ホーム > インタビュー&レポート > 開催目前! 餓鬼の断食・川村智基に聞く「全国学生演劇祭」
----まず『学生演劇祭』に関わったきっかけを教えてください。
僕の場合、だいぶイレギュラーで、大学1回生の時に奈良でお芝居に参加したとき、「奈良の若手が全く頑張ってない」みたいなことを言われて、「じゃあ演劇祭作ったら」みたいなことを言って、「1年間、頑張るから、そこからはちょっと手伝ってくださいよ」って言って、演劇祭をすることになりました。ただ、副賞がないと面白みがないということで、何人かメンバーを集めて、「学生演劇祭」の沢大洋さんに直接アポを取って、2021年に「学生演劇祭」奈良大会を立ち上げました。
----そうだったんですね。
なので、「学生演劇祭」に出るより、奈良で「学生演劇祭」を立ち上げる方が先でした。僕は奈良で高校演劇をしていて、そのご縁があって、会場は奈良市ならまちセンターを使用させてもらいました。当時は、ARTS for the future!(コロナ禍を乗り越えるための文化芸術活動の充実支援事業)というコロナ禍の助成金もあったので、それも申請して、奇跡的に金銭面もクリアして。ただ、実行委員長に僕の名前があると審査員の選考基準などに関わると良くないので、僕は事務作業をやることで、2022年に「学生演劇祭」に出場しました。
----奈良県大会は今でも続いているんですか?
いえ、自分の劇団でめっちゃ忙しいのと、どう頑張っても赤字が出てしまうので、さすがに誰かに引き継ぐことはできず、2021年から2023年までの3年間開催して、そこからはやっていません。
----「学生演劇祭」に運営から携わったことで、劇団活動に何か変化はありましたか?
「学生演劇祭」は、出場者がほぼ同じ年齢層で構成されていて、これは高校演劇にも近しいところがあるのですが、ある種の形式に対してどう批判するかとか、そういった作業なんだなと思うことがよくあります。特に「全国学生演劇祭」は45分というレギュレーションの中でやらなくちゃいけない。それは自分の持ち札でどうアピールしていくのかということを考え直すきっかけになりました。
----考え直したのは、例えばどんな一面でしょうか?
僕の場合、現代口語劇と言われるような会話劇です。時間内でどれだけ見せられるかとか、ドラマをミニマルにどう作っていくかみたいな。本公演じゃない分、自分のやりたい内容や持ち味を分かりよい形で提起するためにどうするか、整理するきっかけになりました。個人の内省では、「全国学生演劇祭」に広がっていくシステムがあるので、その中で知り合った俳優がその後の作品に出てくれたり、「第8回全国学生演劇祭」で出会って、今年に上演した『Fusion,〈フュージョン、〉』という作品で山下万希という俳優が出てくれました。その子は「第8回全国学生演劇祭」の大賞・審査員最優秀賞・観客賞3位受賞、「第9回全国学生演劇祭」で大賞・審査員賞を取っていて、そこでご縁がつながったりだとか。横のつながりができることと、意外と縦のつながりもできるんだなというのは参加してから驚いたことです。
----今後、「学生演劇祭」がさらに発展するためにはもっとこういうやり方はないだろうかとか、今の川村さんから見えてくるものはありますか?
なんていうんでしょう...僕はどちらかというと結構広がったので、それで満足していたのですが、しいて言えばというレベルであれば、僕の時は全体打ち上げがなかったんです。去年はあったと聞いているんですけど。そういった、作品レベルというより個人レベルでつながれる場所や時間があればよかったなと思いました。でも、おそらく現状は解消されている問題ではあると思います。
----全国各地から集まった同世代の学生さんとの出会いは、刺激はありましたか?
そうですね。地域の特性はあるけど、年代の特性もあるから一概には判断できないところはあるのですが、同世代だからこそ受けている影響や、――これは僕個人の感覚ですが、僕らの世代はサブスクでドラマをたくさん観ているので、起承転結とか構造のラインが等しく取れている感じはします。逆に言うと、みんなが観ているドラマがない。そういう意味で、ひとつの作品と言うとちょっと違うのですが、総体としての面白さは知らない間に共通言語を持っている世代なのかなという気もします。「学生演劇祭」と聞くと「学生の演劇なんや」と思うと思いますが、実は種々あるぜというのは、めちゃくちゃ不思議なところですね。
----「学生演劇祭」は、社会人の劇団とも高校演劇のような様式美とも違う、大学生のパワーとノリもあいまって、一番自由かもしれないですね。
そうですね。それはめちゃくちゃ思います。今、考えると怖いですが、僕、東京の全国大会の時、1週間前ぐらいにジモティで家財道具を全部集めて、小屋入り前日に夜行バスで東京に行って、軽トラで各家を回って1日で集荷して、翌日に劇場にインみたいな感じでやったんです。ソファーを取りに行った人が関西出身の方で、「ちょっと待っとき」って言われて、「久々に関西弁が聞けて嬉しいし、学生で頑張ってんやろ?」ってお弁当持たせてくれたりとか(笑)。今、振り返ると、なんであんなことしたんやろうと思うんですけど、奇跡的にほしい家財道具が全部集まって、それでなんとかいけて。結局、それらも明治大学の団体が引き取ってくれて、処分代がかからなくて良かったってなったりとか。結構、綱渡りはしたけど、その結果、いいおこぼれがあったみたいな。そんな思い出があります。でも普通の演劇祭だったらありえないですよね...(笑)。
----演劇祭後のステップアップとして、あれば良いと思うものはありますか?
