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ぴっけろ&くまっぴーも出演!? 
歌舞伎の様式美と現代的な遊び心で魅了した『流白浪燦星』

2023年12月に初演され、話題を呼んだ新作歌舞伎『流白浪燦星』が、9月に京都・南座にて待望の再演を迎えた。本作は、モンキー・パンチ原作の人気漫画「ルパン三世」を歌舞伎化したもので、再演では片岡愛之助をはじめ、尾上右近、市川笑三郎、市川笑也、市川中車、坂東彌十郎ら実力派俳優が出演。9月14日(日)の夜の部では、ぴあ関西40周年記念貸切公演が行われ、歌舞伎と「ルパン三世」の世界観が見事に融合した舞台を楽しんだ。

第一幕では、御所の門を破って流白浪燦星(愛之助)と次元大介(笑三郎)が登場すると、会場は一気に華やいだ雰囲気に。そして、愛之助がおなじみの口調で「流白浪燦星!」と名乗ると、歓喜の声があちこちから上がった。舞台は変わって春爛漫の南禅寺。石川五右衛門(尾上右近)が山門に現れ、桜の花びらが舞う中で『楼門五三桐』の名セリフ「絶景かな」で決める。そこへ流白浪と次元、峰不二子(笑也)も登場。流白浪を追うように銭形刑部(中車)もやってきて、さっそく大立廻りに。和楽器による「ルパン三世」のテーマが流れ、物語が動き出した。

舞台の転換中、客席に現れて流白浪を探す銭形刑部。銭形の部下たちも「流白浪を知りませんか?」と観客に尋ねる。「あっちに行きました!」とノリよく返す観客の姿に笑いが起こる。その後も神出鬼没に現れる銭形は、原作の世界観を色濃く舞台に持ち込み、場内を沸かせた。一方、真柴久吉(彌十郎)や唐句麗屋銀座衛門(猿弥)らが登場する場面では、古典歌舞伎のような重厚感を漂わせる。その緩急を巧みに使った展開で息つく暇なし。花道でのアクロバットも迫力満点。さらに愛之助が六方でも沸かせた。

第二幕では、片岡千壽が映画「ルパン三世 ルパンVS複製人間」のマモーを思わせる通人萬望軒に扮して登場。水先案内人として、歌舞伎の解説を挟みつつ物語へと導いていく。第一場では不二子の花魁道中もあり、豪華絢爛な衣裳に目を奪われる。さらに愛之助が2Dアニメ劇場版「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」で声優を務めたムオムを彷彿とさせる霧王夢斎でも登場。そこへ田舎侍の片岡千次郎が現れ、愛嬌のある語り口で「今日はチケットぴあさんの貸し切り」と言い、ぴあ公式キャラクター「ぴっけろ&くまっぴー」を取り出した。「ぴっけろとくまっぴーと一緒に股くぐり」と萬望軒の股をくぐると、「チケットを取るならチケットぴあ、歌舞伎見るなら南座へ!」と笑顔でPRした。第二幕の最後は流白浪と五右衛門の一騎打ち。その前には戦いをあおるような大薩摩の唄と演奏が響いた。そして愛之助と右近が本水を使った迫力満点の立廻りで魅了、水しぶきが容赦なく客席に飛び散った。

第三幕では、五右衛門と糸星(廣松)との悲恋に涙しつつ、五右衛門の名セリフ「つまらぬものを斬ってしまった...」も聞けて大満足。また、流白浪らとからくり人形たちとの大立廻りでは、歌舞伎俳優たちのコミカルかつダイナミックな動きに目を奪われた。最後は『白浪五人男』の"流白浪アレンジ"を。流白浪、次元、五右衛門、不二子、銭形が華麗な衣裳で居並ぶ姿は壮観。それぞれが名乗りを上げると、天井から小判を模した金の紙吹雪が降り注ぐ。観客は一斉に天井を見上げて大歓声。賑々しく幕を閉じた。

歌舞伎の名場面や様式美をふんだんに取り入れつつ、「ルパン三世」のキャラクターの特徴を丁寧にくみ取った衣裳や、和楽器によるテーマソングの演奏など、五感を刺激する演出で「歌舞伎×アニメ」のさらなる可能性を示した『流白浪燦星』。歌舞伎ならではの迫力も堪能でき、「歌舞伎を見た!」という満足感に包まれた。

取材・文:岩本




(2025年9月26日更新)


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©モンキー・パンチ ©松竹

流白浪燦星
≪ぴあ関西40周年記念貸切公演≫

9月14日(日) 16:00
南座
[出演]片岡愛之助/尾上右近/市川笑三郎/市川笑也/市川中車/大谷廣松/中村鷹之資/市川青虎/市川猿弥/坂東彌十郎