六甲山の自然と現代アートの息吹を感じる
「六甲ミーツ・アート芸術散歩2021」開催中!
すっかり秋の風物詩となった、神戸市六甲山上で自然を散策しつつ点在する現代アート作品を楽しむ展覧会『六甲ミーツ・アート芸術散歩』が、今年も9月11日(土)に開幕し注目を集めている。
明治時代に居留外国人によってレジャーの山として開発された六甲山。素晴らしい眺望や豊かな自然が今もなお多くの人に愛されているが、『六甲ミーツ・アート芸術散歩』は現代アートとともにさらに多くの人に六甲山の魅力を伝えることを目指し2010年に始まった。これまでに延べ400組以上のアーティストが参加し、さまざまな作品を展示。アートファンをはじめ、観光やレジャーで六甲山を訪れる人々を楽しませてきた。秋から冬へと移り変わる六甲山の自然環境により作品の印象が変化するのも“自然”が会場ならではの魅力。また一部の作品はアーティストによって会期中でも作品に手が加えられることもあり、何度も訪れる人も多い。
今年の『六甲ミーツ・アート芸術散歩2021』の見どころは?
今回の『六甲ミーツ・アート芸術散歩2021』では、六甲山上の12会場などを舞台に、招待19組と公募で選出された15組の計34組のアーティストによる作品が展示されている。世界で活躍している芸術ユニット・明和電機をはじめ、女優・写真家として活躍中の松田美由紀、注目のアーティスト神戸出身の束芋(たばいも)ほか、多彩なアーティストが参加。絵画から立体オブジェ、映像作品など幅広いジャンルの作品が、屋外や屋内の特徴的な会場ロケーションの中に展示され、唯一無二の作品になっているのも魅力となっている。注目の作品をピックアップ紹介。
「オクユク」束芋 (風の教会エリア)
風の教会エリアにある、建築家安藤忠雄氏設計の「風の教会」では、神戸出身のアーティスト束芋(たばいも)が、教会内の空間と対話して感じた感覚や感情を、アニメーション映像化し天井にプロジェクターで投影。この空間でしか表現・成立できない映像作品が観られると注目されている。
「DECAP Revolution 他」明和電機 (ROKKO森の音ミュージアム)
ROKKO森の音ミュージアムでは、明和電機が80年前の巨大な自動演奏オルガンの心臓部であるパンチカードに代えて、コンピューターの制御によりオリジナル曲を演奏。迫力ある音楽とコミカルなロボットの動きに、自然と楽しい気持ちにさせてくれる。
「キオクノカナタへ」清水千晶 (天覧台)
「キオクノカナタへ」清水千晶 (天覧台/TENRAN CAFE内)
天覧台で展示されている「キオクノカナタへ」は、公募で集まった248作品の中から「六甲ミーツ・アート芸術散歩2021 公募大賞」グランプリにも選ばれた作品。かつては大切にされていたものや共に過ごしたものがいつしか廃棄物に。古着やハギレを使った衣装をまとったモデルが六甲山の豊かな自然の中で溶け込むことで、廃棄物となってしまったものたちが再び輝きを取り戻すことを表現している。TENRAN CAFE内には作品に使われた衣装や制作過程などが展示されており、より一層作品を楽しめる趣向となっている。
「山々を泳ぐ方舟」 アートユニット「パルナソスの池(淺井裕介・高山夏希・松井えり菜・村山悟郎)」(旧パルナッソスの休憩小屋)
旧パルナッソスの休憩小屋で展示されている「山々を泳ぐ方舟」は、アートユニット「パルナソスの池(淺井裕介・高山夏希・松井えり菜・村山悟郎)」が、通称“廃墟の女王”とも呼ばれる旧摩耶観光ホテルに滞在し、窓枠を模したステンドグラスや雨漏りを利用して描いた絵画や写真を制作。ホテルに残されていた遺物などとともに、会場全体を使って表現した作品となっている。廃墟となったホテルから山地開発の限界を示しつつ、次なる景色や未来も喚起させる。
「ひとりオリンピック」しみずきみこ(グリーニア外周フェンス)
グリーニア外周フェンスに展示されている写真作品「ひとりオリンピック」は、「六甲ミーツ・アート芸術散歩2021 公募大賞」奨励賞にも選ばれた作品。セルフポートレート写真でいろいろな道具やウエアを駆使してオリンピック種目を表現している。道路沿いなので、車で行くときは必ず駐車場に停めてから徒歩で。
「光彩」 松田美由紀 (ROKKO森の音ミュージアム)
ROKKO森の音ミュージアムで展示されている松田美由紀の作品「光彩」は、『ジェンダー』をテーマに、柔らかさ、美しさを表現する女形・早乙女太一をモデルにして、性別関係なく共通する感情と、誰もが両方の性質が交互に現れて生きていることを表現している。
ほかにも見ごたえのある作品が揃い、六甲山がもつ自然のパワーと、作品に込められたアーティストのパワーが相まって、元気をもらえるはず。会期は11月23日(火・祝)まで。ゆっくり鑑賞していると、とても一日では回りきれないほど。周遊には、会期中に有料施設6会場に入れる「鑑賞パスポート」の購入がお得でおすすめだ。
「ちゃぶ台会議~地球は今も蒼いのか」作田優希 (六甲ガーデンテラスエリア)
「無題」飯沼英樹 (六甲ガーデンテラスエリア)
「僕の話」穂波梅太郎 (六甲高山植物園)
取材・文・撮影:滝野利喜雄
(2021年9月17日更新)
Check