ホーム > インタビュー&レポート > 開催目前! 2015年の“第0回”に参加の岡本昌也に聞く 「全国学生演劇祭」
――岡本さんは「京都学生演劇祭2014」に「劇団西一風」として『いちごパンツを撃鉄に』を出品し、大賞を受賞されましたが、出品にいたる経緯について教えてください。
当時はお笑いが好きで、なんか、最初にバナナマンを好きになって、バカリズムを好きになって、ラーメンズを好きになって、その流れで演劇を好きになりました。
当時はめちゃめちゃ尖っていて同世代も上の世代も全員敵に見えたし「世界で自分が一番面白い」という自意識を抱えながら生きていまして(笑)、それはそれでつらかったんですけど...(苦笑)。大学に入って「ここで一番面白い劇団はどこだ?」と探して、「西一風」という劇団が面白いことをやっていたので「乗っ取ってやろう!」と思って入って、そこで初めて作・演出した作品を「学生演劇祭」に出すことにしたんです。コンペと聞いて「一発、かましてやろう!」って(笑)。
そうしたら、まんまと大賞を受賞して......もうね、めちゃめちゃ調子に乗っていた時期ですね(笑)。当時、劇団が毎年、出品していたので、その流れでM-1に参戦するような気持ちで応募したという感じでした。
――当時、演劇以外のこともやられていたんですか?
大学が映像学部だったので、映画の勉強をしたり、音楽を自分でつくったりもしていて、まだ何者でもなくて、何か表現したいけど、そういう場もないし、評価も得られていないという時期で、そこで演劇祭で大賞を獲ったから、いまも演劇を続けているみたいなところはあるなと思います。結構、人生を狂わされたなっていう思いがありますね、学生演劇祭に(笑)。
――他の劇団の作品もいろいろ出ていたと思いますが、実際に演劇祭に参加されてみていかがでしたか?
柳沼昭徳さん(烏丸ストロークロック)が審査員をされていて、その前年には杉原邦生さんも審査員をやられていて、学生演劇の催しなのに、すごく豪華だなという印象を持っていました。
学生相手に、審査員のみなさんが「頑張ってください!」みたいな激励のコメントをされている中、柳沼さんだけ「これは祭りと称したバトルです」「コンペですから1位を取り合ってください」みたいな熱いコメントを出されていて、こちらも「だよな!」と思った記憶があります(笑)。
他の作品もいろいろ拝見したんですけど、美大の劇団は美術がめちゃめちゃ凝っていたり、衣装がすごく華やかで嫉妬した記憶もあるし、本当にジャンルもいろいろで、会話劇もあれば、身体表現で見せるような作品もあって、本当にごった煮で、「祭り」という感じでした。
そこで、参加者同士の横のつながりも得られたこともすごく印象に残っています京都で出会った人たちの中に「ルサンチカ」の河井朗くんがいるし、全国大会では「コメディアス」の鈴木あいれくんに出会って、彼らとはいまだに連絡を取り合っていて、一緒に演劇をつくったりしているので、演劇祭に参加したことでいろんなつながりを得ることができたという感覚はすごくあります。
――『いちごパンツを撃鉄に』という作品は、若者の「性」を鮮烈に描いた物語でした。
懐かしいですね(笑)。当時は「性」にしか興味がなくて、作品の内容も19歳の元気な男の子が書いたなって感じのものだったと思います。童貞の主人公がいろいろこじらせて、初体験の相手はバージンじゃなきゃダメだ! という思いに取りつかれて、でも好きになった女の子は風俗嬢で、知らずにどんどん好きになってっちゃうという...。最後に、コンドームが「マスターリビドー」という名前で登場して、ふたりの仲を取り持って愛を語るっていうオチで、なんであれが大賞を獲得したのか...? いまだに不思議です。
――ある意味で、現在も描いている若者たちの衝動であったり、風俗といったものの原点といいますか、初期の時点でいまにつながる物語を描いていたと言えるかもしれませんね?
確かにそうかもしれないですね。いまも、若者の刹那的な感情みたいなものを描くことが多いので、いま指摘されて初めて気づきましたけど、つながっているかもしれないですね。 『いちごパンツを撃鉄に』も切実さだけはあったと思います。
――学生演劇祭に参加したことで、ご自身の創作に刺激を受けたり、その後、変化をもたらされたと感じられることはありますか?
