ホーム > インタビュー&レポート > 劇団☆新感線の最新作を 柚香光、鈴木拡樹、いのうえひでのりが語る
鈴木は貴族の源蒼(みなもとのあお)を、柚香はその妻・紅子(べにこ)を演じる。役どころについて尋ねると、二人は次のように話した。「私が演じます紅子は鬼です。平安時代の人間界に生きる鬼、人の妻であり、子の母であり、そして、一人の女性、である彼女は、自分が鬼であることに対して苦しみ、どうしたら人の血が流れている蒼との愛を貫けるのか葛藤します」と柚香。鈴木は「蒼は、10年前に妻の紅子が失踪する事件が起こり、心にぽっかりと穴が開いた状態で過ごしていたところ、家臣が鬼の手を持ち帰ったことをきっかけに"もしかしたら紅子は鬼にさらわれたのではないか"という思いに至り、家族を取り戻す旅をし、紅子に会うために奔走します」。
鬼を演じると聞いて本当に嬉しかったと柚香。「心がグワン!と引っ張られまして、なぜここまで自分が鬼の役をしたいのだろうと思うくらい、本当にやりたいと思ったお役でした。稽古を通じて、なぜ自分が鬼を演じたかったのか、きっとわかってくるのではないかと思っております」。鈴木も夫婦役は珍しいと続ける。「夫婦の役は本当に少ないので、これから作り上げていくことが楽しみで仕方ないです」。
この二人に対する期待感をいのうえはこう話す。「光ちゃんは、宝塚でさんざっぱら男よりかっこいい男をやり続けてきましたが、今回は鬼であることを弱みに持っている必要以上に弱い女性の役をやってもらいます。そんな彼女に生きる糧を持たせてくれたのが拡樹演じる源蒼。蒼は積極的に行くキャラクターじゃないのに秘める思いは強いという、ちょっと不思議なキャラクターなので、紅子と蒼のそういったところがうまいこと絡み合えば、いい話になるのではないかと思っています」。
「弱い女性であるということ。そして何より妻であり、母であるということが、私にとってはすごく新しい一面です」と柚香。男役を脱ぎ捨て、女性を演じるということ以上に、自身のいろんな面を届けられるのではないかと話す。
いのうえ曰く"不思議なキャラクター"という源蒼を演じることは自分の解放でもあると鈴木。「紅子を救いたいという目的があるのですが、どうもマイペースなところもありまして、旅の途中でちょっと気が抜けるようなことも言っちゃいます。そういうところは僕も同じなのかなと思うので、ちょっと恥ずかしいですけど、そこは自分の解放になっていくと思います。今回は演じながら自分自身に寄っていくという挑戦でもあり、楽しみな部分でもあります」。
青木豪による書き下ろしの『紅鬼物語』は、役もあてがきだ。青木から何を求められているのか、脚本から感じ取れる場面はあるのだろうか。「僕の場合は、紅子たちを探す旅の途中で、協力者がどんどん増えていきます。そこの協力者が色濃いメンバーで、笑えるシーンなども出てきます。その中で蒼は淡々と軌道修正しながら進んでいく感じだったので、ガイドラインに戻す役どころも与えてくれているのかなと思いました」と鈴木。
柚香は、「紅子の葛藤や苦しみ、愛情など、たくさんの要素が緻密に入り組んでいるものを表現させていただける。しかもいろんな場面でいろんな表情を見せられるように台本を作ってくださったことに感謝しています。一つひとつの表情、一つひとつの心の機微を丁寧に、色濃く、深く作っていきたいと思っています」と話した。
役への向き合い方も稽古を重ねるごとに変わっていると言う。「僕は日々、"こうかもしれない"を更新しています。見えてくる課題も多ければ、得るものも多いのです」と鈴木、アップデートを重ねる毎日だ。
一方、柚香は蒼の存在感に気づきがあったという。「稽古が始まると、蒼がどれだけ大事な存在で、どれだけ愛していて、また、二人にとってどれだけ娘が大切な存在であるかということを、台本を読んだ時以上に感じて、それは私が想像していたものよりも、もっと大きくて、もっと深いものだったと気づきました。蒼が発する一言一言のセリフや眼差しから、そんなもんじゃないよと気づかされているところです」。
