ホーム > インタビュー&レポート > 壱太郎×右近『曽根崎心中物語』松プロ観劇レポート
京都・南座で花形歌舞伎 特別公演『曽根崎心中物語』が上演され、大入り人気の中で25日に閉幕した。3月7日11時の桜プログラム《ぴあ関西40周年記念貸切公演》に続き、19日18時半からの松プログラム《ぴあ関西40周年記念追加貸切公演》を観劇。松プロは桜プロと役替えで上演され、1部の『曽根崎心中物語』では、中村壱太郎が平野屋徳兵衛、尾上右近が天満屋お初を演じた。休憩をはさみ、2部はふたりのトークタイム「花形歌舞伎特別対談」。この花形歌舞伎は、6年前から壱太郎を軸に「歌舞伎のおもしろさをお客様にわかっていただこう」という趣旨で続けてきた若手中心の公演。今回の特別公演では、その思いを共有する右近と共に「南座全体をテーマパークのように楽しめる雰囲気に」と、さまざまなお楽しみを用意し、劇場一体となって全力で勤め上げた。
『曽根崎心中』は300年前、実際にあった若い男女の心中事件をもとに近松門左衛門が人形浄瑠璃文楽を経て劇化、大ヒットし心中ブームまで起きた人気作で、上方歌舞伎の代表作のひとつだ。映画『国宝』で強い印象を残した床下のシーンが描かれた作品に、映画公開中から歌舞伎の劇場にも初めての観客が多く来場した。今回は、初心者に向けてオリジナル作品を1時間半に凝縮、新たな演出で『曽根崎心中物語』として上演した。
物語は、相思相愛の天満屋の遊女・お初と醤油屋平野屋の手代・徳兵衛が、観音巡りの生玉神社境内で再会するシーンから始まる。そこで徳兵衛は、友人に貸した金をだまし取られたうえに大勢の中で屈辱を味わい、その夜、天満屋を訪れた徳兵衛をお初が床下に隠す映画のシーンへ。みんなが寝静まった天満屋からのスリリングな脱出劇を経て、美しい星空の下、曽根崎の森へと向かうふたり。なぜふたりが心中するに至ったかが、わかりやすくスピーディに進行する。
松プロでは、お初はもちろん、いつもは主に女方を演じている壱太郎が立役で出演。徳兵衛の心情を繊細に描いて魅せる。いつも立役の右近は女方となり、みずみずしい色気をまといながら恋に一途なお初を好演。桜プロと松プロ、両方観ても違った楽しさが味わえる。特にラスト。舞台上には白い卯の花の群生。桜プロでは花道の向こうから差し込む光に導かれるように、お初の先導でふたりが花道の奥へ消えていく。松プロでは卯の花畑を通り、お初は徳兵衛に手を引かれて舞台奥の森へと消える。そして空は夜明けの暁か、うっすらと赤く染まって...。美しい幕切れだが、通常では描かれる心中のシーンはない。「このあとどうなったんだろうという思いをお客様にゆだねて」と壱太郎。「実は4パターン考えた中から選んだふたつ」とトークコーナーで語っていた。
35分間の休憩中は、入場口でもらう絵馬シールにメッセージを書いて貼ったり、公演特別仕様のお弁当を食べたり。グッズやお土産売り場もいつも以上のにぎわいだ。そして2部は「花形歌舞伎特別対談」。紋付き袴姿で素顔のふたりが登場し、ゲストを呼ぶなど毎回内容を変えて贈る30分。今回はふたりで観客とのトークタイム。「桜プロ、松プロ、どちらもぴあさんに貸切公演していただき、ありがとうございます!」といった挨拶からスタート。歌舞伎で夜の時間帯の開演はめったにない。「たくさんのお客様に来ていただいてうれしい」と観客へ感謝。続けて「18時半開演でないと来れなかった人は?」との壱太郎の問いに多くの手が挙がる。「今日3回、1日同じ公演をやるのは戦後初だそうです」の話にどよめく客席。「今日なんか11時からずっと見つめ合ってる」(壱太郎)「3回も一緒に心中して」(右近)には観客大爆笑。
その後、初心者向けに歌舞伎の楽しみ方や『国宝』に出てきた稽古シーンと実際の稽古のこと、また歌舞伎俳優の実生活やさらに観客からの質問コーナーも。盛りだくさんな内容に、ふたりの公演への心意気、歌舞伎への熱い愛が伝わる。最後の撮影タイムは「今日はぴあさんの特別な貸切公演なので」と、ぴあのマスコットキャラクター"ぴっけろ"と"くまっぴー"を手にしたツーショットで。また、次は東京・歌舞伎座公演が控える右近、そして壱太郎は「私が出演する大阪松竹座の4月5月公演では、ぴあさんの貸切公演もございます」と予告も。「また、お会いできることを願っております!」と晴れやかな笑顔で締めくくった。
取材・文:高橋晴代
(2026年3月27日更新)
3月19日(木) 18:30
南座(京都府)
<松プログラム>
天満屋お初:尾上右近
平野屋徳兵衛:中村壱太郎