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2025年も八面六臂の活躍を見せる笑福亭鶴瓶
「夢の三競演」を前に語る一年の総まとめ

今年で21周年となる、奇跡のような三人会「夢の三競演」。桂文珍、桂南光、笑福亭鶴瓶という実力派落語家3人が、毎回ワインがごとき豊穣な高座を繰り出し観客を魅了していく。インタビューの三番手は、落語へのほとばしる情熱を内包しながら、バラエティー番組の司会をはじめ、映画やドラマでは堂々と主演をはる笑福亭鶴瓶。多種多様なジャンルへの向き合い方、落語家という天職に巡り合えた感謝の想い、そして「三競演」の共演者である2人の先輩へのリスペクトを熱く語ってくれた。

――まずは、恒例の質問です。ご自身にとって今年のビッグニュースを教えてください。

笑福亭鶴瓶(以下・鶴瓶)「映画『35年目のラブレター』ですよ。飛行機の中でも、よう流れてるんですよ。前の席の人が見とったりね。そんなことってないじゃないですか。しかも、10月にロスで開かれた『Global Stage Hollywood Film Festival2025』でレッドカーペットを歩いたんですよ。で、向こうで落語会もして。やっぱり映画というひとつの形があって、それを芯(主演)でやらせてもらった時に、これだけ広がっていくというんかと。『ディア・ドクター』から始まって、『おとうと』もそうやし、ずっといろいろやらしてもらって。映画の求心力っていうんですかね、考えたらすごいですよね」。

――映画に向き合う時のお気持ちは、落語とはまた別ものですか?

鶴瓶「いやいや、別に普通です。やりようがないじゃないですか僕ら。そんな芝居に特化してやってるわけでもないですから。というのは、落語を演じる時はいろんな方向でやるでしょ。ここが一番集中するところかなとか、ここから畳みかけるように、お客さんをつかんでいこかなとかって思う。そういうのをやっていると、映画でもここでスイッチ入れるとか、ここで行くとかっていうのは、自然となってるのかもしれませんね。落語で覚えたひとつの形というのが、あるんやと思います。だから映画も自然とそうなりますよ。うまいことなってるから、映画っていうか、脚本が。『ここやな』って、いうのが分かるようになりますよね。それがピタっと合ったら、喜んでもらえるし。そういう意味では落語やってて良かったなと思うし、映画にも返ってくる。僕、考えたら映画ぎょうさん出てますよ。なんでやろ(笑)? 『35年目のラブレター』は原田知世さんを従えての主役でっせ。 まぁ、ありがたいことですよね」。

――役者としても輝きを放つ鶴瓶さんにとって、今年で21周年を迎える「夢の三競演」は、どんな存在ですか?

鶴瓶「改めてやけど、いいメンバーやなと。文珍兄さんも南光兄さんも、いい先輩やし、全然ぶれてはれへんからね。そこがあるからついていけるというか。落語に関しては、僕は付いていくのに必死ですよ。背中は、ほとんど見えてへん」。

――先輩2人の魅力を具体的に語っていただけますか?

鶴瓶「2人とも、よう似てるんですよ。物の考え方も、よう似てるんです。文珍兄さんは、すべてすごいですよ。人の評判もそうやし、もっと言うと丸なったからね。よう考えたら南光兄さんの方が、頑固ちゃいますか。文珍兄さんは、割と融通きくけど、南光兄さんは融通きかんでしょ。それがいいんですよ、昔から変わらない。ええ人と知りおうたな、ようこのメンバーの中に入れてもうたなと思いますよ、ホンマに」。

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――南光さんとは同い年。文珍さんは12月のお誕生日で喜寿を迎えられますが、最先端のAIをテーマにした新作も作り出しておられます。

鶴瓶「僕は実際にあったことを、たまたま鶴瓶噺とかでやってたから。そこから自分で落語にするんですけど、お兄さんは創作やからね。AIって...文珍兄さんは、違う仕事に就いても出来はると思うんですよ。 南光兄さんのイメージは、やっぱり代書屋かな。えらい喧嘩しはるやろうけど(笑)。たぶん人の話を聞いて怒らはるやろね。いっぺん怒ったら大変ですよ」。

――分かります。先日のインタビューでも、「鶴瓶さんは、全然コーヒーに興味持ってなかった」と、まだ昨年のロケの話で怒っておられました(笑)。

鶴瓶「ハハハッ。そこがおもろいでしょ。あの2人は別の仕事に就けるけど、僕はもうこの仕事しかないもん。ようやく、この頃、思いますわ。この仕事に就いて良かったなと。変な話、収入的にも、今と同じようなものをよそで何かするかいうたら無理ですよ。あのね、この前、健康診断に行ったんですけど、結果的に問題はなかったんですが不安ですよね。この年になるとね。ほんまにボケたらえらいことになるからね。でも、この2人がおることによって頑張ろうと思いますもん」。

――両師匠は、ある種、鶴瓶さんにとって元気になるお薬でもあるんですね。加えて、健康維持のために何かされてますか?

