ホーム > インタビュー&レポート > 壱太郎×右近『曽根崎心中物語』桜プロ&松プロ観劇ガイド
劇場入り口で、松と桜を模した可愛い飴と絵馬シールが手渡され、客席へ。歌舞伎初心者の人にはイヤホンガイド(800円)もオススメだ。1階右側ロビーで借りられる。また、開演までに時間があればパンフレット(1500円)の一読も。作品がよくわかり、稽古場写真や会見レポートなど内容も充実。せっかくの歌舞伎体験、準備万端で楽しんでほしい。
場内の明りが消えると舞台左上から義太夫の語り。パッと舞台が明るくなるとそこは生玉神社の境内。その鮮やかな幕開けに客席が「わ!」と華やぐ。境内を行き交う人々の中に重要な登場人物たちが登場するので、しっかり観ておきたい。主人公は叔父の醤油屋・平野屋で働く手代の徳兵衛と、天満屋の遊女・お初。相思相愛のふたりは神社で偶然出会い、再会を喜ぶ。が、徳兵衛が通りがかった油問屋の友人・九平次(片岡松十郎)に貸した金の返済を問うと、逆にののしられケンカとなる。大切な金をだまし取られた上に、大勢の前で屈辱を味わう徳兵衛。その夜、天満屋を訪れた徳兵衛を縁の下へ導き入れるお初。そこへ九平次が現れ、座敷で徳兵衛の悪口を言いふらす。お初は足元にいる徳兵衛に命懸けで潔白を証明する覚悟を問い、徳兵衛も共に死ぬ覚悟を合図で伝える。ここが、あの『国宝』の見どころシーンだ。なぜ床下に? なぜふたりが死ぬことに? という背景がわかる。
その後、寝静まった天満屋から脱出する緊張のシーンを経て、心中を決意したふたりは曽根崎の森へ向かう。卯の花の白い群生、そしてふたりのその後を照明が美しい余韻を残して幕。壱太郎が「今の人たちに『曽根崎心中』をどう伝えるかを意識してやりたい」と新演出で臨んだ『曽根崎心中物語』。古典を大切に、わかりやすく美しく、描いて見せた。
休憩は35分間。この間に絵馬シールにメッセージを書いて、1階と2階の"絵馬掛処"に貼っておこう。公演限定の多彩なグッズやお土産も、開演までに時間がなかった人はこの間に。また、お腹が空いた人には"花形歌舞伎特別弁当"(2200円)も用意されている。
2部は「花形歌舞伎特別対談」。紋付き袴姿で素顔のふたりが登場し、「《ぴあ関西40周年記念貸切公演》へ、ようこそおいでいただきました! みなさん、ぴあで来られたんですよね!?」と3階までいっぱいの客席を眺め、声を揃えて「ありがとうございます!」。ここから30分の楽しいトークがスタート。「歌舞伎を初めて観る人は?」「『国宝』を見て来た人は?」。多くの手が挙がる。作品の魅力や義太夫の説明、今回の公演への熱い思いにふたりの歌舞伎愛があふれる。質問コーナーでは「女形で気を付けているところは?」「花道の幅は? 狭くないですか?」など、客席からの質問に直接丁寧に回答。そして「今回は2回もぴあさんで貸切公演をしていただき、大変ありがたく思っております。この機会に松プロもぜひ観てほしい。みなさん、松プロにも来ていただけますよね!?」と客席へ呼びかけるや「役者が変わるとおもしろいですよ。ちょっとやってみましょうか」。いきなり花道で松プロのワンシーンを素顔のまま演じ始めるふたり。突然の予告編上演に観客は大喜びだ。「桜と松、2度来られても楽しんでいただけるように、2部は毎回内容を変えています」。
さらにツーショットの撮影タイムあり、座席の背に貼られたQRコードを読み取ってアンケートに答えると、2人の撮りおろし写真がダウンロードできるなど、お楽しみが盛りだくさん。「劇場に入った瞬間から楽しめる空間にしようと劇場一体となってやっています」。壱太郎と右近の心意気がたっぷり詰まった、満足度充分な今回の『花形歌舞伎 特別公演』。きっと忘れられない、南座の歌舞伎体験がここにある。
取材・文:高橋晴代
(2026年3月17日更新)