ホーム > インタビュー&レポート > DJ樋口大喜の 落語家一日入門 第3回 稽古編
入門して最初に習うネタは旅ネタの『東の旅発端』が多いと米紫。「これは前座の口慣らしみたいなもので、見台を叩きながらセリフを言います。張り扇で見台を叩いて音を出すことによって、張り扇より大きい声を出す練習でもあり、またリズム感なども習得していくことが目的です」。
とはいえ、今回は「樋口らしいネタを」ということで、『子ほめ』に決定。このネタは『東の旅発端』の次に習う噺でもあるという。まずは上下(かみしも)の練習から。上下とは、上手と下手に顔を振ることで、その角度などで人が会話をしている様子を表す手法のひとつ。「日本の演劇は必ず下手側(舞台向かって左)から人が入って来ます。吉本新喜劇も絶対に左から入ってきますよね。落語も同じで、外から入ってくる人は下手からくるので、屋内で待ち受ける人の顔は右に向いていないとだめなんです」とレクチャーした。
続けて「大切なことはイメージすること」と米紫。相手はいなくても、目の前にいると思ってしゃべりかけている様子を頭に思い浮かべることが大事だという米紫の発言を受け、樋口は「難しいですけど、ラジオと一緒です!」と目を輝かせる。
米紫も「いまだに難しいと思う」と明かすのはスイッチの切替。登場人物AとBのキャラクターを際立たせるためのスイッチの切替は、演出次第。実演しながら「設定や物語は決まっているけど、ディティールは自分なりに作っていけるところが落語の面白さ」と米紫。それを受け、「登場人物の違いも声色で分けるんですか?」と尋ねる樋口。「変えているように聞こえるかもしれないけど、実はそんなに変えてないんです」という米紫の答えに、驚きの声を上げた。
いよいよ『子ほめ』の「三べん稽古」を実践。3分程度の長さとはいえ、覚えるセリフは膨大な量になる。大阪弁のイントネーションも完璧にマスターしなければならない。昔と今の言い回しの違いもありと、一度では処理しきれない情報が落語には詰まっている。その難しさにあ然とし、「ほんまにできるんかな...」と不安げな表情を浮かべる樋口だが、勢いに任せて猛然とチャレンジ。正座での稽古に足もしびれてくる。樋口は40分近く正座して稽古に勤しんだ。
初心者が『子ほめ』をマスターするには2ヵ月程度はかかると米紫。「本番の事を考えると今からやらねば...」と頭を抱える樋口だが、10月27日(金)の『ブルックリン寄席 -梅に鶯-』に向けてますます意欲を見せる。さて、本番ではどのネタをかけるのか、ぜひ楽しみにしてほしい。
取材・文/岩本
撮影/福家信哉
(2023年10月12日更新)
【写真右】
樋口大喜(ひぐちだいき)●9月10日生まれ O型。生まれた瞬間から、『大喜び』と名付けられ、生まれ持ってのエンターテイナーという使命を負う。中学生の頃、ラジオ番組の電話リクエストでラジオDJに悩みごとを相談し、今までにない励ましを受けたのをきっかけに、ラジオDJになることを決意。大学ではキャンパスDJや実況、テレビ番組の司会などを経験。同時に、女の子にキャーキャー言われたいためだけにバンド活動を開始。その勢いで就職活動を開始するも惨敗。交通費がかさみ、ヒッチハイクで就職活動を続行している中、とあるバンドワゴンに出会い、音楽の素晴らしさを改めて感じ、再燃。留年を決意し、2度目のチャレンジでFM802DJオーディションに合格。
【写真左】
桂米紫(かつらべいし)●平成6年3月16日、桂都丸(現塩鯛)に入門してとんぼ、平成9年に都んぼに改名、平成22年8月6日に四代目桂米紫を襲名。平成11年NHK新人演芸大賞、平成21年文化庁芸術祭新人賞受賞ほか。主な会は「米紫の会」「ごにんばやしの会」ほか。関西を中心に各地で自らの落語会を数多く開催する傍ら、イベントの司会、近頃はマスコミ方面にもその元気溢れるキャラクターで露出が増えてきた。関西小劇団公演や「新生松竹新喜劇」、藤山直美、川中美幸公演などの商業演劇に出演したり、地元紙でコラムを掲載したりと多分野で活躍。新作から人情噺まで持ちネタも豊富で、おなじみの古典落語にも他の演者とは違う独自の味をにじませる。芸人らしい愛嬌の中に、米朝一門としての芸の確かさと、ざこば一門譲りの情熱とパワーを併せ持つ、若手熱血実力派落語の第一人者である。
チケット発売中 Pコード:521-329
▼10月27日(金)19:00
Brooklyn Parlor OSAKA
自由席-3800円(お弁当付、整理番号付)
[出演]桂米紫/笑福亭笑利/マーキー/樋口大喜
[問]info_kansai@pia.co.jp