が、愛する彼女を手に入れるため、邪悪な元カレ軍団と戦う」という物語。と、あらすじを言うと、まさにただそれだけのお話である。

 

scopil1.jpgこれが主人公のスコット・ピルグリムくん。演じるのは『JUNO/ジュノ』('07)が絶賛されたマイケル・セラ。弱々しい童貞キャラが完璧なハマり具合。

 


 …というわけにもいかないのでもう少しだけ詳しく書くと、主人公のスコット・ピルグリム(マイケル・セラ)は無職の23歳。アマチュア・バンドのベーシストをしながら、ゲイのルームメイト、ウォレス(キーラン・カルキン)と暮らしている。見るからにオタクでひ弱な若者なのだが、何故かめちゃカワイイ中国人の女子高生の彼女がいる。ところが、ある日夢に出てきた不思議な女の子ラモーナ(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)に出会って一目惚れ。ただし、彼女と付き合うには、邪悪な元恋人7人と次々に決闘しなければらないという……果たしてスコットはラモーナと付き合うことはできるのか…!?
 まるでゲームやマンガのような荒唐無稽な設定(オタクのくせにリア充かよ!的ツッコミも含め)だが、なんとコレ、映画の中身もゲームやマンガそのものなのだ。突然遅いかかる元カレ軍団と戦うときは、格闘ゲームのようにゲージが表れたり、殴られるとアメコミのように「KPOW!!」などと文字が飛び出る。しかもあろうことかKOした相手は消え失せて、コインがバラバラと落ちてくる!!

 

scopil2.jpg当然レベルアップもします。何のレベルかは不明。

 


 重要なのは、この「ゲームのような演出」が、「スコット君の妄想の世界」ではないことだ。闘い終えたスコットは、落ちてきたコインを何事もなかったように拾い集める。もちろんスコットは超能力者でも格闘技の天才でもないのだが、戦闘シーンでは宙を舞ったり華麗なコンボを決めまくる。そんな展開に違和感を抱く人もいるかもしれない。しかしこれは、主人公であるスコットたちが物心ついた時から慣れ親しんできた、マンガやゲームといったポップ・カルチャーの世界と地続きであり、「ゲーム/現実」という二項対立の世界観ではないことに気付くはずだ。ゲームをオタクのものとして描くのではなく、若者たちにとって大切なアイコンとして描いているのがよくわかる。キスシーンでピンク色のハートが飛び散ったり、主人公がレベルアップした時の音響効果、バトルシーンの映像など、すべてがロマンティックな効果として映し出されている。1974年生まれである監督のエドガー・ライトも、まさにそんなゲーム世代。この映画には様々なゲーム音楽が使われているが、スコットがはじめてラモーナを夢に見る印象的なシーンなどで流れる『ゼルダの伝説』の音楽の使用許可を得るために、エドガーは任天堂に映画のクリップを送り「これは彼の世代の童謡」と評した手紙を書いたという。恋愛や成長といった普遍的な物語を、今の若者を通して描くうえで、これほどリアルな表現はないと監督は考えたに違いない。多くのゲームの映画化や、アメコミの映画化は、その「ゲームっぽさ」や「マンガっぽさ」を映画のマナーの中で排除しようとしてきた。しかし『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』は、そのゲームっぽさやマンガっぽさを最大の魅力にしてしまったのだ。

 

scopil3.jpgこんな感じでマンガそのままのコマ割も随所に登場!

 

 

 確かに、本作にはマンガやゲームに音楽など、あらゆるシーンに様々なネタが潜んでおり、その情報量はとにかく半端なく強烈だ。しかし、これは決して“ボンクラなオタクのための映画”ではない。いわゆるギーク・カルチャーの知識がなくても十分に楽しめるものになっているし、純粋な青春映画としての魅力に溢れているのが、この『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』なのである。ポップ・カルチャーにアクションに音楽…今ドキでハイパーな世界観に包まれているが、物語は実にシンプル。愛する彼女の過去に対峙し、乗り越えようとする、普遍的な青春の姿である。

 笑えて、興奮して、ちょっと切ない。そして恋愛を通じて、男の子や女の子が少しだけ成長する。ただそれだけだけど、それはとても重要で、心を震わせるのだ。




(2011年4月22日更新)


Check

Movie Data

(C)2010 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED

『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』
●5月14日(土)公開 テアトル梅田ほか

【公式サイト】
http://scottpilgrimthemovie.jp

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/153696/


COLUMN_GAME

バトルシーンは集中線出まくり! 必殺技出しまくり!

元カレ軍団との決闘シーンは、様々なゲームへのオマージュが捧げられる。素手での戦いは「ストリート・ファイター」シリーズなどの格ゲー、「ファイナル・ファンタジー」シリーズを思わせる召喚獣を使ったバトルもある。腰のベルトを抜くと剣になるのは「ソウルキャリバー」。またスコットが所属するバンドの名前「セックス・ボムオム」(Sex Bob-omb)の「Bob-omb」とは「マリオブラザーズ」シリーズに登場する敵キャラ「ボム兵」の英語名である。


COLUMN_MUSIC

戦闘シーンでは“ベース・バトル”も…。

「ショーン・オブ・ザ・デッド」でも音楽マニアがニヤリとするネタを仕込んでいたエドガー・ライト監督。今回も、セックス・ボムオムの演奏する音楽をベックが手掛けていたり、彼らと対決するバンドの音楽をブロークン・ソーシャル・シーンのメンバーが担当していたり、元カレ軍団のうちの2人として登場する斉藤祥太・慶太兄弟のシーンはコーネリアスの楽曲。またBeachwood Sparksの印象的なシャーデーのカバーなどゲーム音楽以外の使い方も見事!


USTREAM!!!

『スコット・ピルグリムvs.邪悪なオウエン軍団』

●5月9日(月)21:30~
出演:安田謙一/仲谷暢之/ほか
スペシャルゲスト:BOSE、ANI(スチャダラパー)

この映画の公開を記念して、関西での公開直前となる5月9日(月)21時30分より、USTREAMでの生中継トークショーが決定! 未公開映像のほか、ここには書ききれないスコピル関連ネタが満載です。そして、スペシャル・ゲストとして、ヒップホップ界きってのゲーマー、スチャダラパーの3人のゲスト出演も決定!!

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