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最強コメディエンヌ決定戦「エミィ賞グランプリ2025」
花野紗南が初挑戦で優勝!

11月17日、"最強のコメディエンヌ"を決定する「エミィ賞グランプリ2025」決勝大会が大阪・HEP HALLで行われ、初出場の花野紗南がグランプリに輝いた。

「エミィ賞グランプリ」とは、コメディ女優の故・牧野エミさんの業績を記念して2017年から始まったコメディエンヌ決定戦で、今年で8回目を迎える。決勝大会では予選を勝ち抜いた6人が制限時間10分で一人芝居を披露。6人の演技力やコメディセンスなどを審査し、彼らの採点と観客得票数を合わせてグランプリを決定する。

2025年のファイナリストは、西山ともか(KusuKusu on parade)、延命聡子(中野劇団)、堀玉笑(ハイイロ)、花野紗南、西村菜波(劇ファクトリー「aon 座」)、吉田真知子(喜劇結社バキュン!ズ)という顔ぶれ。審査員はエミィ賞実行委員長の升毅をはじめ、土田英生(劇作家・演出家/MONO代表)、岡部尚子(劇作家・演出家/空晴代表)、加美幸伸(FM COCOLO DJ)、杉野叶依(俳優/2018年No.1コメディエンヌ)、たくませいこ(俳優/2017年No.1コメディエンヌ)が務めた。また、司会進行は上田剛彦(ABCテレビ)が担った。

emi-award251225-1.jpg 2年連続でトップバッターとなった西山ともかは、自身作の『WORKING Undead』を披露。ハロウィンに乗じて他界した妻がゾンビとなって夫に会いに行くというもので、ゾンビを全身で熱演。笑いはもちろん切なさも感じさせる物語を展開した。西山の演技に升は、「一つひとつのワードがすごく新鮮で、それは今の人ならではという感じがしました。構成も素敵でした」と語った。

emi-award251225-2.jpg2023年から3年連続ファイナリストの延命聡子は伊藤えん魔作『吾輩は猫である』を演じた。今回は猫と、過去2作品とは対照的なキャラクターで、じんわりと温もりが伝わるような優しい世界観で魅了した。岡部は「びっくりするほどひとつの世界観ができ上がっていて、いろんな気持ちにさせてもらいました。エミさんといえばダンスみたいなところがあって、延命さんはまるで踊るようにセリフを言って動いているところも本当に素敵でした」と述べた。

emi-award251225-3.jpg続いては最年少の堀玉笑が『一生のお願い』(作:福井拓郎)を。土下座シーンから始まり、観客の期待感をぐっと盛り上げる。そして、「不労所得がほしい」と、ある計画に友達を巻き込もうとするキャラクターを生き生きと演じた。そんな堀を杉野は「いい意味で、こんな人がいたら嫌だな~と思いながら見ていました(笑)。どうなってるんだろうと思うくらいのマシンガントークで楽しませていただきました」と楽しんだ様子。加美も「見ている側との距離感にゾクゾクしました。お話も面白く、徳川の埋蔵金という僕らが忘れていたワードをのせてきて、たくさんの情報やネタを出してきて、そこからどんどん膨らんで、オチもちゃんとあって。大変エネルギッシュで、若さが溢れていて気持ちよかったです」と言及した。

emi-award251225-4.jpg4番目に登場した花野紗南は、二朗松田(カヨコの大発明)作の『ガスパビリオン』を披露。大阪・関西万博で実際に勤務していた花野の経験を生かしたネタという。たくさんの人でにぎわう万博、「ガスパビリオン」では一体何が起きていたのか。パビリオンでの表舞台と控室を往復する花野の熱演が、多くの笑いを巻き起こした。たくまは「めちゃくちゃ楽しかったです。お見事でした!」と感服。

emi-award251225-5.jpg2度の落選を経て、三度目の正直でファイナリストとなった西村菜波は『感情のデパート』(作:今井慎太郎)を熱演。"女優の卵"に通販番組の演技指導をする先輩女優を演じた西村、表情や声色を巧みに変えて演じ切る姿を潔く描いた。土田に感想を求めると、「すごいなと思いました。西村さんが演じたキャラクターは僕が最も嫌いなタイプの演技をする人なのですが、これで嫌にならないのは、西村さんの技術と品だと思います。演技の勉強を見るには素晴らしいネタだと思いました」と述べた。

emi-award251225-6.jpg最後は昨年に続いて決勝進出を果たした吉田真知子で『いつも通りで』(作:スプーン曲げ子)を。初めて行った美容院でうとうとしている間に髷を結われたと独白する女性。その後、髷を結われて以降の日々を淡々と語る姿に、終始大きな笑いが巻き起こった。「いや~、よくできた本です。完璧だなと思いました。状況もイメージできて、話が進んでくるとこっちも想像できて、でもそれを超えていって。オチもよくて素晴らしかったです」と升、絶賛した。

emi-award251225-7.jpgそしていよいよ結果発表へ。700点中650点を獲得した花野が2025年の「No.1コメディエンヌ」の称号を獲得した。驚きの表情の花野だが、「ありがとうございます! 本当にいただけると思っていなくて、皆さん面白かったですし、ずっと不安で稽古中も本当に面白いのかなっていう瞬間もあったんですけど、言葉が出てこないくらい光栄です。本当にありがとうございます!」とまばゆい笑顔を見せた。

emi-award251225-8.jpg実行委員長の升毅は、「審査員の皆さんがおっしゃるように審査は難しいですが、数字にするとか何かしないと結果が出ないので、こういう形になっています。でも、この数字がすべてじゃないなとつくづく思いますし、どなたがグランプリを獲るかわからない中で、いろんなポイントが皆さんの中にあって、それがお客さんや審査員のどこに刺さるかみたいなことだと思います。その結果、花野さんがグランプリになりました。大いに自信を持っていただきたいです。今回残念ながら獲得できなかった皆さんも大いに自信を持っていただきたいと思います。とっても素敵な『エミィ賞グランプリ』になったと思います。ありがとうございました」と総評した。

emi-award251225-9.jpg決勝大会の終了直後に、花野に改めて感想を尋ねた。約5年前から「エミィ賞グランプリ」の存在を知っていた花野だが、今回初めて応募したきっかけをこう話す。「なかなか、自分イコール一人芝居というイメージがつかなくて。脚本を書く力もないと思っていたので、挑戦ができませんでした。ただ、今年に入って少しずつお芝居で外部の作品に呼んでいただく機会も増え、今だったらチャレンジできるんじゃないかと思って応募してみました」。

『ガスパビリオン』の脚本は二朗松田が担った。「もともと、二朗松田さんの書いた作品がすごく好きで、なかなかご一緒する機会はなかったのですが、いざ自分が一人芝居をするとなった時に、最初に思いついた脚本・演出家の方が二朗松田さんでした。最初は何か短編作品をお借りできないかと思っていたのですが、10分ぐらいの作品は持っていないということで、1から書いていただくことになりました。そうして大阪・関西万博で働いていた私の経験をめちゃくちゃふくらませてくださって、完成しました」と花野、明るい笑顔で語ってくれた。

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取材・文/岩本
撮影/松田ミネタカ




(2025年12月26日更新)


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「エミィ賞グランプリ2025
決勝大会」

2025年11月17日(月)
HEP HALL(大阪市北区梅田「HEP FIVE」8階)