ホーム > インタビュー&レポート > 竜星涼×藤井隆が語る 舞台『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか』
――竜星さんが演じる太郎さんは派遣の仕事でピエロをしている役ですが、ピエロという役どころについての印象を教えてください。
竜星涼(以下、竜星) ピエロはまずメイクで作っていくようなキャラクターで、太郎のような他者とのコミュニケーションが苦手な人はそこに憧れるのではないかなと思う部分もありますし、僕らみたいにお芝居をやっている人間は、役を通して普段出せないものを出せる、人に見せられるということが好きでやっていたりもすると思うので、ピエロは変身願望をかなえてくれる憧れの的ではあるのかなと思います。
――役を通して普段の自分ではないものを見せられるというのは、藤井さんにとってもお芝居の醍醐味、魅力の一つですか?
藤井隆(以下、藤井) ドラマとかでは赤ちゃんの役をすることはないじゃないですか。でも、舞台なら赤ちゃんを演じることもできますし、それでも許していただけるところがあって。今回も竜星君と兄弟の役で、でも「兄弟なんです!」ってところから始まるので、そういう舞台ならではの部分がすごく好きです。
――「こういう設定です」と言いきったら、お客さんも素直にそれを受け止めてくれますよね。
藤井 そうなんです。時間も飛んだり、戻ったり、暗転なしでまったく同じ時間を共有していただく、そういう舞台とかあるでしょう。それも楽しいし、ギュンギュン煙に巻いていくのも本当楽しいので、そういう作業はすごく好きです。
――兄弟役ということですが、実際におふたりが兄弟だったら、どんな兄弟になっていたでしょう。
藤井 ひとりっ子でしょ?
竜星 僕、ひとりっ子です。藤井さんは?
藤井 俺は兄がいる。でも7つも離れてるから、ひとりっ子同士って感じですよ。(竜星は)かわいいでしょ、すごく。人柄がチャーミングでしょ。
竜星 僕から見た藤井さんは、一緒にいて困ったら助けてくれる、手を差し伸べてくれるイメージはあります。でも、本当に兄弟になったら、チャーミングだけでは収まりきらない僕の子供心が逆にイラッとさせちゃうんじゃないかなって(笑)。
藤井 そんなことないよ(笑)。
竜星 「もうしつこい!」みたいな、「ちゃんとして!」って怒られるかもしれない。
藤井 言いたいことはすごくわかる。でも見くびらないでください。全然、どうぞって感じです(笑)。
竜星 もっと寛容でしたね(笑)。
藤井 (竜星は)本当にすがすがしいんですよ。さっぱりしてるよね。シニカルなところももちろんあるけど、ネチネチしていない。ケロっとしてるから面白かったんですよね、前も。
竜星 そんなケロっとしてました?
――家族や兄弟でも分かり合えない部分があると思いますが、この作品にはそういうもどかしさも描かれているのでしょうか。
竜星 太郎はお兄ちゃんに対して、何かを求めたりとか、そういうことをしてきた人間だと思います。でも、どこかでそれを否定されていて、そのことを覚えていたり、一方では期待に応えなきゃいけないプレッシャーとか、そういうことがこの家族にはあるんじゃないかなと思います。本当は頼りたいけど、頼ったときに応えてくれなかったらもう頼れないし...とか、心配かけていることがまたひとつのストレスになったりして、すごく複雑だと思います。でも太郎は、どこかでお兄ちゃんに見捨てないでほしいし、どこかで助けてほしいと思ってるんですよね。
藤井 太郎のお兄さんには奥さんがいて、奥さんにはすごく言うんですよ。奥さんにも言われるし。太郎と一緒にいた時間と奥さんと一緒にいる時間が同じ長さになってきているのか、はっきりとした年数はわからないですけど、奥さんには気を遣わずに何でも言うから、もどかしいという感情だけで言うと、実は血がつながっている方に遠慮があるのかなと思うようなセリフもありますね。
竜星 藤井さんは、実際はどうだったんですか? お兄さんに対して。
藤井 あんまりお兄ちゃんと思ったことはなかったかも。僕自身は兄に遠慮はなかった。でも兄はあったと思う。「お兄ちゃんでしょ」って言われたりしていて。「お兄ちゃんでしょ」とか、「お姉ちゃんでしょ」っていう言葉って、幼少期にすごい影響を与えているんだろうなって思います。「弟でしょ」って言われたこともないから...。ちなみに、見た目では僕たちは何歳離れているように見えてますか? 見え方によっちゃガッツリ、メイクも変えないとね?
