近年世界的評価の高まる美術家
工藤哲巳の国内20年ぶりの大回顧展
昭和後期に活躍した美術家・工藤哲巳の、日本では20年ぶりとなる大回顧展「あなたの肖像 -工藤哲巳回顧展」が、11月2日(土)より国立国際美術館にて開催。
工藤哲巳は、東京藝術大学在学中から読売アンデパンダン展に出品し、篠原有司男や荒川修作らとともに「反芸術」世代の代表格となったが、1962年国際青年美術家展大賞受賞を機に渡仏。その後、約20年の間パリを本拠にヨーロッパを活動の場として、文明批評的な視点と科学的な思考とを結びつけた独自の世界を展開した。眼球や鼻がトランジスタとともに養殖され、肥大化した大脳が乳母車に乗せられ、男性器が小魚と一緒に水槽内を泳ぎ、遺伝染色体による綾取りをする人物が鳥籠の中で瞑想する…。そんな工藤の作品はおぞましく不気味に見えるかもしれない。ただそれは、悲惨な未来の地獄郷ではなく、そのようにしか生き残れない人間と自然とテクノロジーとが渾然一体となった、逆説的なパラダイスと言えるものだ。特に、今回国内では50年ぶりに公開される伝説的大作《インポ分布図とその飽和部分に於ける保護ドームの発生》(ウォーカー・アート・センター蔵)は、展示室一部屋を占有したインスタレーションの先駆であり、赤瀬川原平はこれを最大傑作と評している。
1990年の没後、国内では、1994年に国立国際美術館で「工藤哲巳回顧展―異議と創造」が開かれて以来20年ぶりの大回顧展で、国内外の代表作約200点が勢揃いする。近年、フランスやアメリカなどでも回顧展が開催され、ニューヨーク近代美術館が工藤の作品を収蔵するなど、国際的にも再評価の気運が高まっている中、注目の展覧会である。なお、本展で紹介される作品の多くは日本初公開で、前回の回顧展の約1.5倍の作品や資料によって工藤哲巳の全貌に迫る内容となっている。
また、この開催にあわせ、工藤が活躍した同時代の国内外の作家を紹介すると同時に、工藤に以前から関心を示してきたアメリカ西海岸の作家の作品を展示する「コレクション3 『あなたの肖像―工藤哲巳回顧展』にちなんで―1960年代の『反芸術』から、今日の美術まで」も同時開催される。
あなたの肖像
▼11月2日(土)~2014年1月19日(日)
国立国際美術館
個人:一般850円 大学生450円
団体:一般600円 大学生250円(団体は20名以上)
高校生以下、18歳未満無料
10:00~17:00(金曜~19:00)。入館は閉館の30分前まで。休館:毎週月曜日、年末年始(12月28日(土)~1月4日(土))。ただし、11月4日(月)、12月23日(月・祝)、2014年1月13日(月・祝)は開館、11月5日(火)、12月24日(火)、2014年1月14日(火)は休館
※心身に障害のある方とその付添者1名は無料(証明できるものをご提示いただく場合があります)。本料金で「コレクション3 『あなたの肖像―工藤哲巳回顧展』にちなんで―1960年代の『反芸術』から、今日の美術まで」もご覧いただけます。本展無料観覧日:11月3日(日・祝)
国立国際美術館
06-6447-4680(代)
(2013年10月25日更新)
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工藤哲巳 1971年 撮影:工藤弘子 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
工藤哲巳 ハプニング「インポ哲学」 ブーローニュ映画撮影所(パリ)1963 年 2 月 撮影:工藤弘子 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
工藤哲巳《あなたの肖像》1963年 高松市美術館蔵 撮影:高橋章 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013
工藤哲巳《人間とトランジスタとの共生》1980-81 年 国立国際美術館蔵 撮影:福永一夫 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2013