7年ぶりに劇団☆新感線に出演する鈴木。当時の経験は鈴木に何をもたらしたのだろうか。「僕は劇団みたいなスタイルが大好きで、そういうものに憧れてこの世界に入りました。今でも劇団ならではのグルーヴ感を目標にしたいという思いがあって。これってすごく強みになるんです。特にシリーズ作品では、その後のシリーズで誰かが欠けても補っていける。そういう体制をしっかりと固めておくことができるのが劇団の強みだと改めて思って、それをどの現場でも体現できるようにしようと強く思いました」。
殺陣も定評がある鈴木。その印象を柚香に尋ねると「スライディングでスパーッ!としていました。スカー! イェーイ!みたいな(笑)」と、表情豊かに、元気いっぱいに教えてくれた。そんな彼女につられて笑う鈴木。「守られている方がイェーイ!って! 面白いけど(笑)。殺陣をやるにしても、やっぱりお芝居なので安全第一です。なので、呼吸を合わせることが大事ですが、それ以外は文字通り"殺陣"なんですよね。本作も殺陣師の川原正嗣さんがアクション監督として入ってくださっているのですが、いかにギリギリな戦いをしているのか、そういった表現がとても素晴らしいです」。
『紅鬼物語』は大阪から開幕する。最後に意気込みを聞くと、鈴木は次のように語った。「僕は大阪の堺出身なので、大阪の劇団が45周年というのも、大阪からスタートできるというのも非常に嬉しく思います。今回は出演する側なので、この素晴らしい作品を祝いながら、しっかりとお届けしたいと思います。劇団☆新感線を長年追ってきたファンの方も、新しく観てくださる皆様も、劇団☆新感線をより好きになってもらえるように努めますので、劇場でお待ちしています」。
柚香は「17年間、兵庫県におりましたので、こうして大阪、関西の地に戻ってくると"来たよ!"と思って嬉しくなります。大阪の皆様にお目にかかれることがすごく嬉しいです。劇場でお目にかかれることを本当に楽しみにしていますし、観にいらした皆様に、"いい舞台に出会った。観られてよかった"と心から思ってもらえる作品にしたいと思います」と続けた。
最後にいのうえが、次のように締めくくった。「民話・伝承を素材にした作品も、女性がしっかり真ん中で描かれている芝居というのも、新感線では珍しいと思います。新感線のいのうえ歌舞伎としては一風変わった、あまり観られないタイプのお芝居になると思うので、この機会を見逃さず、劇場に駆けつけて、観ていただきたいと思います。頑張ります」。
取材・文/岩本
撮影/福家信哉
(2025年5月12日更新)
チケット発売中 Pコード:532-119
▼5月13日(火)~6月1日(日)
(月)(水)(土)12:30/18:00 (火)18:00 (木)(金)(日)12:30
※5/26(月)12:30。
※5/14(水)・5/20(火)・27(火)休演。
SkyシアターMBS
全席指定-15800円
ヤングチケット-2200円(22歳以下対象/当日引換券/要身分証)
[作]青木豪 [演出]いのうえひでのり
[出演]柚香光/早乙女友貴/喜矢武豊/一ノ瀬颯/樋口日奈/粟根まこと/千葉哲也/鈴木拡樹/他
※未就学児童は入場不可。ヤングチケットは来場時に22歳以下のみ購入可。当日引換券。開演1時間前から、整理番号順に「当日券受付」にて、年齢明記の身分証提示の上、座席指定券と交換いたします。 ※出演者変更に伴う払戻し不可。車いす席をご利用のお客様はチケットをご購入の上、事前に問合せ先にご連絡下さい。2枚以上でご購入されたお客様は、状況によっては連席でご案内できない場合がございます。予めご了承ください。公演中止を除き、払い戻しはいたしません。予めご了承下さい。
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