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東京で13万人を動員した話題の展覧会
ホラー作家 梨×株式会社闇×
テレビ東京 大森時生による『恐怖心展大阪』開幕

東京・名古屋・大阪・札幌で約18万人が来場した展覧会『行方不明展』を手がけた、気鋭のホラー作家・梨と、株式会社闇、「イシナガキクエを探しています」「飯沼一家に謝罪します」などで知られるテレビ東京プロデューサー・大森時生による『恐怖心展大阪』が3月27日(金)に開幕した。

『恐怖心展』は、2025年7月18日から9月15日まで東京・渋谷BEAMギャラリーにて開催され、会期中の来場者数は約13万人を記録するなど、大きな反響を呼んだ。大阪会場では、東京会場で好評を博した展示内容に加え、大阪会場限定となる新作展示も公開されている。大阪開催にあわせて、『恐怖心展大阪』限定のアクリルキーホルダーなどのオリジナルグッズも展開されている。

チケットは発売中。平日券と日時指定券があるので、詳細は公式サイトをチェック!

恐怖心展は「恐怖心」に関する展覧会です。
恐怖心は喜怒哀楽のいずれの感情にも属しません。
※展示物の一部はフィクションです

© 2026「恐怖心展大阪」実行委員会




<梨 コメント>
私にとって、嘔吐物への愛は「恐怖」と表裏一体の感情でした。私が思い出せる範囲での始まりは、小学生の頃のバス遠足の時だったと思います。往復三時間ほどのささやかな遠足の帰り路で、私は後部座席の通路側に座っていました。バスが高速道路に差し掛かって、最後のトイレ休憩から十五分ほどが経ったその時、私はじわじわと胃を縮めるような嘔吐感に襲われました。今にして思えば、早めに先生へ申告するだけでどうにかなる程度の、ささやかな吐き気だったとは思うんです。でもその時の私にそんな勇気はなくて。先生に自分の吐き気を申し出るためには、少なくともいま窓際で私と喋っている親友と、補助席に座っている男の子に今の状況を伝えなければなりません。当時の私にはそれすら憚られました。脂汗とともに心拍数が上がる。当然ながらバスには座席ごとにエチケット袋が用意されていましたが、それを持つと自分が吐きそうなことがばれてしまうと思って、怖くてそれに触れることもできなかったんです。必死に鼻で呼吸をしようとしました。するんだけど、でもそのたびに何かが喉に込み上げてくる感じがして息が浅くなった。口で呼吸すると口が開くからだめだけど、鼻で呼吸すると、バスの中の人間の密集した匂いがするからだめで、そしたら親友が怪訝そうな表情でこちらを見てきました。緊張感で両手に力が入らなくなって頭が真っ白になっていく。喉の不快感を咳で誤魔化そうとした瞬間、喉の奥に生暖かいものが流れてきました。やばい、と必死にそれを抑えようとした次の瞬間に、あの酸味と苦みが混ざった不快な臭気がつんと喉の奥に広がって、反射的に腰がびくりと跳ねました。反射的に両手で口を押さえたけど、当然ながらすべてが遅すぎたんです。ごぷ、みたいなおとがして、指の間から、黄土色と茶色が混じった半固形の液体が間欠泉のように吹き出しました。白い粒状の何かが、バスの背凭れの網に絡みつきました。それはたぶん昼に食べた消化途中の米粒だったんだと思う。洋服の胸の辺りに、ぬるま湯のような温かい重量感が伝わりました。酔いのさなかであれほど薄れていた意識がみるみる明瞭になり、気分だけはすっきりと晴れてしまった。だから私は、いま自分のしたことを冴え冴えとした素面の頭で理解させられました。窓際の親友は少しだけ固まった後に小さく叫び声を上げて、反射的に私から飛び退くように窓際へ張りつきました。吐瀉物が自分の服や脚にかかるのを恐れたんだろうと思います。補助席の男の子は声を上げることはないものの、服や両手を液体にまみれさせた私をただ驚いた表情でまじまじと見つめていました。車内のざわめきは徐々に大きくなって、好奇と恐怖の声、そして文字通りの「汚いものを見る目」が私を囲い込みました。結局、私は車内前方で担任の隣に座らされて、色々な慰めを受けながら無言で俯いたまま学校を目指すことになりました。汚いだの臭いだのという声を抑制するためか、担任はバス車内でのお喋りを全面的に禁じたので、それ以降の車内には殆ど担任の慰めの声のみが響いていました。それが殊更、自分のしたことをみんなに触れまわってるみたいで私はとてもいやだったんです。でもそれを先生に言えるわけもない。勿論応急的な洗浄はされたものの着替えはなかったから、吐瀉物とミネラルウォーターがしっとりと湿った体操服を着たまま、ただ自分の膝を注視していました。そこから高校生になるまで、私は極端に「嘔吐」やそれに類する概念を嫌っていました。つわりや酒酔いのフィクショナルな描写は勿論、アニメや漫画における吐血の表現とかも無理でした。現実でも、誰かが乗り物酔いや体調不良で吐き気を催しているとどうしようもなく怖くなり、その場を離れてしまうから、介抱もしない薄情者として叱責されたことも一度や二度ではありません。恐らく、自らの汚物を露呈させるという社会的なタブーと、それに伴う周囲からの蔑視への忌避感がこの恐怖の根底にあるのだろうと思います。あの日の補助席に座っていた男の子のことが当時少し気になっていたことも関係あるのかもしれませんが、とにかく「嘔吐」を想起させる場にいること自体が私は嫌になりました。