鶴瓶「僕にとっては、落語をずっーと繰ることが健康維持の方法ですよね。何べんも落語を繰るとか、稽古するとか」。

――さきほど、文珍さんと南光さんは似ている部分があると。例えば、趣味が多いところもそうですよね。鶴瓶さんは、何かご趣味はありますか?

鶴瓶「全然ないなぁ。だから、仕事っていうか。映画をやる、ラジオをやる、バラエティー番組の司会やるっていう。違う方向のいろんなもんをやってるから...」。

――仕事が趣味であると。

鶴瓶「ん~ん、趣味というたら"人"でしょうね。『おもろいなぁ、こいつ』とか。人ですよ。人の観察っていうのが、やっぱり楽しいですからね」。

――また、南光さんは先日の取材で「3人ともスケベエです」と断言されていました。確かに、お三方ともに生きることに"スケベエ"だと納得しました。

鶴瓶「一番スケベエなんは誰やろ? やっぱり、僕かも分かれへんなぁ。この前、『鶴瓶の家族に乾杯』のロケでスイスに行ったんですけど、あるご夫婦にインタビューしてて、僕から奥さんに言うたんですよ。『おたく、どっかで会いましたか?』って言うたら、『えー⁉ 私は覚えてますけど、そんなん言うたら悪いと思うから...お会いしました』と。それが分かるというのは、どんだけスケベエか。魂がスケベエなんですよ。"どっかで見たな、この人"って思って。32年ぶりなんですよ。昔、一緒に宮崎でゴルフした人なんです。うちの嫁はんも一緒やったんですけど、ゴルフって一日一緒じゃないですか。32年前。それを覚えてんねんから、これは、スケベエでしょ」。

――お会いになったのは、32年前の一日だけですか? しかもスイスでの再会! それはスケベエです!! というか、どれだけ"人"に興味がおありになるかが、よく分かるエピソードですね。

鶴瓶「ええ仕事に就きましたなぁ、ほんまに」。

――そんな鶴瓶さんが、今ハマっていらっしゃるネタ、久々にやってみようと思っているネタはありますか?

鶴瓶「だいぶ前に作った『CHINGE』をやろうかと思って。ホンマにあった話で、たまたま乗ったタクシー運転手が高校の同級生の杉本というやつで、それを鶴瓶噺でしゃべったら、落語作家の(くまざわ)あかねちゃんが『こんなんできました』言うて持ってきたんよ。しかもタイトル『CHINGE』って書いてあんねん。それが2012年です」。

――久しく高座にかけておられませんでした。

鶴瓶「作った年に割とやってたんやけど、今はやってなくて。もちろん三競演でもやってないからね。今回、改めてやって、あかねちゃんにも言ったけど『うまいことできてるな』と。ちゃんとできてる。三競演では、みんな過去のネタと重なることが1回もないから、俺も悔しいやんか。だから、『CHINGE』をやったら喜んでもらえるかなと。ただ、こんなコンプライアンスの厳しい時代に...。けど、杉本のあだ名がホンマに"チン毛"やからね。しゃーないでしょ(笑)」。

――では、最後に三競演のみどころをアピールしていただけますか? 

鶴瓶「この三人会のええのは、トップであろうがトリであろうが、例えば『芝浜』ができるんですよ」。

――『芝浜』は、普通はトリネタですよね。

鶴瓶「でも、できるんですよ。『芝浜』をトップでやって、文珍兄さんが『落語記念日』をやっても成り立つんですよね。あの人らが全部、ちゃんと分かるようにやってくれますからね。特に文珍兄さんが何してもバランスを取ってくれますから。すごいです、やっぱり。これは魅力です。どの出番順でも、『おもろかったなぁ、今回の三競演』って言えるのは、やっぱりお兄さんたちがおるからですよ。ほんとに参加できて良かったというのが、謙遜でも何でもなくて。『今年から入ってよ』って言われたって無理ですよ。ずーっと流れてここにいてますから。一緒にこれて良かったと思うし、この人ら、ホンマにすごいでっせ。考えたら。おかしいですやん。もっと評価されるべきですよ。文珍、南光は。でも、そんなんされたいと思てへんもん。僕は、されたい! この人らは、されたないねん。僕は『一生懸命やってるな!』って言うてほしい(笑)」。

取材・文/松尾美矢子
撮影/大西二士男




(2025年11月14日更新)


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夢の三競演2025
~三枚看板・大看板・金看板~

【東京公演】

▼12月18日(木)
LINE CUBE SHIBUYA

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【大阪公演】

Pコード:537-078
▼12月26日(金)18:00
SkyシアターMBS
全席指定-7000円 
[出演]桂文珍/桂南光/笑福亭鶴瓶
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