ホーム > インタビュー&レポート > 喜劇発祥120年記念に松竹新喜劇の名作2本立て上演 劇団を率いる5人と15歳の新メンバーにインタビュー
――扇治郎さんは『幸助餅』では幸助、『村は祭りで大騒ぎ』では村役場の職員を演じられます。
扇治郎 『幸助餅』は曽我廼家五郎さんの作であり、ご自身で演じられていた作品で、祖父(藤山寛美)も演じてきた作品なので、このお役をいただいた時はびっくりしました。祖父の初演の昭和50年、当時祖父は46歳、僕は今37歳ですから幸助役としては少し若いかなと。そして、曽曾我廼家八十吉さんがこれまでで雷を演じた最年長の68歳。年齢差を感じさせないよう、演じられたと思います。歌舞伎から喜劇に移して作られた作品で、舞台で時代劇を観慣れている方は少ないと思いますので、お芝居を観た、と感じていただけるかと。先輩のおかげで今、自分がいるということを本当にヒシヒシと感じています。そういう部分を役を通して表現できたら。人の温かみや思いやりを自分の心に受け止め、人間の弱さや情の部分を出して頑張っていきたいと思っています。『村は祭りで大騒ぎ』では、村の役場の職員役で最後の方に川中さんと一緒に出させていただくのがすごく楽しみです。
――天笑さんは『幸助餅』でお大尽・吉右衛門、『村は祭りで大騒ぎ』ではヒロインの幼馴染を。
天笑 松竹新喜劇は「僕、実はこうだった」というドンデン返しのお話が好きで、今回2本ともそんなお話です。『幸助餅』は舞台が開いてすぐに出て来るお金持ちの役。この作品は30両というお金が主軸になっていて、そこからいろいろな騒動が起こるんですが、昔、その30両を僕が舞台に持って出るのを忘れて...という事件があり、個人的に思い出がある作品です。『村は祭りで大騒ぎ』では、今回久々に恋愛する役をいただきました。僕は最初、けっこう恋愛している役が多かったんですが、最近は遠のいていて。そこは観ていただきたいですね。
――一蝶さんは『幸助餅』で太鼓持、『村は祭りで大騒ぎ』ではヒロインの婚約者の役ですね。
一蝶 『幸助餅』は、僕が松竹新喜劇に初めて出た時の演目で、その時からほんとに大好きなお芝居で。僕が3年前に曽我廼家の名前をいただいた五郎先生の作品というのもあり、すごくご縁を感じています。時代劇の上演は松竹新喜劇の特徴のひとつ。その中で出番は少しですが、幕が開いてすぐ、にぎやかしの太鼓持をやらせていただきます。松竹新喜劇の時代劇、これから始まるなって思わせられたら勝ちやなと。松竹新喜劇にしか出てこないような特徴的な役でもありますし、パアッとやりたいと思っていますので、オープニングの華やかさ派手さを見ていただければと思います。『村は祭りで大騒ぎ』は川中さん演じる美代子の娘の婚約者で、お金持ちのプレイボーイという謎のフレーズがついていまして、天笑くんと三角関係になるという。川中さんとはお話している中でどんどん話が膨らんでいくので、稽古で川中さんとの化学反応を楽しみたいです。作品の内容も少し昔と書き換わっている部分もあり、演出の先生と一緒に話し合って膨らませて、最終的に楽しい話になると思っています。
――いろはさんは『幸助餅』で芸者・清香、『村は祭りで大騒ぎ』ではヒロインの奈津美役。
いろは どちらの作品も、私が松竹新喜劇に入ってから初めてやる作品なので、すごく楽しみです。『村は祭りで大騒ぎ』で、川中さんが演じられるお母さんの娘役をさせていただきます。初共演なので、これもとても楽しみです。見どころは三角関係のところと、一番観てほしいのは、川中さんのお母さんが娘にすごく愛情を持っていて、口では言えない心情を行動に移して娘の恋心を成就させようとするところ。その気持ちに対する娘の行動や母の愛情のありがたさなどを表現できたらと思っています。あと、まだわからないですが、台本には踊りのリーダーと書いてあったので、もし踊りがあるとしたら踊りたいです。私、ミュージカルをやっていたこともあるので。
――桃太郎さんは『幸助餅』で大黒屋の手代、『村は祭りで大騒ぎ』では祭の実行委員役を。
桃太郎 僕も2本とも初めてです。『幸助餅』はいい作品で、本を読んだらすごくまっすぐなお話で、小細工が通用しないなと。この5月は松竹新喜劇の名だたる重鎮たちにも出ていただいて、ほんとに一人一人の芝居の力が出てくる作品だなと思うので、それを感じていただければと思います。僕けっこう今回、しっかりした2枚目の役なんですよ。手代やけど、お店の娘さんと結婚もさせてもらうし。いつもなら3枚目な役が多いのに、その場を任せてもらえるぐらいにしっかりとした人の役で。こうした役をやるという不安と戦って、果たしてちゃんとできるのか、というところが見どころですね。『村は祭りで大騒ぎ』では、三角関係に入れずに噂だけする人。うらやましいなぁと思ってます、三角関係(笑)。
――山川大遥さんは松竹芸能に所属し、幼少期からテレビや舞台で子役として活躍。今回は『幸助餅』で大黒屋の店の者と花魁と共に禿(かむろ)役での出演です。意気込みを。
大遥 入団して初めての舞台で、初めて女方をさせていただきます。子役として初めての舞台が南座で時代劇だったので、これもご縁を感じるなと思っています。
――中学校卒業と共に松竹新喜劇に入団した人は1982年以来です。その思いは?
