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歌舞伎俳優の尾上右近が自らプロデュースする自主公演「研の會」
記者発表会オフィシャルレポート

尾上右近自主公演 第十回「研の會」FINALの記者発表会が、6月6日に都内で行われた。大阪公演は国立文楽劇場にて、9月5日(土)・6日(日)に開催。東京公演は明治座にて、10月2日(金)・3日(土)の開催となる。

「研の會」は、歌舞伎俳優の尾上右近が自らプロデュースし、開催してきた公演だ。2015年にはじまり、このたびの第十回がFINAL公演となる。上演作品は、『藝阿呆(げいあほう)』、『鷺娘(さぎむすめ)』、そして『春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし。以下、鏡獅子)』。大きな節目の公演に向けて、右近が意気込みを語った。

昨年4月、右近がかねてより「生きる意味」とまで語っていた『鏡獅子』を、歌舞伎の殿堂、歌舞伎座の本興行で初めてつとめた。今年に入り、第33回読売演劇大賞「杉村春子賞」、令和7年度(第76回)芸術選奨「文部科学大臣新人賞(演劇部門)」を続けて受賞。「『鏡獅子』は第一回『研の會』でやらせていただいた演目です。思いはつながり結果として、今年2つの賞をいただきました」と感謝を述べた。続けて右近は、「昨日は眠れなかったので」と前置きし、第一回公演時に23歳だった自分宛の手紙を読み上げた。

手紙では、開催を決意した後の不安、チケットが発売10分で完売した時の歓喜、あらゆる人のおかげで幕が開くことへの興奮と感謝で号泣した思い出などに触れ、時折深く息を吸いながら、「泣きそう!」と笑みをこぼす瞬間も。会場に明るくあたたかな空気が広がる中、「『研の會』が終わりを迎えても、不安なことはいっぱいあるし不満もあるし、課題もあるし、焦りもある。まだまだこれからだし、これが始まりでしかないけれど、自主公演を十回続けられたということは、今後とも君にとって、いや今の僕にとって、かけがえのない自信になっている! 踏み出してくれてありがとう。胸を張って君にメッセージが送れたことが、心の底から嬉しいです」と読み上げる。「尾上右近という船は、あらゆる羅針盤を得て、風をもらい受け、次なる海へと漕ぎ出します。いざ、十年後の君へ」と結んだ。

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本公演の最初の演目となる『藝阿呆』は、明治の義太夫の巨星、三代目竹本大隅太夫(おおすみたゆう)と、その三味線を弾いた名人、二代目豊澤團平の物語となる。もとはラジオ番組として発表され、その後、舞踊作品として上演された。

「子供の頃に、十八世中村勘三郎のおじさまが踊られた舞台が、強く記憶に残っています。劇中には『吃又(どもまた。正式名:傾城反魂香)』のお稽古シーンがあり、今でも『吃又』を観ると『藝阿呆』を思い出すほどです。芸の道をがむしゃらに生きる男たちが泥臭く描かれ、その中に温かみがあり上方の匂いも感じていただける作品です」。

過去の上演では、演奏は名人の音源が用いられてきたが、今回は、人形浄瑠璃文楽座太夫の竹本織太夫と、文楽界の現役最年長、三味線奏者の竹澤團七を迎え、生演奏で披露する。振付は、新たに日本舞踊尾上流家元の尾上菊之丞が手掛ける。

右近は「歌舞伎俳優が舞台に立つならば、その演奏は生であるべき」だと語り、古典芸能の舞台に立つものとしての矜持を垣間見せ、「同じ時代に、古典芸能という同じ土俵に共存している先輩方、仲間と一緒に、『藝阿呆』を創りあげてまいります」と気合は充分。

続く『鷺娘』は、恋に苦しむ娘の姿を白鷺の姿に重ね合わせた作品だ。映画『国宝』をきっかけに、近年あらためて注目を集めている。「古典芸能の世界では、普遍的に愛され続ける本質的なものを軸に持つ。その姿勢に尊さを感じます。一方で、流行りにのるのも歌舞伎の文化。流行りにのって、やらせていただきます!」と笑う。「江戸時代から続く、女形の専売特許の変化舞踊。力強い作品です。江戸歌舞伎のエッセンスをお伝えすることにもしっかり取り組んでいきたい」とも語った。「藤間勘十郎先生とご相談しながら、今までにない形でお見せします。幕切れは派手に終わりたいです」と期待を滲ませる。

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『鏡獅子』は、一人の俳優が可憐な娘と勇壮な獅子の精を踊り分ける格式高い舞踊作品となる。昨年4月に、歌舞伎座でつとめた演目を、はやくも再演することについて、「またすぐにやるというのも、我ながら"藝阿呆"っぽくていいなと思って」と笑う。そして「純粋に、まだ踊り足りません。一生踊りこんでいくことを前提に、課題はいっぱいありますし、『研の會』は、『鏡獅子』に始まり『鏡獅子』で終わる。ひとつの区切りの意味も込めました。しっかりと準備をし、自分にとってのオリンピックぐらいの気持ちで取り組みます」と続けた。

