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生き抜く力と永遠の絆を描く
劇団四季の新作『ゴースト&レディ』、大阪で開幕!

劇団四季の新作オリジナルミュージカル『ゴ-スト&レディ』が開幕した。原作は、モーニング(講談社)で2014年~15年に連載された藤田和日郎(かずひろ)のコミックス『黒博物館 ゴーストアンドレディ』。19世紀の欧州で近代看護の礎を築いたフローレンス・ナイチンゲール(フロー)と、芝居好きなゴースト・グレイが紡ぐ不思議な絆を、史実を織り交ぜて描いた作品だ。それを劇団四季が初ミュージカル化。演出は四季でミュージカル『ノートルダムの鐘』を手掛けたスコット・シュワルツ、脚本・歌詞には『アナと雪の女王』の日本語台本・訳詞などで知られる高橋知伽江らが担う。昨年5月に初演した東京、続く名古屋公演も千秋楽を待たずに完売した人気作。漫画を知る人も知らない人もワクワク感満載の舞台を、演出家スコット・シュワルツのコメントを交えてレポートする。

ghostandlady251209-2.jpgスコット・シュワルツ

いきなり幕前にマジックな登場で現れる"灰色の服の男"。ロンドン・ウェストエンドにあるイギリス最古の王立劇場ドルーリー・レーン劇場に出没するシアターゴーストのグレイだ。彼が現れた演目は大当たりするという伝説の幽霊。芝居を愛し、何百年も観劇を続けて来た彼が「ナイチンゲールの秘密の話を芝居にしたから観てくれ」と観客に語り掛ける。ここから開幕。時は19世紀、舞台はイギリス。劇場で観劇していたグレイに声を掛けるフローことナイチンゲール。「オレが視えるのか!?」。「私を殺してください」。これが2人の出会いだった。フローは16歳の時に天啓を受けてゴーストが視えるようになり、傷ついた者を癒す看護の道を自らの使命と信じている。だが、看護婦の仕事をさげすむ世間の風潮と家族の反対に、生きる意味を見失っていた。

最初は願いを拒んだグレイだが、絶望の底まで落ちたら殺すという条件で約束。死を覚悟したフローは信念を貫く決意をし、グレイと共にクリミアの野戦病院へ赴く。前半のここまでで、グレイが壁を抜けられるなどゴーストの持つ力がわかり、バンパイアの群舞まで登場して笑える。ただのナイチンゲール偉人伝ではないぞ、とワクワク。野戦病院では劣悪な環境と女性蔑視の中、看護婦たちと改善に奔走するフロー。その熱意と驚異的な行動力にいつしかグレイも心を動かされていく。"クリミアの天使""オイルランプを持った淑女"と呼ばれるようになったフローを邪魔に思い、亡き者にしようと企む権力欲の塊の軍医・ホール。なんと、彼の傍らにはグレイと同じゴーストがいた。そして、そのゴーストが姿を現す衝撃的な瞬間!幕が下りる。

2幕ではグレイの過去も明らかになり、決闘もありというスリリングな展開に。史実を散りばめながら、イリュージョンも使い、早いテンポでドラマチックに描き上げる永遠の絆の物語で、号泣率が高い。ラストの演出も非常に美しく、客席から声が漏れるほど。フローが信念を具現化していく姿や魅力的なゴーストなどキャラクターが際立ち、彼らの思いは歌と音楽で増幅され、タイミングを得た楽しいダンスシーンで盛り上がる。観る人によって刺さる部分がそれぞれある、多重のおもしろさが感じられる作品だ。「原作の味わいとスピリットを捉えつつ、心の琴線に触れる作品を心がけました。さらに情熱もあり、楽しくてワイルドなアドベンチャー物語だと思います」と演出家・シュワルツ。そのお気に入りのシーンは、フローと看護婦たちがクリミアへ出発するシーンの楽曲と、グレイの過去で描かれる飲み屋のダンスシーンだそう。

東京、名古屋公演を経て「キャラクターの解釈がより深まり、感情の振れ幅がさらに深まったと思う。作品自体も成長し続けています」。舞台化にあたり、漫画にあるシーンも盛り込み、また漫画には存在しない大事なキャラクターも登場する。「舞台独自の存在として物語を伝えていくという仕上がりになっています。原作を知っている人も知らない人にも、楽しんでいただけるとうれしい。お芝居の幕が下りた時に、なにか心に触れる作品であったらいいなと思っています」。チケットは既に3月29日(日)公演分までほぼ完売。リピーター率が高い作品なので、大千秋楽5月17日(日)までの公演は早めにゲットしておきたい。

取材・文:高橋晴代
舞台写真:野田正明




(2025年12月 9日更新)


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劇団四季オリジナルミュージカル『ゴースト&レディ』

▼5月17日(日)まで上演中
大阪四季劇場(ハービスENT内)

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公式サイト