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『キングオブコント』決勝へ2度進出、ゾフィーが考えるおもしろいコントの作り方「嫌いなコンビにやらせても笑えるネタを」

2017年、2019年の『キングオブコント』で決勝に進出するなど、実力派のコント師として知られるゾフィー。さまざまなメディアでコントについて鋭い意見を口にしている上田航平、「チェだぜ」の持ちギャグとガチのクズさで知られるサイトウナオキによる同コンビが2023年1月に東京、大阪、2月に宮城、愛知で単独ツアー『ゾフィー傑作選ライブ「ZOBEST」』を開催する。間もなく結成9年目を迎えるゾフィーは、なぜこのタイミングで「傑作選」という集大成のツアーをおこなうのか。そして今後『キングオブコント』とはどのように向き合っていくのか。上田、サイトウに話を訊いた。

――今回のツアーは「傑作選」と銘打たれていますが、そういう集大成的なタイトルって10周年など区切りの良いタイミングで名付けることが多いですよね。ゾフィーは2023年で結成9周年ですが......。

上田「単独公演としては今回が10回目なのでひとつの区切りを迎えるのと、あとネタとその合間に映像を流すといった従来の単独ライブのから脱却したいという意味合いも込めているのですが、一番の理由はコンプラ(コンプライアンス)ですね」

――上田さんは近年、メディアで常にお笑いとコンプラの関係性について頻繁に言及されていますね。

上田「そう、気づいたらいつも言っています(笑)。表現できる範囲がギュッと狭くなったりして、突然『これもダメなんですか』ということが増えましたから。たとえばオチとして登場人物が死んでしまった方がおもしろくても、『死んだ人で笑わせるんですか』と言われる。だからお葬式のネタもやりづらくなった。だけど死を一切、笑えないものにするのってめちゃくちゃ怖いというか、風潮的に危険な気がするんです。『死ってそれだけものなの?』と思うので。ただ、そういうネタをやるとめっちゃ怒られるんですよね。僕らは決して死をバカにしていないし、誰かを差別したりしているわけでもない。今回のツアーでは、そういう本当に自分たちがおもしろいと感じているものを並べてやっていくつもりです」

サイトウ「そもそも『お笑いだから』という前提でやっているのにね。僕自身、ゾフィー結成当初やその前のコンビのときはコンプラを気にするタイプだったんです。でも上田と組んでから、『根本がおもしろければ良いんじゃないか』と考えるようになりました。それに、誰かを傷つけるとまではいっていないから。だったらフィクションとして楽しんでもらいないなって。結成当初は上田が作るネタを見て『エグるなあ』と思っていました。でも今はそういう感覚はないですね。あと『キングオブコント2022』の準決勝でコンプラに合わせにいったネタをやった結果、違和感や悔いがのこったんです」

――『キングオブコント2022』準決勝では、これまでとは方向性を変えたネタをやった結果、落選してしまったんですよね。

サイトウ「それで吹っ切れたんです。『コンプラに寄せにいったのに、ウケねえじゃねえかよ』って(苦笑)。事前に上田から『今回は方向性を変えてみる』と聞いていたんですけど、あきらかに台本上からいつものようなメッセージ性が失われていた気がしていました。以前まではそれが強かったからスベっていてもおもしろかったんです。僕が好きなネタって『たしかに間違っているかもしれないけど、一理ある」というものなので。コント中、僕は上田に言いくるめられるけど、でも『上田の言うことはおかしい。だけど納得できる」って。『腹話術師の不倫謝罪会見』のネタなんて、まさにそうですよね。上田の性格の悪さが出ているけど、一理あるんです』

上田「不倫謝罪会見って、誰に、何のために謝っているか分からないですもんね。だって本人が悪いんだし。たしかに出演番組の関係者やスポンサーに迷惑はかけているけど、だったらそこに直接謝れば良いのに。ただ、そういうネタをやると『ゾフィーのコントは不倫をバカにしている』と怒られるんですよ」