昨年より導入したイヤホンガイドの貸出しサービスが、本年は全公演で実施される。「自分の舞台の解説を、自分の声で聞いていただく。ずっとやってみたかった試みを、実現させていただきました」。さらに大阪公演の9月6日、東京公演の10月3日には、鑑賞サポート席を設け、バリアフリー字幕タブレットと台本の貸出しが予定されている。

「研の會」の公演ポスターは、第七回公演より、日本を代表する現代美術家・横尾忠則氏が描き下ろしている。「今年も楽しみです。あの年代の横尾さんほどのエネルギーをお持ちの方と、お仕事を通じて関わることができました。本当に幸せなことです」と語った。

質疑応答で、この11年の自身の変化を問われた右近は、「自分に正直になった」と分析する。「第一回を始めた当時は、実績も自信もなく、自分の足らなさを認識していた分、遠慮がちなところがありました」。一方で、「変わらないのは、自分に手紙を書いて自分で泣いてしまうところ」だと笑い、「自己愛高めな僕の姿を、皆さんは喜んでくれるはず。そんな皆さんへの期待を込めて」と明るい表情をみせた。

東京公演の会場に明治座の舞台を選んだのは、「できる限り大きな劇場で」との思いから。「第一回の千穐楽に、客席をバックに舞台から記念写真を撮りました。あの時、"第十回はもっと大きな劇場で撮っているはず"だと思ったんです。今回は、最後の獅子の毛振りを200回くらいやりたいですね。最後は演奏家さんたちに"いつまでやるんだ"とイヤな顔をされて終わるくらいに」と意気込んだ。

会見の最後に「皆さんのおかげで続けてくることができました。後輩たちが夢を持てるような第十回FINALにしたいです。まだ具体的なことは決まっていませんが、『研の會』が終わっても、自主公演は続けていきたいです。次のステージへのスタートを感じていただく会になれば」と呼びかけた。

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写真:株式会社エリア51
文:塚田史香




オフィシャルメッセージ

◎初めて「研の會」に興味を持たれた方へ

歌舞伎が本当に好きな僕が、歌舞伎が好きってことを形にして、楽しく続けてきた公演です。

歌舞伎は、舞台上にいる人間、いない人間、作品にかかわるすべての人間のマンパワーの複合体です。アナログの力強さ、そのエネルギーを感じてもらえると思います。その真ん中で僕は、本気の姿をお見せします。大人の本気を見られるところが、歌舞伎の最高のバイブスだと思うのです。少しでも気になったら、ぜひおこしください。

◎これまで「研の會」を応援してきてくださった方へ

何から伝えたらいいのだろうと迷うほど、いろいろな気持ちがあります。公演中の物販では、自分も表に出てお客様と関わらせていただき、「研の會」は皆さんと一緒に走ってきた感覚が非常に強いのです。「ありがとうございます」と「おかげさまで」と......。逆に「皆さんは今どんなお気持ちですか?」 とお聞きしたいです。
 
『藝阿呆』をご存じの方は、そう多くないと思いますが、『吃又』や『忠臣蔵』など色々な名作のワンシーンを織太夫さんの語りで聞いていただくこともできる、贅沢な演目です。芸人が芸にひたすら打ち込む姿を存分に感じていただけるよう、僕なりの精一杯の芸でお届けします。
 
◎十回目の「研の會」を迎える尾上右近へ

芸の道に終わりはありません。満足することなく、これからも「もっともっと」の気持ちで続けることが大事です。でも、楽しむ気持ちも大事。ここまで振り返る時間もなかったけれど、一旦区切りをつけて見えてくることもあるでしょう。しっかりと振り返り、今の自分があることを認識し、楽しんでFINALを迎えましょう!

(2026年6月12日更新)


尾上右近 自主公演 第十回「研の會」FINAL

<演目>
一、藝阿呆
立方:尾上右近
文楽座特別出演
竹本織太夫
竹澤團七

二、鷺娘
鷺の精:尾上右近

三、春興鏡獅子
小姓弥生/獅子の精:尾上右近
胡蝶の精:尾上琴也
胡蝶の精:丸山紗奈

【大阪公演】
場所:国立文楽劇場 
▼9月5日(土)
昼の部11:00開演 夜の部16:30開演
▼9月6日(日)
昼の部11:00開演 夜の部16:30開演
一等席-13000円 二等席-9000円
鑑賞サポート実施日: 9月6日(日)

【東京公演】
場所:明治座
▼10月2日(金)
昼の部11:00開演 夜の部16:30開演
▼10月3日(土)
昼の部11:00開演 夜の部16:30開演
一等席-15000円 二等席-7500円 三等A席-5000円 三等B席-3000円
鑑賞サポート実施日:10月3日(土)

チケット一般発売 7月19日(日)10:00~

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