その後、キャリアの序盤は、実は学生演劇祭と共に歩いていったみたいなところがあって。大賞を受賞したことで自信もついて、顔も広がって、次に作品をつくる上で「あの作品を超えないと」みたいな思いも湧きました。
京都で優勝したから「第0回全国学生演劇祭」にも出られて、そこで同じ作品をリブートして挑んだんです。上演としてはものすごくうまくいったんですけど、何の賞も獲れなかったんですよ(苦笑)。その経験は、いまもすごく大きな糧になっていて、自分は自分のつくるものをすごく面白いと思っているんだけど、周りはそう思わないっていう。逆に、自分はつまんないと思っちゃうような他の作品がめちゃくちゃ評価されて腹立てながら審査員の講評を聞いてると、単に自分が評価軸を持ててなかっただけってことに気がついたり......そこで初めて自分を客観視することができたんです。「あれ? 俺の作品、実は世界で一番面白くないかも...」ってちゃんと思うことって、自分にとってすごく重要だったなと思います。
あと一昨年、名古屋の学生演劇祭の審査員をさせていただいたんですけど、レベルがかなり高くて、ひとつひとつの作品に対して、こちらも実作者として、本気で作品を言葉にしていくということをさせてもらって、審査員側とか批評側の気持ちも演劇祭に教えてもらったんですよね。そういう意味で、キャリアの節々で、大事なところに演劇祭があるなと感じています。
――今後、若い世代や学生のためにも、学生演劇祭がどうあってほしい、どういう存在として続いて行ってほしいなど思いをお聞かせください。
当時、自分が若者だった頃のことを思い出すと「発表の場」をすごく欲していたんですよね。自分でお金を出して、人を集めて、劇場をおさえて上演するって、学生にとっては本当に大変で、一度やるだけで再起不能になっちゃったりするんですけど、こういう演劇祭という場があって、エントリーフィーもそこまで高くなくて、横のつながりもできるし、プロの方にきちんと講評をしてもらえるみたいな場所は、すごく貴重なものだと思うし、今後もあり続けてほしいですね。
演劇という存在自体が、カルチャーとしてそこまでポピュラーではない中で「演劇をやってみよう」という若者を取りこぼさないように、ちゃんと若い才能を発掘する現場であってほしいなと思います。そこで拾われた才能が、いまも活躍していたり、それこそ川村智基くん(「餓鬼の断食」代表/第8回全国学生演劇祭 審査員優秀賞)とか、発掘でしかないですよね。初めて会った時の川村くんは、本当にナイフみたいな男の子で(笑)、「はじめまして」で刃物を突き付けてくるようなオーラがあって、僕がその刃を握りしめて「大丈夫だよ」と言うような思いを抱いていたんですけど、まさかそんな川村くんが岸田國士賞にノミネートされるとは......「俺もナイフ研がなきゃな」って思いました。 彼も僕も、演劇祭の功績だと思います。
――岡本さんは京都、川村さんは奈良の学生演劇祭から出てきましたが、東京だけではなく、地方で出せる場があるというのはすごく大きいですね。
すごく大きいと思います。東京一極集中みたいなところは、いまだに強いですし、始めたての頃は特に「東京行かないと話になんないよ」みたいなことを言われていて、だから僕は東京に行ったわけですけど、そういう空気が少しずつ変わってきていて、それこそいま京都には、日本有数のコアな演劇シーンができていますよね。創作・発表・批評の三拍子が揃っている。地方でも都心でもどこでもとにかく「僕たちはここでやるんだ」っていう選択ができることが大切で、若手の選択肢を広げるのに演劇祭が一役買っている部分はあると思います。
――ご自身が参加した時をふり返って、ステップアップとしてこういうものがあったらよかったなとか、こういうことができたらいいんじゃないか? と感じること、提案などはありますか?