竜星 見た目のバランスでいったらそこまで離れているようにあんまり思わない。今、51歳ですよね。全然、40代に見えます。
藤井 10歳も? 本当?
竜星 じゃあ、だいぶ年の離れた兄弟にしましょう(笑)。
――おふたりは2020年の舞台『大地』で初共演されていますが、その時はコロナ対策の制限でコミュニケーションが取りづらいということもあったのでしょうか。
藤井 当時は仲良くなっちゃいけなかったから。
竜星 そんなことはないですよ(笑)。
藤井 でも、そういう気持ちだったんです。たとえばコロナ前は稽古が終わって「飲みに行く?」とか、「ご飯に行く?」というやり取りがあって、そこでちょっと仲良くなって、次の日に喧嘩のシーンもセリフが言いやすくなったりとか、ちょっとずつ稽古以外の時間に関係性を埋められていた気がしていたんですよ。でも、そういうことができなくなったから、前回は竜星くんと仲良くなったら楽しいだろうな~って思って見てました。でもまあ、最近はすっかり、(稽古終わりに)ご飯に行かんでも良くなってきてない?
竜星 そうですね。
藤井 打ち上げも別にないし。それに慣れたかも。よう飲みに行ってたな~と思って。
竜星 そうすることで逆に追い込む時もありますからね(笑)。
藤井 そうそうそう(笑)。こういうこと、普通、言わないじゃないですか。素直でしょ。
――今回はすっかり環境も変わって。
藤井 そうですね。みんな優しい方、穏やかな方ばっかりで。
竜星 はい。でも、わかんないですよ。ここから殺伐としていくかもしれない(笑)。
藤井 ほらね、言わんでええこと言うでしょ? 「いや、わかんない」とか言うでしょ。だから面白いことを言う人だなって。でも、そうですよね。どうなるかわかんないですよ、こればっかりは。
――なんか無邪気ですね(笑)。
竜星 そうなんですよ(笑)。時々、悪いポジティブが出ちゃってるんですよね。
藤井 ワクワクするんでしょ? 「ちょっと、どうなんの?」みたいな。
竜星 そうですね(笑)。なんか人の毒の部分が大好きなんですよ。藤井さんも、すっごい優しいんだけど、ちょっと毒みたいなものが見えた瞬間に、「見えちゃった~!」って(笑)。
藤井 僕はすぐイライラー!ってして、すぐ顔に出るから。『大地』のときもそれを鏡越しに見られたんだといます(笑)。
――ノゾエさんは「藤井さんは何を起こすかわからない爆発力がある」というふうにおっしゃっていましたが、竜星さんは藤井さんのそういう力を何か感じることはありますか?
竜星 藤井さんは天然物といいますか...。
藤井 記念物ではない? 天然記念物だと「そうなの?」って感じがしたけど。あと、「古いよな、ん?」って気がしたけど、ただの「天然物」!?
竜星 天然...なんか新鮮なんですよ。何が出てくるんだろう?みたいな。ワードチョイスもそうですけれど、その発想力が...。それはみんなそうなんですけど、きっと。
藤井 そうそう。
竜星 他人だから何が出てくるかわからない。しかも「その答えは知らなかった」と思うことが僕からするとすごく多くて。だからこそ、みんな託したくなる。託される方も大変だと思いますけど、一生懸命、応えていらして。そうやって藤井さんから出たものが、僕からすると突拍子もないもので、ちょっと意味がわからなかったりして。だからこそ面白かったり。なんか「面白い」の表現もすごく深いなって思いながら、見させてもらっています。
取材・文/岩本
(2023年9月29日更新)
当日引換券発売中 Pコード:522-405
▼9月30日(土)13:00/18:00
▼10月1日(日)13:00
京都劇場
全席指定-11000円
[作・演出]ノゾエ征爾
[出演]竜星涼/藤井隆/青柳翔/瀬戸さおり/芋生悠/駒木根隆介/山本圭祐/山口航太/中井千聖/ノゾエ征爾/家納ジュンコ/山田真歩/菅原永二/高橋惠子
※未就学児童は入場不可。出演者変更に伴う払戻し不可。車いす席をご利用のお客様はチケットをご購入の上、事前にお問い合わせ先にご連絡ください。2枚以上でご購入されたお客様は、状況によっては連席でご案内できない場合がございます。予めご了承ください。公演中止の場合を除き、チケットの払い戻しはいたしません。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888
▼10月11日(水)18:30
▼10月12日(木)13:00
岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場