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「古き良き上方の空気を、ちゃんと残したいんです」
“信念の人”桂南光が語る、落語とパリと現在地

桂文珍、桂南光、笑福亭鶴瓶という、ウマの合った大御所の顔合わせによる大人気の三人会「夢の三競演」の季節が、今年もやってきた。同会では阿吽の呼吸が生み出す和やかで愉快な雰囲気の中、3人の落語家がそれぞれの光を放つ。今回は、今年もパリでバカンスを楽しんだという桂南光にインタビュー。32年ぶりに上方落語協会への復帰を果たしたことを自身の重大ニュースに挙げるも、今の若手噺家には言いたいことがあるようで…。他者に迎合せず、あくまでも潔いその姿は、まさに“信念の人”。時にバカンスを満喫しながらも、大好きな落語に生きる…そんな豊かな人生を語ってくれた。

――今年もパリでの長期休暇を堪能されましたが、パリも酷暑でした。

桂南光(以下・南光) 「4日間くらい40度近くあって、それでしんどくなってね。日本人で鍼をやってる人がいてるっていうのを聞いて、調べて行きました。その人はパリにずっと住んでて俺のことなんか知らないから『どうしたんですか?』と。こうこうこうでって言ったら、私の体をガッーと触って『背骨がちょっとずれてますし、それで圧迫されてるんです』。そこから鍼を打たれて、指圧もされて...その間に寝てしまったんですよ。それで、すごく楽になって。『パリでこんな鍼と指圧してもらって感動ですわ。明日も昼間に来たいんですけど』て言うたら『来なくていいです。もう治ってますから』と。サッカー選手とか、オペラ歌手とか、ちょいちょい来てはるみたいですわ。俺は、その人に出会うためにパリで具合悪くなったんだと思うぐらい。来年は、その人に会うためにパリに行きたい。その人の弟子になって鍼をやったら、パリで生きていけるんちゃうかなと思てます」

――そんなグローバルな南光さんにとって、2026年の重大ニュースとは? 

南光 「やっぱり、上方落語協会に戻ったことだと思いますね」

――32年ぶりの復帰となられた...。

南光 「昔の上方落語協会は本当に親睦団体で、その分、会計もものすごく杜撰やって、うちの師匠(桂枝雀)と一緒に一門で文句言ったんですけど、まったく対応されないので師匠が『しゃれで、我々だけ抜けようか』と。そうこうするうち師匠が亡くなってしまい...。やがて(六代)桂文枝師匠が会長になられて『戻りませんか?』と言われたんですけど、『師匠がいないので、私が勝手に戻るのはようしませんので』言うてね。本当に何回も何回も言っていただいてたんですけど、文枝会長も『おっしゃることは、よう分かりますから。また機会があれば』と」

――それが一転して復帰されたのは、何かきっかけがあったんですか?

南光 「今年になって、落語とは全然関係ない人に『南光さんとこも、南天さんという弟子ができ、そこに天吾君という孫弟子もできて。南光さん一人やったらええけど、弟子と孫弟子がいてるねんから、やっぱり戻った方がええんちゃいますか?』て言われてね。そんなこと考えたことなかったんやけど」

――理事会の満場一致で、南光さんの復帰と、南天さん、天吾さんの入会が叶いました。桂文枝最高顧問に熱望され、すぐに天満天神繁昌亭20周年記念公演2日目にはトリの高座と懐かしの漫才も披露されました。復帰されて、心境の変化はありますか?

南光 「復帰して、どうこうというのはありません。ただ、今まで付き合いのなかった人が『お稽古してください』とか言うてきはってね。俺が良しとしてない人も来るので...。私らの若い頃は噺家の人数がいませんでしたからね。今は、そういう意味でも切磋琢磨してて。ただ、私らとはまったくセンスとか感覚の違う人がいっぱい出てきてるから、いいなぁと思うのと、なんかちょっと鬱陶しいなぁというのがあります。だから、文珍兄さんが『上方落語若手噺家グランプリ』をやってはるのはすごいなと思いますよ。若い人を育てて...とかいう気が私はあまりないですし、自分の弟子に対しても気ぃが合わなんだら辞めてもらってましたしね。その中で唯一、南天が残って、そこに天吾が来たということで、うちは小さい一門でやっていきます」

――そんな南天さん、天吾さんに、伝えていきたいことは?

南光 「新作を作るのは好きにしたらええけども、昔からの師匠や大師匠から教えてもらった噺は噺家全部の財産やからね。それを壊すようなことはしないで、その時代にできたものは、その時代を感じられるように。どうしても勝手に触ってはいけない、壊してはいけないものがあるんでね。今は、ウケようと思って噺全体を壊すような人もいますから」

―― 一方、今では通用しない言葉や固有名詞も増えてきました。時代の空気も伝えながらのアレンジというのは大変な作業ですよね。

南光 「難しいですよね。今、江戸の人間国宝になってはる五街道雲助さんは、若い頃から(立川)談志師匠が『あいつの噺には、江戸の風が感じられる』って言うてはって。私はそんな風は出せませんけど、でも何か『古き良き上方の、そんな世界があったんだな』っていうのを感じてもらえれば。だから言葉を替えたりもするんですけど、これだけは残しておきたい! そんな言葉は聞いたことないけど、という...例えば『きこんかいにさせてもらいます』とか。今の日常にはないけど、ちゃんと残していきたいなと思てます。ただ、弟子や孫弟子がそう感じなければ、そうしないと思うし。今のお客さんが落語に対して、どういう面白み、楽しみを感じているか分からなアカンのでしょうね。そのあたり、文珍兄さんはすごい分かってはるから、若い人にも分かるように今の時代をとらえてはる。でも私はそんな器用なこと、ようしませんから『南光さんの落語、古臭いなぁ』って言われてもいいんですよ。でも、その古臭いのを良しとしてくれる人が100人でもおれば、噺家としてやっていけるんじゃないかなと思いますけどね」

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――もうすぐ75歳を迎えられますが、この年齢になられて改めて感じることは?