――『キングオブコント2017』決勝で披露した「母親のことを飯と呼ぶ息子」のネタもボヤ騒ぎになりましたよね。

上田「ライブ界隈では、誰も、なにも言わなかったんですけどね。むしろアットホームな迎えられ方をしていたネタなんです。だけど決勝のあと、めちゃくちゃ怒られました。出番が終わって楽屋でTwitterを見たらDMが300件くらいきていて。『バカ』『母親をメシ扱いするな』とか、あと『だったら自炊しろ!』って。お笑いをノンフィクションとして見る傾向が強まっている気がします。だから今は、友情、恋愛とかハートフルでいわゆるエモいネタが増えているように思います。本来、そういうエモさってオチに向けてのフリであって、最後は人が爆発して終わったりしていたけど、今はエモいままでネタが終わっちゃう」

サイトウ「それってお笑いとしてはなんか期待外れですよね。もっとこう、ぶっ壊して欲しいというか」

――たとえば2021年11月、ライブイベント『ドリフ&ももクロ ライブフェス~コントもあるョ!全員集合~produce by もリフのじかん』で上田さんがコントの脚本を書き下ろしたり、あと他の芸人とコラボをしたり、そういうときはどういう方向性でネタを書くんですか。

上田「まず、ゾフィーとして成立しないものはやらないようにしています。ただ、これは自分たちがやるネタの話になるんですけど、僕らじゃなくてもおもしろくなる状態が一番だと考えています。頭のなかに嫌いなコンビを思い浮かべてその台本をやらせてみるんです。それでもおもしろかったら、絶対におもしろいネタなんです」

サイトウ「こういうところなんです、上田の性格の悪さって」

――ちなみに上田さんは現在、『キングオブコント』などいろんなコントの批評やコメントをメディアで語ったりしていますよね。『しくじり先生 俺みたいになるな!!』のYouTubeチャンネルでも熱弁していらっしゃいましたが。

サイトウ「僕もそういうときってたまに横にいますけど、めっちゃ恥ずかしいんですよ。だって僕らは『キングオブコント』で優勝していないから。それなのに上田は、1回獲ったからもう出ない人みたいな立ち位置で喋っている。番組とかでは『やめてくれよ』と言っていますが、でも本音は『おもしろいから、この状態で良いかな』って。コンビとしてはハードルが上がるけど、でも上田が喋れば喋るほどバカみたいじゃないですか。『獲っていないのに何を偉そうに言ってんだよ』と」

上田「っていうか、観たものについて何を言っても別に良いと思うけど、戦ってもいないのに批評しているやつらの方がおかしいんですよ。だってさ、実際にこうやって喋っている俺が一番傷ついているんだよ。負けたのに批評しているんだから。でも勝とうが負けようが、まずそこに出ないと言えないんですよ。あと、たとえば『男性ブランコのこのネタって、最初のツカミはもともとあったものだけど、後半はライブを重ねてブラッシュアップされていったんだよ』とか裏話を聞くと、お笑いファンとして『そうだったんだ』と興味が湧くじゃないですか。そういうエピソードをいろんな人に知ってもらって、コントをもっと好きになってもらいたいんですよね」

――『キングオブコント2022』では、審査委員長の松本人志さんが「演技力がないとこれからは上がっていけない」と総評されていましたね。ゾフィーは以前から「演技派コント師」と紹介されていましたから、そういう風潮は追い風になるんじゃないですか。

上田「でも、決勝に出ている人たちってみんな昔から演技が上手いんですよ。あと、コントの演技のうまさって2パターンあると思うんです。ひとつは迫真のもの。劇団ひとりさんのように熱量を吐き出す演技って、良く見えますよね。あともうひとつは、かが屋が代表的ですけどすごくナチュラルに進行していくもの。『ゴッドタン』(テレビ東京系)で喋ったことなんですけど、そういうナチュラル系な演技のトップが、おぎやはぎの矢作さんなんです。どんなことでも自分に引き寄せながら自然に喋れる。だけど『矢作さんは演技がうまい』という意見はあまり聞こえてこない。矢作さんの演技力ってもっと評価されるべきじゃないかなって」

サイトウ「コントっていろんなパターンがありますし。たとえば、どぶろっくさん、ニャンコスターは『演技力』というくくりじゃない。たしかに演技力がより重要な時代になってきたのかもしれないけど、それを意識しすぎたりとらわれすぎたりしたら、良くない気がします」

