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これがアール・ブリュットの最前線
欧州有数のコレクションを公開!

 ヨーロッパにおけるアール・ブリュットの最新動向を紹介する展覧会『解剖と変容:プルニー&ゼマーンコヴァー』が、2月4日(土)より、兵庫県立美術館にて開催される。

 

 アール・ブリュットとは、専門的な美術教育を受けていない作り手が、芸術文化や社会から距離を置き制作された作品のこと。「生の芸術」「素材のままの芸術」といった意味を持つフランス語で、英語ではアウトサイダー・アートと訳されることもある。19世紀後半に、精神科医が精神疾患のある人の創作物に関心を寄せたことがきっかけとなり、1920年代頃にはヨーロッパの前衛的な芸術家に注目されるようになった。このアール・ブリュットという概念は、後にフランスの美術家ジャン・デュビュッフェ(1901-1985)が提唱したもので、当時の美術界のアカデミズム化に反発したデュビュッフェは、正規の美術教育を受けていない人々が内発的な衝動の赴くままに制作した作品を高く評価し、既成の美術概念に毒されていない表現にこそむしろ真の芸術性が宿っていると主張した。これらの作家は、精神疾患のある人のみならず、霊能者やホームレス、知的障がいのある人から独学で制作を始めた老人など多種多様で、近年では専門の美術館や画廊も各地にあり、前衛美術の一分野として確立されている。
 
 なかでも、フランスの映像作家、ブリュノ・ドゥシャルムが1999年に設立した非営利団体<abcd>は、作品収集だけでなく記録映像の製作や出版、展覧会など、アール・ブリュットに関する様々な活動を行っており、コレクションとしては世界有数の重要なもののひとつだ。本展では、その<abcd>の所蔵品約100点と関連資料によって、生物の形態の解剖学的変容をテーマに、チェコ出身の画家アンナ・ゼマーンコヴァー(1908-1986)とルボシュ・プルニー(1961-)を、日本で初めて本格的に紹介する。

 

 ゼマーンコヴァーは、40代の半ばに、子どもたちが自立したことで精神が不安定になり、彫刻家の息子の勧めで絵を描くようになる。彼女が描いた空想上の植物や花などの作品は、世界各地のコレクションに収蔵され、アール・ブリュットの世界では代表的な作家のひとりだ。また、プルニーは、幼いころから絵を描くこと解剖することに強い関心を持ち、身体をテーマにした彼の作品には、インクのほかに血液や毛髪や皮膚など、生体から取られた材料が用いられることもある。近年最も注目を集めるアール・ブリュットの作家のひとりである。

 

 こうした作品のほかに、<abcd>創立者のブリュノ・ドゥシャルムが2009年に制作したドキュメンタリー映画『Rouge Ciel 天空の赤』(93分)も上映される。ヘンリー・ダーガーやジョージ・ワイドナーなどアール・ブリュットの重要作家を紹介する映像のほか、ジャン・デュビュッフェなど関係者へのインタビュー、アール・ブリュットの歴史を紹介するアニメーションなど多彩な内容でその本質に迫る。本展覧会にあわせて日本語字幕版として本邦初公開となる貴重な機会。展示室内の特設シアターで毎日上映される。




特別展「解剖と変容:プルニー&ゼマーンコヴァー」

発売中 Pコード:764-974
※販売期間中はチケットぴあ店頭での直接販売および通常電話0570(02)9999にて予約受付。インターネット販売はなし。
▼2月4日(土)~3月25日(日)
兵庫県立美術館
前売一般1100円 大学生700円
当日一般1300円 大学生900円
※前売は高校生・65歳以上取り扱いなし。10:00~18:00、金・土曜日は20:00まで。最終入場は閉館の30分前まで。休館日は月曜日。中学生以下は無料。

※『Rouge Ciel 天空の赤』(93分)上映スケジュール
10:20/12:20/14:20/16:20/*18:20(*金・土曜のみ)

兵庫県立美術館
078-262-0901
http://www.artm.pref.hyogo.jp/

(2012年1月16日更新)


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ルボシュ・プルニー《無題》2008年 abcdコレクション
アンナ・ゼマーンコヴァー《深みからの上昇》1965年頃 abcdコレクション
ルボシュ・プルニー肖像写真 撮影(c)マリオ・デル・クルト 2010年
アンナ・ゼマーンコヴァー肖像写真 撮影年代不詳 abcdコレクション