南光 「私のイメージとして70代ってもっとトシいくと思てましたけど、気持ちは35、36歳ですかねぇ。こないだ大村崑先生にお会いしたんですが、94歳でお元気でね。『私が何で元気か教えます』言うて、スクワットのやり方と、"かきくけこ"を教えてくれはった。か...感謝する、き...興味を持つ、く...工夫する、け...健康を意識する、こ...恋をする。最後の恋をするは、男女の恋だけじゃなくて、何かに気持ちを動かすという。私も、これからは大村崑先生にならって『かきくけこ』でと。ただ、落語家としてはトシを重ねて決して良くはなりませんからね。桂米朝師匠が『トシいったら、もうごまかし、ごまかしやらないかんことがあるから』とおっしゃってたのが、今、よう分かりますわ」

――では、そんな南光さんが今、力を入れておられる噺を教えてください。

南光 「最近は、『五貫裁き』という長いネタをコンパクトにしてやってます。あとは『厩火事』。一応"国際的男女問題研究家"やから、そんなマクラを作ってやろうかなと」

――国際的男女問題研究家として、『厩火事』に惹かれるところとは? 

南光 「未練とか惚れた弱みというか、そういう女の人が可愛いなと思うので。あんまり、そういう人と出会ったことないんです。だって男としてある種、理想なんですよ。ちょっと年上で働いてくれて、自分がヒモみたいに暮らせるという。ただ、こんな声で、このトシでやるっていうのは...ねぇ。まあ別に化粧して女になるわけやないから、キッカケさえあれば、年増の女の人の未練とかを表現できるんじゃないかなと思ってます」

――実際にそういう方と出会ったら、恋に落ちますか?

南光 「このトシで5歳年上いうたら80や! そんなん介護に回らなアカンがな(笑)」

――では三競演の話題へ。南光さんが思う、他のお二人の魅力を教えていただけますか。

南光 「文珍兄さんは、すべてが見どころ。鶴瓶さんは落語はもちろんやけど、『家族に乾杯』なんかホンマにようやるなと思いますね。僕は見ず知らずの人と話しするの大嫌いなんでね。失礼な人とかおるじゃないですか。俺やったら撃ち殺したろかなと思うような人を、『やぁ』とか言うて。ホンマに人間が好きなんでしょうね。あのトシで、あんだけ今の時代にウケるふたりは、すごいなと思いますよ。存在自体が面白いんじゃないですか」

――そうですね。特に鶴瓶さんは、いい意味で稀代の人たらしですよね(笑)。

南光 「本心は分かりませんけど(笑)。最終的に鍋売ったり、布団売ったりするようなことがあるかもしれないですね。私もこの人に言われたら、買いますもん」

――そんな3人でお届けする「夢の三競演」の見どころは何でしょう?

南光 「もう大阪は22回目でしょ。マンネリなんですよ。このマンネリがいいんじゃないですか。ずーっと来てくれるお客さんに『おもろいでっか?』って聞いたら、『あんたら3人おったらええねん。なんかいっつも3人で楽しそうやな』と。みな、面白いと思て来はんのかなぁ。で、帰りに『いうほどおもろなかったな』とか思って帰りはるねんけど、『来年こそは、面白いんちゃうかな』という(笑)。そういうのを、お客さんに与えてるんでしょうね。それが、鶴瓶さんのやり方でしょう(笑)」

――お客さんは、鶴瓶さんの"三競演商法"にかかっていると...。

南光 「そう。だから、こっちも本気になったらもっと面白いこと出来るねんけど、みんな押さえて7割ぐらいしか出してない。何か食べて『美味しいな、これ。もうちょっと食べたいな』と思う時あるでしょ。でも、『いや、もう今日は売り切れです』みたいな。そこで、『来年こそ美味しいもんが食べられるんちゃうかな』...って思わせる作戦ちゃいますか。せこい作戦ですけど、20年やってきてるから、こうなったら本物ですわ(笑)」

取材・文/松尾美矢子
撮影/大西二士男




(2026年11月 6日更新)


夢の三競演2026
~三枚看板・大看板・金看板~

【東京公演】

▼12月18日(金)18:00
LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

Pick Up!!

【大阪公演】

11月8日(日)一般発売 
Pコード:545-106
▼12月24日(木)18:00
SkyシアターMBS
全席指定手ぬぐい付き-8500円 指定席-7300円 
[出演]桂文珍/桂南光/笑福亭鶴瓶
※未就学児童は入場不可。車いすスペースをご利用のお客様は、スペースに限りがございますので、チケットご購入後お早めに劇場へご連絡ください。営利目的の転売禁止。公演中止の場合を除き、払い戻しはいたしかねます。ご了承のうえ、お申込みください。劇場サイトに記載の注意事項と最新情報をご確認のうえ、ご来場ください。
[問]SkyシアターMBS■06-6676-8466

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