ホーム > インタビュー&レポート > 「普段の自分たちの思考がドラマになる、それが面白い」(平原) 注目の作・演出家、加藤拓也主宰のた組新作公演が間もなく開幕 『景色のよい観光地』に向けて、キャストが語る
――た組の公演では『綿子はもつれる』(23年)で共演されたお三方ですね。今回の新作のキャストの面々を知った時のお気持ちからお伺いしましょうか。
田村 僕は、加藤拓也君の作品に出させていただくのは『綿子〜』以来です。テツさんと安達さんがた組の公演に出ているのを何回も観ているので、お二人はもう半分劇団員みたいな印象ですね。
平原 おおっ!
安達 フフッ。テツさんはそうですよね。
田村 だから当たり前のようにいる二人という感覚で、とくに構えることもなく楽しみにしていました。
平原 ありがたいことに新鮮味はゼロということでね。
安達 ハハハハ!
平原 いや、いいことなんですよ。何の違和感もなく、安心して出来るメンバーということですから。あ、このメンバーか、よしやれるな!みたいな。
安達 私は、加藤さんの舞台に出るのは今回で4作目かな? 毎回テツさんがいらっしゃって、タムケン(田村)さんも『綿子〜』の時にご一緒したので、お二人がいるのが本当に心強いです。もうお二人にお任せで、私はチョコチョコしていよう〜と(笑)。
――加藤さんは新作の台本を、皆さんに結構早めに渡されるんですか?
平原 そうですね。めちゃくちゃ早いです。迷惑でした。(一同笑)しかも僕が前回のた組の舞台『ドードーが落下する 改訂版』(25年1〜2月)の稽古をやっている時に送られてきたので。こんなの読める余裕があるわけない!って、置いておきましたね。だいぶ寝かせました。
田村 オファーがあった時にはもう、初稿がついてきていましたもんね。ちゃんと読ませてもらって「こういう役」ということを知って。で、稽古のひと月前ぐらいには決定稿が出来上がっていて。
安達 すごいですよね!
平原 でもね、筆が早すぎるのも問題で。台詞を覚えなきゃいけない、稽古の初っ端からもうだいぶ入ってないといけないというプレッシャーが......。
安達 確かに(笑)。私も、お話をいただいた時にはもう台本がありましたね。ただ、私は何事もギリギリにやるタイプなので......。
平原 わかる!
安達 はい、そんなに早く開くこともなく(笑)。
平原 そうよね、やる気が出るのってギリギリだもんね。追い込まれないと。

――ギリギリまで寝かせて一読した台本の感触を伺いたいです。舞台となるのは山中の観光地にあるお茶屋さん。その店を田村さんと平原さんが共同で経営していて、安達さんが常連客として訪れるという展開のようですが、はたして何が起きるのか......。
平原 最初は、ごく普通の会話のやりとりがこのままずっと進むのかなと思っていたら、途中でやっぱり加藤君の狂った部分が爆発して。(一同笑)それが凄く面白かったですね。やっぱりメチャクチャにしたいんだな〜、急に壊したがるんだなと。
田村 人と人が衝突するんですけど、今回は本当に衝突していると言いますか。これまでは、喧嘩に見せないふうに喧嘩していたりする、そういう描き方をするのが加藤君のイメージだったんですけど、今回はモロに出てしまっている、こんなところまで全部見せるんだな!みたいな喧嘩具合で。
安達 一見、穏やかな景色が思い浮かぶような始まりなんだけど、やっぱり加藤さんはいつも人間の嫌な、汚い部分をしっかり見せてくれるんです。そこがすごく面白いと感じますね。
――「景色のよい観光地」のタイトルにあるほのぼの感とは裏腹に......!?
