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「ふたりとご一緒できるのは、私の中では刺激です」
落語会の超人・桂文珍が語る、芸の神髄と「夢の三競演」

桂文珍、桂南光、笑福亭鶴瓶という、ウマの合った大御所の顔合わせによる大人気の三人会「夢の三競演」の季節が、今年もやってきた。同会では阿吽の呼吸が生み出す和やかで愉快な雰囲気の中、3人の落語家がそれぞれの光を放つ。恒例のインタビューは、桂文珍からスタート。一番の年長ながら、AIなどをテーマに時代にアジャストした新作を生み出す一方、古典落語にアレンジを加え変幻自在に独自世界を泳いでいく。若手の落語家育成にも尽力する落語界の超人が語る、落語という芸の神髄、そして落語家が年齢を重ねるということは? さらに、とっておきのプライベートも明かしてくれた。

――まずは、ご自身にとっての2026年の重大ニュースから教えてください。

桂文珍(以下・文珍) 「ゴルフでベストスコアが出たんよ。前半アウトが40の後半インが39で、トータル79。もうちょっとでエージシュートいうて年齢と一致したんやけど」。

――ゴルフは年々、上達されてるんですか? 

文珍 「すごい上達してるねん(笑)。でも、これは頻度を上げればええだけのことでね。練度というか、回数をやれば、無駄な動きをしなくなるし、芯がぶれなくなるし、ジャストミートできる。落語と一緒! 落語も回数をやれば、お客さんに合わせてジャストミートできるようになってくるのよ。まぁ、ベストスコアは、僕の中でも楽しい出来事やったね。ゴルフをすると、"寄せ(寄席)"が上手くなる。バンザーイ(笑)!」

――ご実家のある丹波篠山に帰られて、学生時代の同級生の方々とゴルフを楽しまれる...心身ともに豊かなプライベート時間の過ごし方ですね。

文珍 「自分の時間を楽しむというのは、大事なことやね。この三競演に来はる人も、みなそうやと思いますよ。たまに、お客さまとお話しする機会があって。その方は、僕と同じぐらいの年齢かなぁ。三競演とか、僕の独演会に来るのを目的にして『それに体調を合わせて来てるんです』言うて。面白いねん、そのおばちゃん。僕のマネージャーをつかまえて『ちょっと写真撮って』。自分の着物姿を撮ってもうて『師匠に見せといて』。...何でそんなん見なアカンねん(笑)! でも、可愛いやろ」

――まさに、落語会は"ハレ"の日ですね。

文珍 「そういうことです。その方はね、いろんな落語のバリエーションもご存じで、それを楽しみにお越しになる。『いろんな噺があるから、物語の中で自分が遊ぶんや』と。頭の中でね。その一時だけ、物語に自分を投影して遊ぶらしい。疑似体験する楽しさというか、自分の時間をとても大切にしたいというお気持ちですな。ありがたいこっちゃね」

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―― 一方、今年も『上方落語若手噺家グランプリ』の審査委員長を務められました。

文珍 「ええ子、おりまっせ。そういう子がすくすく伸びるように、土俵、つまり場所を作ってあげないといかんなぁと。冒頭にも申し上げたように、練度を、回数をやらさんことには、ね。ファンっていうか、そういう人たちが出てきてやってほしいですな」

――今回、優勝されたのは桂三実さん。終演後、文珍師匠から「舞台がかわいくない」と言われ、かなり悩んでおられるご様子でしたが...。

文珍 「才能があるというのは、その裏返しがあるのよ」

――愛敬というか、芸人としての、いわゆる"ふら"というか。

文珍 「芸人として大事な部分やね。そのまま小器用なだけで終わる子もおれば、ある時、化ける子もおる。でも、愛敬だけではトシいくほどキツイよ。また、シャープな切れ味だけでもキツイのよ。結局、最終的には"人間"。鶴瓶ちゃんなんか、それだけで引っ張ってきたんやから。『ええ人やなぁ』『ええとこやなぁ』『綺麗やなぁ』...あの人は3つしか言葉知れへん。ほいで、あそこまでいけるねんで(笑)。人間や。人間ができてるねん」

――その人間性を養う秘策はありますか? 

文珍 「難しいこと聞くなぁ。その人の心がけとか、関わった人物に恵まれるとか、運とかね。でも、基本的には本人の姿勢やろね。そういう子が伸びますわな」

――これまではマスメディアで人気落語家が1人でも出れば、落語界自体も盛り上がると言われてきましたが...。

文珍 「それは、昔のノウハウでしょうね。今はねぇ、分からん。つまりメディアが多様化したんでね。やっぱり基本的にはライブで力をつけてる子が一番強いですね。そういうのに対応できる才能がある人。まぁ、クソ生意気なぐらいの方がええのよ。俺なんか、トンデモないよ。若い頃は、髪の毛は染めるわ、シンセサイザー使ってわけの分からん落語やるわ。例えば、ザ・シンフォニーホールさんでオーケストラさんとやってみたり。けど『芸人にはホールは貸しません』って言われてね。そこで『私はミュージシャンです』言うて、チェロを買いに行って練習して(笑)。そんなアホな男がおらんとアカンわね」