そんな生活は、高校一年生ごろまで続いていたと思います。そんなある時、家族共用で使用していたデスクトップパソコンでネットサーフィンをしていた際に、私のその意識は変容することになります。当時のインターネット上では、斬首や死体損壊といったショックビデオの類を無理矢理に見せる悪戯が横行していました。多くがスナッフ紛いのグロテスクな動画や好事家向けのポルノグラフィーだったと思いますが、多分に漏れず私もその悪戯に引っ掛かったのです。後に調べたところ、それは界隈では有名なアダルトビデオだったそうです。ピアノを主体とした穏かなBGMが流れる中、ふたりの外国人女性がティーカップに排泄し、その内容物や互いの嘔吐物を咀嚼し絡み合うというもの。一般的には前者のスカトロプレイが有名らしいのですが、私が最初に見たのはフルサイズ動画を途中から切り取ったものだったようで、それは後者の嘔吐シーンが主でした。最初はブラクラじみた悪戯として反射的に目を背けたのですが、ほどなくして私は、自分がその嘔吐シーンを「見れている」ことに気付きました。少なからぬ恐怖も感じてはいるのですが、以前までのように鳥肌が立ち呼吸が浅くなるような感覚はありませんでした。寧ろ、いま目の前の画面で互いの吐瀉物を舌で転がしているその光景に、どこか憧れにも似た昂奮を感じている自分に気付きました。多分、自分の中で嘔吐が極端なタブーとして認識されたことによる、反転された快楽だったのだと思います。露出癖や屍姦愛好にも通じるような、こんな駄目なことをしてしまっている、という悪徳に対する悦び。勿論それなりの恐怖もあったはずで、それを和らげようとする防衛機制じみた快感が先述の昂奮とオーバーラップし、私の中での憧憬として突然変異を遂げたのだろうと思います。兎にも角にも、私はその瞬間から、嘔吐への「恐怖」が「愛」に変換されるようになりました。エメトフィリアという言葉を知ったのもその時期で、件のアダルトビデオの販売サイトから幾つかのリンクを辿っていった結果、嘔吐ものが一つのジャンルとして確立されていることを理解しました。それからというもの、私はたくさんの嘔吐系ポルノを漁るようになりました。特に気に入ったのは「WAM」、つまり「Wet And Messy(ウェットアンドメッシー)」ものに属する嘔吐漫画でした。ウェットは「濡れる/濡らす」、メッシーは「汚れる/汚す」。つまりウェット&メッシーは、あらゆる方法・手段によって着衣や肌が穢される様子を嗜好するものの総称です。分かりやすいところだと「ずぶ濡れ」とか「ボディペイント」が有名でしょうか。私の場合は吐瀉物ですけれど。衆人環視の状況で、誰かが嘔吐している様子を描いた漫画やSS。例えば電車の中や教室の中、もしくは人の往来の多い通学路などのシチュエーションが数としては多いと思います。そこで描かれている子たちは得てして予期しないタイミングで嘔吐しているから、袋などの用意もなくて。結果、お腹か口を押さえた状態で飛び出した吐瀉物はその服を汚して、黄土色やベージュ色の斑模様を形作っている。私は、そういうシチュエーションを好んでいました。あれだけの傷を受けたはずなのに。自分でも変だと思います。私は元々、嘔吐が嫌いでした。見るのも感じるのも怖かった。というか、今でも気分によっては無理です。嘔吐が怖くなる時と、気持ちよくなる時の波みたいなのがあって。ただ風邪で病院に行くだけでも吐き気を持つ人がいるかもしれないと思ってかなり勇気がいるし、酷いときは自分の描いた文章や漫画さえ読み返せない。でも、ほら、見てください。このブックマーク。私がブックマークしているのはどれもこれも嘔吐ものの漫画ばかりで、このブックマークのひとつひとつが、私の「こわさ」と「気持ちよさ」の集合体なんです。時々、自分で自分が分からなくなることがあります。先生、恐怖って、いったい何なんでしょうか?

<頓花聖太郎(株式会社闇)コメント>
恐怖心は、本能でありながら、文化によって受け取り方が大きく変わるものです。
大阪は人と人の距離が近い街です。その近さが、新たな恐怖心の回路を開くかもしれない。
土地が変われば恐怖そのものが変わる。その差異が、恐怖心の正体に近づくヒントになると考えています。

<大森時生(株式会社テレビ東京)コメント>
恐怖心というのは、不思議な感情です。
何か恐ろしいものを見たときだけでなく、むしろ何も見えていないときにこそ、こちらの内側で大きくふくらんでいくことがある。
「恐怖心展」は、そんな輪郭の定まらない感情を集め、覗き込み、触れようとする試みです。

(2026年3月27日更新)


『恐怖心展大阪』

日程:3月27日(金)~5月10日(日)
営業時間:11:00~19:30(最終入場は閉館30分前まで)
※イベントの体験所要時間は約90分
会場:グランフロント大阪 北館B1F ナレッジキャピタル イベントラボ(大阪府大阪市北区大深町3-1 地下1階)
入場料:2300円(税込)
※券種は平日券と日時指定券がございますのでご注意ください
※小学生以上は有料
【お問合せ】https://forms.gle/S8UzYAhoKKsJBVxV6

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