平原 ねえ〜。もう全然、題名とはかけ離れたものになると思います。
――田村さんが演じる"健介"は料理人のようですが、「毒のあるものを調理する」趣味があるという設定に怪しい匂いを感じますね。
田村 そう、劇中で毒料理を作るんです。結構段取りが多くて僕としてはチャレンジですね。舞台上でモノを作って食べさせたことがないので、ちょっと頑張って練習しているところなんです。一応、料理教室に行ったんですよ。
平原 え! そうなの? 行ってあれか!(一同笑)
田村 基本的なことをさらって、プロにちゃんと教えてもらった方がいいかなと思って。まあ簡単な料理は普段からしてます!
平原 なんか料理番組を狙っているみたいなのね。タムズキッチン?
田村 そうですね。料理の仕事のオファーがきたとしたら大成功ですね。
安達 フフフフ。

――そうした技術も必要としつつ、今回皆さんの担うキャラクターがどんな人物なのか、教えていただけますか?
平原 僕が演じる"隆治"はそんなに裏表のない人物ですね。自分の思ったことを言うし、お金が大好きだし、みたいな。これまではそれこそ思いを伏せる役柄が多かったから、いちいち相手に感情を隠す必要もなく、思うままやれて久々に気持ちいいな〜と。でも、出て来る人物皆、基本的に破綻していますね。
田村 僕の健介って役は隆治と少し対照的で、ちょっと芸術家っぽい感じですかね。お店のことを経済的な面だけじゃなく、お客さんに対して倫理的な応対をしていきたいと思っている人物で。でも好奇心も旺盛だったりするところで、ずるずると危険な方向に流されていってしまうという。お互いにズバズバ自分の意見を言っていく関係性ではあると思います。
――そのお店にやって来る常連客が、安達さん扮する"前野"ですね。
安達 そう、前野さんはお茶屋さんの近くで働いている人で。私も、今まで結構暗めな、何か胸に抱えている役が多かったんですけど、今回は本当に単純な人のようです(笑)。あんまり人の気持ちを慮ったりもしてないし、空気も読んでないし、みたいな。だから、今までで一番ポップな役だな〜と新鮮に感じて、すごく楽しいですね。
平原 でも、前野も相当クレイジーだよね。
安達 そうなんですよ。心に陰もないのにこんなにクレイジーって、本当のクレイジーだと思います(笑)。
――あらためて、加藤さんが生み出す劇世界のどういうところに惹かれるのか、お話いただけたらと思います。
安達 私が初めて出会った時、加藤さんはまだ20代後半だったと思うんですが、その頃から加藤さんの台本を読んだり、稽古を見たりすると、若いのにどうしてこんなに人間のことがわかるんだ!? っていつも思うんですね。ああ〜人間ってこうだよなと思う台詞や行動が書かれていて、驚きながら、そこに気持ち良さも感じますね。
田村 僕はやっぱり、台本にかなり強度があるなと思います。どれだけクオリティの高いストーリーを成立させるかをまず考えて、その次に、それに当てはまる俳優を選んでいるのかなと。でも、たとえば同じ役を違う俳優がやったとしても、本質的な部分はしっかりと表れるホンを毎回仕上げてくる、その強さは感じますね。
平原 加藤君の作品って、いい意味で世界観がめちゃくちゃ狭いんですよ。こじんまりとしたコミュニティ内だけの話とか。たぶん加藤君がSFを書いたとしても、ちっちゃい世界観になると思うんですよね。でもそこで、「普段僕らがやっていることが、実はすごいドラマを含んでいることなんだ」とわからせてくれる。普段この人に対してこう思っているけど言えないなとか、こういうことを言われたらすごく嫌だったとか、そういう普段の自分たちの思考がドラマになる、それが面白いんですよね。そんな細かいことはドラマじゃないと思っちゃう作家さんが結構多いんじゃないかなと思うんですけど。加藤くんは逆にそこだけに注目し、ピックアップして書いているから、台詞も普段喋っているそのままの感じで面白い。なかなかいないタイプの作家さんだなと思います。