――そんな文珍さんが今、ハマってらっしゃる落語を教えてください。

文珍 「『帯久』をコンパクトに。モタモタしてるところがあるんでね。お裁きモノというのは、よくできてますから。やっぱり起承転結がはっきりしてて、溜飲が下がるというのが、お客さまのお好みに合う。世の中は悪い奴がおるねん。それがやっつけられる。そら気持ちええわなぁ。あとね、漫才の人たちとずっと一緒に劇場に出てるでしょ。僕らの得意なところは、時代劇でも何でも、シュッとワープできる。別に衣装も着けてないのに落語は融通無碍。どうにでも変化できるっていう強みであり、武器ですわ。それは事象的な表向きのことだけではなくて、普遍的な情愛とか、親子の関係とか、人間同士のつながりみたいなことを表現できるという...そんな風に思うようになりましたなぁ」

――年齢と共に、落語に対する考え方も大きく変わられたと。

文珍 「僕がボケてきてるのか...どっちかやね(笑)。演者側として、幅広くできるトシになってきたんでしょうね。ギャグまみれの新作もあれば、聴かせるネタもある」

――昨年、喜寿を迎えられましたが、70代というのは噺家にとってどんな年齢ですか?

文珍 「この芸はトシを重ねた時用のネタがある、ということを感じるのよ。若い時にはできなかったことができたり...。さきほど出た『帯久』も、自分で省略して構成し直して。昔は怖くてできなかったのが、平気やからね。テーマ性とか段取りとかいうのだけしっかりすれば、あとは変幻自在というか」

――また今夏は、住職がいなくなった過疎の寺を舞台にした創作落語『ナームアルアル』を披露。AIをテーマにした衝撃作でした。

文珍 「AIの方が知識の宝庫になってしまって、『AIは人間が作りだしたもんや』とか、『AIは感情がないから』っていうのは、単なる慰めなんですよ。この頃はAIとAIが戦う時代になってて、地球を凌駕されないようにだけはせなイカン。じゃ、人間は何をしたら良いのか。それは、考えることだけですわな。ただ、AIは自分で発電して充電して、どっからでも電源を引っ張ってきよるから。電源を切ればいい、っていう時代は終わってしまうんですよ。そういうことも、考えた方がええんちゃいますかねぇ」

――恐ろしい話ですね。

文珍 「SF作家のフレドリック・ブラウンっていう人が、1954年に書いた『回答』っていうショートショートがあって。まだAIはないねんけど、スーパーコンピューターで全世界を繋いで対話もできると。で、人間がね、スーパーコンピューターに『何か聞きたいことはあるか?』って言われて『神は存在するのか?』と相談しよるわけや。ほんなら、スーパーコンピューターが『今、誕生した』って答えるのよ。それで電源を切ろうとするねんけど、人間の方が雷に打たれて死んでしまう、っていう話。1954年頃にすでにできてるねん。そういう面白い話を見つけては『あちゃっ!』とか思てんねんやわ。しかし、時空とか発想を超えて楽しみましょうや、というのが落語やと思いますので、そういうものもエンジョイできたらエエんちゃうかなって」

――では最後は、三競演の話題へ。この会の見どころを教えていただきたいのですが、文珍さんが思われる、南光さん、鶴瓶さんの魅力を教えてください。

文珍 「鶴瓶ちゃんは下半身から...違う! 体の中心部から...違う! どない言うたらええねんやろ。とにかく、どこからかにじみ出る"人間・鶴瓶"を噺の中に感じるやないですか。例えば『青木先生』は、やり始めた時は生徒の視点やったのが、段々、青木先生の方に重心が移っていった。そしたら非常にヒューマンな面が表に出て、ええ噺になっていくという。進化してる彼の面白いとこを楽しむというか。南光さんは、もう噺家を辞めるそうやから、ここを聞き逃したら最後ですよ(笑)。『落語はあんまり好きやない』とか『落語を辞める』とか言いながら、一番落語が好きなんや。可愛いやろ? あんなこだわりの人、おれへん。"一話入魂"っていう感じの人やね。一つ一つのネタに非常に集中してるっていうか、芯でとらえようとしてる。それを感じますな」

――文珍師匠にとって、おふたりはどんな存在ですか?

文珍 「こんなふたりとご一緒できてるというのは、私の中では刺激ですね。やっぱり3人が3人とも色が違うので、それぞれの世界をお聞き逃しのないよう。とにかく変化というか、みんな、それなりに年齢を重ねてきてることが僕は面白いと思いますね。しつこいオッサンらやわぁ、ほんまに(笑)」

取材・文/松尾美矢子
撮影/大西二士男




(2026年11月 5日更新)


夢の三競演2026
~三枚看板・大看板・金看板~

【東京公演】

▼12月18日(金)18:00
LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

Pick Up!!

【大阪公演】

11月8日(日)一般発売 
Pコード:545-106
▼12月24日(木)18:00
SkyシアターMBS
全席指定手ぬぐい付き-8500円 指定席-7300円 
[出演]桂文珍/桂南光/笑福亭鶴瓶
※未就学児童は入場不可。車いすスペースをご利用のお客様は、スペースに限りがございますので、チケットご購入後お早めに劇場へご連絡ください。営利目的の転売禁止。公演中止の場合を除き、払い戻しはいたしかねます。ご了承のうえ、お申込みください。劇場サイトに記載の注意事項と最新情報をご確認のうえ、ご来場ください。
[問]SkyシアターMBS■06-6676-8466

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