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東京ホテイソンがツッコミのあり方を自問自答
「『いーや』に落とし込もうとしすぎていた」

『M-1グランプリ 2020』ファイナリストの東京ホテイソンが4月26日より、第2回単独公演『孔雀緑』を全国8都市で開催する。オール新ネタで挑む同公演は、「新しいスタイル」にも挑戦する意欲的な内容となっているほか、コンビの代名詞であるツッコミ「いーや」のあり方にもあらためて向き合ったものになるという。「いまはいろんなことにトライする期間」と語る東京ホテイソンの、たける、ショーゴに話を訊いた。

――別のインタビュー記事で読んだのですが、東京ホテイソンの特徴でもあった、たけるさんの「いーや」というツッコミに数年前から迷いがあったそうですね。以降は、違ったスタイルにもチャレンジしていらっしゃいます。今回の『孔雀緑』でもいろんな方法論をおりまぜていくそうですね。

ショーゴ:そもそもネタのパターンが出なくなってきたんです。一個の型を持っちゃうコンビって、いつかパターンが尽きちゃうもの。なんとか飽きられないように少しずつ変えていくんですけど、いつの間にか変えすぎちゃっていて、マニアックなネタが出来てしまう。初見の人が「おもしろい」と思えないようなネタ作りに陥るようになって、「どうしようかな」と悩んでいたんです。そこで「難しいことはせずに『いーや』じゃないネタもやってみて、その上で『いーや』に帰ってきたらどうなるかな」って。ちょうどいまは試行錯誤している時期です」

――パターンという部分では『回文』など言葉の組み合わせのネタも代名詞的ですね。あれを作るのはかなり大変だろうなって。

ショーゴ:そうなんです。「もう、この先へいくのは無理かな」となりました。

たける:ゲーム性が強くなりすぎていて、シンプルに「これはもう漫才じゃない」という話になったんです。もっとふたりの掛け合いを重視して、漫才的なことをやるべきじゃないかって。それを突き詰めるとつまりは人間性ということになるんですけど。

――『M-1』など賞レースではパターン系の漫才が強い傾向がありますよね。ウエストランドの「あるなしクイズ」、ミルクボーイの「オカンが忘れたもの」とか。

ショーゴ:僕らの場合はパターンを大ぶりでやっちゃっているというか、パターンが濃すぎるんです。だから「いーや」を言わなかったら、お客さんが『あれ? 『いーや』を言わないんだ』という状態になってしまった。そうなると今後、漫才を進化させるのはなかなか難しい。

たける:ウエストランドさんやモグライダーさんと僕らって、「パターン」で括れば一緒だけど、でも中身は全然違うものですよね。どちらかと言うとトム・ブラウンさんの「ダメー」に近いかもしれませんね。

――たけるさんは「いーや」の今後の使い方についてどうお考えですか。

たける:僕も「変えていった方が良い」と思っています。それこそこの前、久しぶりに『M-1』の自分らのネタを見たんです。なんだか「日本語で遊ぼう」みたいだなって。漫才も下手だし、なにより漫才の会話を成していない。ロボットみたいで、「俺が喋ったら、次はショーゴが喋ってくれ。その次、また俺が喋るから」って感じで、リアルさがありませんでした。「いーや」云々より、まずそこの部分をもっと強化したい。これまでは「いーや」を言わなきゃいけなかったけど、それをなくすことで出来る物事も増えるはず」

ショーゴ:たけるに「いーや」を言わせなきゃいけない、ということが頭にありすぎました。それを言わせるためにおもしろいフレーズを考えていたんです。だけど極端な話「いーや」を僕が言っても良いかなって。

たける:僕の「いーや」に落とし込もうとしすぎて、ネタのおもしろさが半減しちゃうこともありましたし。お客さんの「いーや待ち」に応えようとすると、大変なことになっていくと気づきました。

ショーゴ:たけるのツッコミばかりフィーチャーされるとコンビとして勿体ない、たけるにはたけるで、おかしなところはもっとある。だから、ツッコミ以外の部分にも焦点が当たると嬉しいですよね。テレビに出る回数が増えたことで、そういうところを少しずつ見てもらえるようになった気がします。一方で人間性だけのネタはおもしろくない。ネタがあっての人間性ですから。そこをちゃんと混じり合わせていきたいんです。たとえば僕も、変なことを思いついたらすぐに言っちゃう癖があるんですけど、そういう部分も漫才に取り入れてみようかなって。

――『東京ホテイソンのラジオ瓦版』(ラジオ関西)の2022年11月25日放送回で、オズワルドの伊藤さんから「喋り漫才は舞台によって出来に差異が出るけど、東京ホテイソンの漫才にはそれが少ない」と言われたとおっしゃっていましたね。これまでは「いーや」があったことで差異が小さく収まっていたのかなって。

ショーゴ:たしかにうちらって、出来、不出来の差はかなり少ないです。差が出たとしても1が2になるくらい。やっぱりセリフが決まっていたんで。

たける:伊藤さんは「差が少なくて良いな」と言っていたけど、僕らからしたら「差がある方が漫才師らしいですよね」って。だってその日の体調も喋りにあらわれたりして、出来、不出来につながっていく。コンディションが良くない状態で舞台に出ることでスベりたくはないけど、でもそういう差が出る方が「漫才をやっている」と思えるし、そんな風な漫才師になりたいんです。

ショーゴ:でも結局、ベースとしてネタがウケないといけない。そのあたりの塩梅が、今回の『孔雀緑』用のネタを作っていて想像以上に難しく感じています。これまでと違うことを取り入れるけど、その比率とか。とりあえず、なんでもやってみるつもりです。スベりたくないけど、スベらないと分からないこともある。いろいろ挑戦して、そこで得たものを1年かけて伸ばして形にしていきます。あと『孔雀緑』では漫才だけじゃなく自分たちらしいコントもやるんですけど、そのうちの1本がゾフィーの上田さんがネタも書いてくれて。今回はコントの数は少ないですけど、来年からはもっと本数を増やすべきだなって。

たける:そもそも僕らは演技ができないけど、それでも「こんなに出来なかったんだ」と痛感しています。それに気づけただけでも『孔雀緑』をやる意味は大きいです。

ショーゴ:テレビはコントが求められる機会が多い。「東京ホテイソンはコントもできるんだ」ということも分かってもらえるように、いろいろトライしたいです。

取材・文:田辺ユウキ




(2023年4月27日更新)


Check

東京ホテイソン 第2回単独公演
「孔雀緑」

【東京公演】
▼4月26日(水)
渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール

【愛知公演】
▼5月3日(水・祝) 今池ガスホール

【宮城公演】
▼5月13日(土)
仙台市シルバーセンター 交流ホール

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:516-687
▼5月21日(日) 13:30/17:00
ドーンセンターホール
全席指定-3800円
[出演]東京ホテイソン
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■06-6357-4400

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▼6月3日(土) cube garden

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