――おっしゃるように、劇中の会話があまりにリアルで台詞と感じないところが加藤さんの作品の大きな特徴と思いますが、稽古ではどのような演出がされているのでしょうか。
平原 う〜ん......とにかく分かりやすくしようとか、演劇的にやろうとかすると、加藤君は嫌がりますよね。自然にやっているように見えることが大事なんだろうなと。僕たちが無理矢理何かを提示しようとしなくても、お客様が勝手に拾い上げてくれますから。
田村 僕は、台詞自体は普段喋っている言葉とまったく同じというわけではないとは思うんですが、でもそれが日常の会話と同じように見えるということは、役者や美術、照明など、そこが日常に見える調和を演出して、それが成功しているということなんだと思います。
安達 私は、最初に加藤さんの作品に出させていただいた時はまだ舞台経験が浅くて、それが逆に良かったのかもしれません。舞台のセオリーみたいなものがわかってなくて、未だにわからないですけど(笑)、そこを意識しなくてよかったのがすごく心地良くて。台詞も、それまで触れてきた台本にあったものとは違ったので、最初は覚えにくいと思ったんですけど、今はそれが楽しくなってきましたね、普段プライベートで喋っていても、あ〜加藤さんの台詞っぽい!と思ったりとか(笑)。言葉の意味が曖昧になってきたりするところに面白さを感じます。

――毎回謎めいた吸引力を持つ加藤さんの劇世界、その新作で皆さんがどんな景色を見せてくださるのか楽しみです。
田村 気持ち悪い部分と、どこか気持ち悪いけど見たい、その両方があると思いますね。体から変な汁が出る〜と感じてもらえるように頑張ります。(じっと見つめている平原に)変なこと、言ってないでしょ!
平原 いやいや、頑張っていいこと言おうとしてるなって。舞台よりちょっとかしこまっている感じするもんね。
田村 そんなことないよっ。面白さを伝えようとしてるだけよ!
安達 あと、落ち着いて座ってる(笑)。
平原 そうそう、いつも落ち着きがないんですよ。そこがタムケンの魅力だから。
安達 ハハハハ! 今回の作品は、すごく鋭利な部分もありながら、だけど日々の生活って何かが起こったとしてもなかったことのようにぬるっと続いていくよね、みたいな感覚でしょうか。そのぬめり感がどういうふうに後味として観てくださった方々の中に残るのか、そこは楽しみだなと思っています。
平原 僕は今回の作品は、誰かに感情移入してみるというより、登場人物たちを眺めてみてほしいなという感じですね。その場で起こっているこの人たちの行方を、面白がって見てくれたらいいなと。料理のいい匂いも感じながらね。先日料理を作るシーンの稽古をやったら、めちゃくちゃヤバかったです。お腹空かしてきたら、「演劇どころじゃねえな、早くゴハン行こ!」ってなっちゃうかも。
安達 早く終わらないかなって?(笑)。
平原 まあ本当に、ただただ楽しんで見れる作品だと思いますので、ぜひ気軽に劇場に来てください。
取材・文/上野紀子
撮影/森 好弘
(2026年1月16日更新)
【東京公演(プレビュー公演)】
▼1月17日(土)・18日(日)
【東京公演】
▼1月21日(水)~2月1日(日)
東京芸術劇場 シアターイースト
1月18日(日)一般発売 Pコード:538-839
▼2月21日(土)13:00/17:00
▼2月22日(日)12:00/16:00
ABCホール
全席指定-7200円
[作・演出]加藤拓也
[出演]平原テツ/田村健太郎/安達祐実/宮崎秋人/呉静依
※未就学児童は入場不可。出演者変更に伴う払戻し不可。車いす席をご利用のお客様はチケットをご購入の上、事前に問合せ先にご連絡下さい。2枚以上でご購入されたお客様は、状況によっては連席でご案内できない場合がございます。予めご了承ください。公演中止を除き、払い戻しはいたしません。予めご了承下さい。
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