ホーム > インタビュー&レポート > 初舞台のTakassy、輝きと孤独を秘めたローリを熱演! 『ペパロニ・ヴァンパイア』開幕
関西から"新しい演劇エンターテインメント"を発信する「NELKE WEST PROJECT」の公演シリーズ第2弾、舞台『ペパロニ・ヴァンパイア』が7月31日、大阪・ABCホールで開幕した。ネルケプランニングが2022年に始動させた同プロジェクトは、地元に根づいたコンテンツづくりや、地域で親しまれている劇場での上演を通して、より多くの人に演劇の楽しさを届けることを目指している。

第1弾では、江戸川乱歩の『透明怪人』を原作に、関西で活動するキャストを中心とした『少年探偵団 空気男事件』を大阪で上演。第2弾となる今回は、須田翔子による漫画『ペパロニ・ヴァンパイア』を舞台化した。演出を石川湖太朗(サルメカンパニー)が手がけ、大都会のショークラブで人気No.1を誇るドラァグクイーン・ローリ役には、初舞台にして初主演となるENVii GABRIELLAのリーダー、Takassyを迎えた。
開演前にはボーイ姿のキャストが現れ、歌やダンスの最中は拍手も手拍子も大歓迎と呼びかける。その言葉に客席の空気がほぐれ、これから始まるショーへの期待が一気に高まった。
静かな独白の後、空気が一変。カラフルな衣裳をまとったドラァグクイーンたちがずらりと並び、「ハウス・オブ・ローリ」のショーが幕を開ける。

中央に立つローリは、高いヒールで軽やかにステップを踏み、伸びやかな歌声を劇場いっぱいに響かせる。その周囲で個性を放つクイーンたちも生き生きとしており、派手な衣裳と歌、ダンスが次々と繰り出されるオープニングは、観客がショークラブに足を踏み入れたかのような高揚感に満ちていた。
ある夜、仲間たちから「ママ」と慕われるローリのもとに、故郷の母の訃報が届く。母との確執を抱えたまま故郷へ戻ると、かつて愛したダニエルとの再会や、町に根づく偏見に直面する。娘たちを守るように先頭に立つローリ。町の人々が浴びせる言葉に真正面から立ち向かう姿に胸のすくような力強さがある一方で、一人になった時には、長く押し込めてきた孤独が顔をのぞかせた。

物語のもう一つの軸を担うのは、自分はヴァンパイアにかまれたのだと思い込んでいる12歳のペパロニである。日暮誠志朗は、周囲になじめず、自分の中に起きた変化を持て余すペパロニの焦燥感を、細く張りつめた糸のように表現。その兄・マッシュを演じる広井雄士は、弟を心配しながらも、どう寄り添えばよいのか迷う兄の温かさと不器用さをにじませた。
マッシュと、ぬまたぬまこ演じる市長の一人娘シシーが互いにメイクを施す場面も、本作を象徴する一場面だ。父親に自分の尊厳を否定されてきたシシーと、周囲との違いを抱えてきたマッシュ。小黒沙耶によるピアノの生演奏とローリの歌声が、二人の間に生まれる友情を静かに包み込んだ。

登場人物たちが抱える生きづらさは、性的指向や性自認だけにとどまらない。親子の確執、家族に受け入れられなかった記憶、自分自身を肯定できない苦しさ。それぞれの傷が、物語の随所に散りばめられている。だからこそ、本作が描く「家族」は血縁に限られない。相手のすべてを理解できなくても、好きなものを否定せず、傷ついた時にそばにいることはできる。登場人物の関係が少しずつ変化し、互いを支える新たなつながりが生まれていく。
高いヒールを履きこなし、歌声と身のこなしでショーの中心に立つTakassyは、初舞台とは思えない堂々たる存在感を放つ。華麗なドレスからTシャツとジーンズへと姿を変える場面でも、ラフな装いの中にローリらしいしなやかな立ち姿や身のこなしが際立った。母親との確執に揺れる時、傷ついた心を隠して強がる時、再び立ち上がる時と、場面ごとに表情を鮮やかに変える。なかでも、言葉を発することなく客席を見つめる場面では、視線の動きで観客を引き込み、静寂の中で劇場を掌握した。ローリのカリスマ性を余すところなく体現するTakassy。その姿を見つめるうち、ローリを「ママ」と慕うドラァグクイーンたちと同じように、「この人についていきたい」「また会いたい」という思いが込み上げた。

終盤、ローリが収穫祭のパレードを提案すると、傷つき、迷っていた人々の声が次第に重なっていく。ペパロニの成長、マッシュとシシーの友情、向き合わなければならないもの.....それぞれの物語が歌(「Out,Loud,Proud」 作詞:三ツ矢雄二 作曲:小黒沙耶(サルメカンパニー) )へと結びつき、舞台を大きな熱で満たした。
取材・文/岩本和子
©須田翔子/マンガボックス・Nelke Planning co.,ltd.
ローリ役のTakassyからコメントも到着!
「自分は演劇に向いていないと思っていた私の価値観と人生を変えてくれたのは、この舞台のカンパニーのみんな。そして、私に演じることの喜びを運んでくれたのは『ローリ』、あなた。私たちは色んな人生を巡って偶然にもこの物語の一部となった。この作品を通して『愛』と『尊厳』を学んだ。今日から始まる『ハウス・オブ・ローリ』の旅。いいこと? 絶対楽しいから、観にきなさい! 観て後悔はさせない! なんでかって? 最高の原作と最高のキャストだからよ!」
(2026年8月 6日更新)
【大阪公演】
当日引換券発売中 Pコード:542-219
▼8月9日(日)まで上演中
全席指定/〈平日〉7,000円 〈土日〉7,500円
ABCホール
【東京公演】
▼8月14日(金)~23日(日)
全席指定/〈平日〉8,000円 〈土日〉8,500円
CBGKシブゲキ!!
[原作・脚本構成]須田翔子(『ペパロニ・ヴァンパイア』(マンガボックス刊))
[脚本]鈴木哲也
[演出]石川湖太朗(サルメカンパニー)
※出演の詳細は公式サイトでご確認ください。
※未就学児童は入場不可。出演者及び公演スケジュールは予告なく変更となる場合有。未成年者は、必ず保護者の承諾を得てからチケットをご購入ご来場下さい。劇場内の模様を撮影し、放送・配信・複製頒布等する場合有。席の場所によりましては舞台・映像・演出の一部が見えづらい場合有。キャンセル・変更、公演中止時以外の払戻不可。公演が中止になった場合は、公式サイト・Xにて公演中止のお知らせ、払戻方法をご案内。チケットは紛失・盗難などいかなる場合においても再発行不可。要本人確認書類。車椅子をご利用のお客様や、ご観劇に際してサポートが必要なお客様につきましては、チケット購入後、ご来場の1週間前までにネルケプランニングへご連絡下さい。ご来場前に公演公式サイトにて最新情報を要確認。
[問] サンライズプロモーション■0570-00-3337