大遥 3歳の頃に芸能界に入りたいと思いました。「テレビの中の人になりたい」とお母さんにお願いして、そこからずっと役者になるのが夢でした。藤山直美さんの舞台とかで劇団員の方とお仕事をご一緒させていただく中で、松竹新喜劇は人の温かさの中に笑いがあり、感動もあり、その詰め合わせがすごくいいなと思って。入団のお話をいただいて「あぁ、やった!うれしい」って思いました。
――憧れの役者さんは? これから何を大切にしていきたいですか?
大遥 最初の舞台からご一緒させていただいている藤山直美さんです。その演技が作られた演技じゃなく、舞台上で直美さんに役が降りてきて、その中で役が感じたことをセリフや動きで表現されて。心の底から体や口が動いている、そんな演技が大事やなぁと思います。
扇次郎 ものすごくええ話ですよね。
――舞台で楽しいと思うことは?
大遥 舞台ではドカっと笑っていただいた時がすごく楽しかったです。拍手や笑っていただいている時も楽しいですし、役を掘り下げるおもしろさをもっとわかっていきたい。松竹新喜劇のみなさんの中で学ばせていただくのが一番大事やなって思っています。高校生活と両立させて頑張っていきたいです。
――みなさん、いかがですか?
天笑 えらいこっちゃ。これから稽古場、緊張感あるわ。
一蝶 えぇなぁ、うれしい。僕も子役からですけど、松竹新喜劇を好きやなと思いはじめたのは20歳そこそこぐらいですから。すごいなと思いますね。
天笑 彼がいることで上演できる作品の幅が広がりますよね。
一同 劇団員、募集中です(笑)。
――同世代の方たちにも松竹新喜劇を観に来てほしいですね。
大遥 「また舞台出る時に、呼んでや」みたいなことを言われたりもするので、積極的に高校生や若い世代の人たちに自分から言って、松竹新喜劇を有名にしていきたいですし、僕の活躍を観てほしいので、広めていきたいと思います。
一同 よろしくお願いします!
取材・文/高橋晴代
(2024年5月10日更新)
『幸助餅』
相撲好きが高じて老舗の大黒屋をつぶした幸助と、ひいき力士・雷(いかづち)との人情の機微を描く物語。松竹新喜劇を代表するまげもの喜劇。
『村は祭りで大騒ぎ』
娘の結婚をめぐって揺れる母親の心情をユーモラスにつづった作品。松竹新喜劇ファンで出演を熱望していた川中美幸が願いを叶え初出演、劇中歌も披露する。
チケット発売中 Pコード:524-090
▼5月10日(金)~19日(日)11:00/15:30
※休演=5/13(月)・16(木)
大阪松竹座
1等席-11000円 2等席-5000円 3等席-3000円
[出演]藤山扇治郎/渋谷天笑/曽我廼家一蝶/曽我廼家いろは/曽我廼家桃太郎/曽我廼家八十吉/曽我廼家寛太郎/曽我廼家玉太呂/川奈美弥生/渋谷天外/髙田次郎/井上惠美子/江口直彌/他
[ゲスト]川中美幸/曽我廼家文童
※日時・席種により取り扱いのない場合あり。4歳以上はチケットが必要。公演ホームページをご確認の上、ご購入ください。本公演チケットを「チケット不正転売禁止法」の対象となる「特定興行入場券」として販売いたします。興行主の同意のない有償譲渡は禁止いたします。
[問]大阪松竹座■06-6214-2211