これは演劇祭の話とずれてしまうかもしれないんですけど、事実として、その後、続いている団体があんまりないんですよね。「全国学生演劇祭」に出ていても解散する。それこそ2大会連続で最優秀賞を取ったところも最近、解散しました。どの劇団もそうやと思うんですけど、なんでかと言うと、「学生演劇祭」は運営の方々がめっちゃ頑張られているので、参加費がめっちゃ安いんですよ。ある程度、大人のフォローアップがあるうえでやれているので、次の本公演になると費用の捻出や裏方の事務作業は自分たちでやらないといけない。「学生演劇祭」を機に旗揚げ公演をした場合、裏方面がまったくわからないので、制作の育成とか、そのマッチングや人的リソースをシェアする機会があれば続けられる劇団も増えると思います。
特に関西でお伝えすると、今、関西では公共の助成企画がなくなっているんですよね。そのため、一旦自腹を切って2公演をやって実績を積むみたいな、そういう勝負ができなくなっている感じはあって。ステップアップがどうこうというより、ステップになるものがないから、――それを公共が担うのか、民間が担うのかというのは別の問題だと思うんですけど、結果として続けることが難しい状態ではあるのかなと思っています。
----「学生演劇祭」に限らず、これからの演劇について、川村さんの望むものがあれば教えてください。
個人的にすごく思うのは、脚本や作品構造の評価やフィードバックができる場が多くあることは大事だと思っています。僕の例でいくと、「全国学生演劇祭」で上演して、その後「関西演劇祭」でも上演した作品が、ロームシアター京都で買取されたことで、キャリアの初期段階に広い客層に観てもらう機会を得られたのですが、そういった機会がないと、結果的に全体として作品強度が薄くなって、盛り上がらない一因であるような気がします。演劇界を盛り上げるためには、キャリアの初期段階からいろんな方の耳目に触れられる状態を作ってあげるということが必要かなと思います。
もうひとつは、わかりやすくトレンドセッターを一人作らんといかんよなということですよね。演劇の中に複数人のトレンドセッターがいて、そこからいろんなつながりに派生していくと領域が広がるんじゃないかとよく思います。舞台芸術って総合芸術なので、一部の劇作家は小説家になって、『すばる』とか『新潮』など文芸誌に寄稿していますけど、もっと出られるはずで、メディアでいうと『美術手帳』に舞台芸術のコーナーがほぼないのも残念ですし、今、舞台芸術側からそちらに接近できる人材がいないので、そういった各領域に強い人間がそれぞれにいて、それぞれのメディアで何かしらのコラムを持つだけでも違うと思います。一番の代表例で言うと、dumb typeの小山田徹さんですよね。今、京都市立芸術大学の学長をされています。劇団☆新感線みたいな"どエンタメ"もあれば、TEAM NACSがいたりとか。演劇は本来、かなりの領域でいけるはずなのに、プレイヤー側が何か閉塞感を抱えているのは、すごく残念だなと思っています。演劇を紹介できるトレンドセッターが広く耳目を集める形で現れてほしいです。
取材・文/岩本
(2026年3月 3日更新)
チケット発売中 Pコード:539-090
〈Aブロック〉
▼3月7日(土)13:00
▼3月8日(日)18:30
[出演]萌Co.(名古屋学生演劇祭推薦)、劇団あまおと(中四国学生演劇祭推薦)、ペイント・タレント(大阪学生演劇祭推薦)
〈Bブロック〉
▼3月7日(土)17:30
▼3月8日(日)14:30
[出演]劇団愉快犯(京都学生演劇祭推薦)、劇団ちゃねる(エキシビション)、ミムガム(東京学生演劇祭推薦)
〈Cブロック〉
▼3月8日(日)10:30
▼3月9日(月)18:30
[出演]劇団とかげのしっぽ(名古屋学生演劇祭推薦)、カブク(北海道学生演劇祭推薦)、トロイの箱馬(福岡学生演劇祭推薦)
メニコン シアターAoi
一般-2500円 U25-1500円(要身分証) U18-1000円(要身分証)
※未就学児童は入場不可。1枚のチケットで、1ブロック(3団体)の上演がご覧いただけます。
[問] 全国学生演劇祭実行委員会/日本学生演劇プラットフォーム■090-4256-8131
公式サイト
https://jstf.jp/