参加者同士で、お互いの作品を相互批評し合うみたいな場があったらもっと良かったなと思いますね。審査員の講評をいただいて、その後、飲み会で酔っ払いながら、ちょっとだけ言いたいことを言うみたいな場はあったんですけど(笑)、当時は全作品に対して「物申したい」という気持ちがあって、たぶん、みんなそうだったんじゃないかなって思うんです(笑)。ちょっと学生同士でバチバチするような――オフィシャルの場で、匿名でもいいので、例えばファシリテーターがいてみたいな形でもいいので、そういう場があれば、健全に相互批評し合えて面白かったんじゃないかなと思います。
やっぱり同世代で演劇をつくっている人の視点を知りたいし、「あいつに一目置かれてる部分はここなんだぜ」みたいなことが、創作を続ける理由になったり、自分の指針になったりすると思うので、同世代の俳優同士とか、俳優から作家へ、作家同士とか、相互批評の場があったら面白いと思います。
――先ほど「若い才能を...」という話もありましたが、これからの演劇界について、どうあってほしいか?という思いをお聞かせください。
「演劇をやってる」と言ったら、お母さんがちょっと悲しいを顔するみたいなところっていまだにあるんで(苦笑)、カルチャーとしての演劇をどうしていくか――? 自作に関して、見ていただいたら納得させられるという自信はあるんですけど、演劇というカルチャー自体をどう盛り上げていくかみたいな部分は、考えあぐねていて...。
僕自身の話で言うと、いま、ちょうどいわゆる演劇界というところから、少し距離を取ろうとしている時期で、他のカルチャーを横断できるので、映画とかファッションとか音楽の世界の人たちに、顔見せしに行くみたいなところで、役割を担えたらという思いがあります。
例えば俳優にモデルさんを起用したり、衣装にファッションブランドを入れたり、「ndjc(若手映画作家育成プロジェクト)という、文化庁の映画の取り組みでつながった方々と一緒に演劇を構想したりしているんですけど、そうやって他ジャンル、異業種の人たちへのアクセスみたいなのを、ものづくりのほうから攻めていくみたいなことをしていて、まだその成果を演劇界にどう持って帰れるのか? というのはわかんないんですけど、橋渡し的な位置にいられたらとは考えています。
観客を取り込むっていうところに関しても、ブランドと一緒にやった時にそのブランドのファンが来てくれるとか、映画のお客さんが演劇にも足を運んでくれるというのがあればいいんですけど、映画と演劇って似ているようで、本当にびっくりするくらい(映画から演劇への観客の流動が)ないんですよ...(苦笑)。
「劇場に足を運ぶ」というところで、お客さんの中でも映画と演劇ってハッキリと分かれてしまっていて、「垣根を越える」なんて口では簡単に言えるけど、どう接続していくかっていうのは、僕も探りながら活動しているところです。どうしてもキャスティングでお客さんが集まるという部分はあるけど、カルチャーとして演劇を観に来てもらうというのは、自分にとっても大きな課題だなと捉えています。
――改めてこれから学生演劇祭に参加しようと思っている人たちに向けて、ご自身の経験を踏まえてアドバイスやメッセージをお願いします。
演劇祭に参加する動機って、いろいろあると思うんですけど、やっぱりひとつの体験を座組で共有できるっていう部分がすごく大きいと思っています。勝った、負けたもそうだし、(結果に)自分で納得がいった、納得いかないとか、さんざん酷評されたり、すごく褒められたり、そういう体験をその作品を一緒につくった座組の仲間と共有できるっていうのが、演劇祭の良いところだという気がします。そこでできた絆みたいなものって、意外と忘れがちで、「隣にいるからこそ、あんまり見えない」みたいなことが起こっちゃうんですけど、一番大事だなっていまになって思います。一緒に作ってる仲間のことをもう一度見つめる機会にするといいんじゃないかなって思います。
――今後、岡本さんがやりたいこと、実現したい野望を教えてください。
ものすごく遠くへ行きたいと思います。それは、作品としても、活動範囲としても、ジャンルとしても、アーティストとしてもです。作品の発表を続けながら、自分でもまだみたことのない景色を見てみたいです。深さよりも、遠さが良さそうです。遠くに行くための船が、演劇かどうかはわかりませんが、演劇のことは大切であり続けると思います。
取材・文/くろずなおき
(2026年3月 5日更新)
チケット発売中 Pコード:539-090
〈Aブロック〉
▼3月7日(土)13:00
▼3月8日(日)18:30
[出演]萌Co.(名古屋学生演劇祭推薦)、劇団あまおと(中四国学生演劇祭推薦)、ペイント・タレント(大阪学生演劇祭推薦)
〈Bブロック〉
▼3月7日(土)17:30
▼3月8日(日)14:30
[出演]劇団愉快犯(京都学生演劇祭推薦)、劇団ちゃねる(エキシビション)、ミムガム(東京学生演劇祭推薦)
〈Cブロック〉
▼3月8日(日)10:30
▼3月9日(月)18:30
[出演]劇団とかげのしっぽ(名古屋学生演劇祭推薦)、カブク(北海道学生演劇祭推薦)、トロイの箱馬(福岡学生演劇祭推薦)
メニコン シアターAoi
一般-2500円 U25-1500円(要身分証) U18-1000円(要身分証)
※未就学児童は入場不可。1枚のチケットで、1ブロック(3団体)の上演がご覧いただけます。
[問] 全国学生演劇祭実行委員会/日本学生演劇プラットフォーム■090-4256-8131
公式サイト
https://jstf.jp/