――上田さんは劇団もやっていらっしゃったこともあり、演技はお上手ですよね。でもサイトウさんもすごく良い演技をされています。

上田「サイトウはもともと、とんでもなくヘタだったんです。どこで覚えたのか分からないけど、演技の途中で客席に向かって台詞を喋りだしたりしていたんです」

サイトウ「あれは、僕が5GAPさんを見て育ったからなんです。説明台詞で、お客さんの方を向かれるじゃないですか。演技ってそういうものだと思っていて。つまり、コントの世界から出ちゃっていたんですよね。その点を上田によく指摘されていました」

上田「すぐにお客さんの方を向こうとするから、練習のときはずっと手を引っ張って『こっちが喋っているのに、なんであっちを向くんだ』と注意して。で、『この台詞はどんな気持ちで言っている?』『こういうことを言うときって普通、そんな顔する?』とか一つひとつ、台本を潰していったりしていました。そうしたら9年の活動のなかでかなり上手くなってきた。2020年にコント番組『東京BABY BOYS 9』(テレビ朝日系)に出たとき、共演した芸人たちが『サイトウさんってこんなに演技がうまかったっけ』とびっくりしていましたから」

――『しくじり先生』のYouTube番組で、上田さんがアルコ&ピースに『また『キングオブコント』に出ないんですか』と質問されていらっしゃいましたが、逆にゾフィーさんはいつまで『キングオブコント』に出られますか。

上田「僕らは優勝したらもう出ないつもりです。正直なところ、戦いってあまり好きじゃないんです。もちろんそこに参加して勝負に一喜一憂するのはヒリヒリする。だけど個人的には、決勝の10組が決まったらそれで良いじゃんって。順位を決めると、その順位に見合った扱いになってしまう。『キングオブコント』はファイナリストであっても、お笑いだけで食べていけていない芸人が少なくないのが現状。それはもしかすると、順位で印象が決められてしまう影響があるのかもしれない。だったら自分たちが優勝して、そこで獲った賞金1千万円でもうひとつのお笑いの大会を作ろうかなって」

サイトウ「あ、賞金は折半じゃないんだ(苦笑)。僕も優勝したらもう終わりたいですね。ただ、『キングオブコント』って挑戦しているときが一番おもしろい。負けたら悔しいけど、それも含めて気持ちがヒリヒリする。ゾフィーって『優勝しても出場し続けますよ』というタイプに思われるけど、やっぱりキリがないですし。ただ、『しくじり先生』でアルピーさんが『ネタを作って、良いものができたらまた出たい』とおっしゃっていたけど、それは正論なんです。おもしろいネタができたら、芸人としていろんな人に観てもらいたい。『これは負けるかも』みたいな状態ではやりたくないですよね」

――1月、2月のツアーを経て、ゾフィーがどんなネタで2023年の『キングオブコント』などに挑戦するのかとても楽しみです。

上田「時代の流れに合わせていろいろ直したり、削ぎ落としたり、尺を調整したネタがたくさんあります。『傑作選』ではそれを全部復活させるつもりです。『これは時代に合わない』とリストから外していたネタも並べ直します。そして、『傑作選』をきっかけにそのネタを続けるかどうかを考えたいですね。」

サイトウ「僕は、なんだろう。こうやって取材を受けるとき、よく『ゾフィーのコントはどういう人に届けたいですか』と質問されるので、いつも格好をつけて『僕らのことを知っている方も、知らない方も、老若男女に観て欲しい』と言うんです。でも、違うんです。本当はギャルのみなさんに観て欲しいんです。だから、えっと...。(上田が耳打ちしながら)ギャル...の...ファンが...、増えたらすごく...嬉しいので...、ギャルのみなさんに笑ってもらえるよう...ボク、頑張ります!」

Text by 田辺ユウキ




(2022年11月18日更新)


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Movie

Profile

上田航平、サイトウナオキから成るグレープカンパニーに所属するお笑いコンビ。2014年4月結成。『キングオブコント 2019』ファイナリスト。

オフィシャルサイト
https://grapecom.jp/talent_writer/zoffy/


ゾフィー傑作選ライブ「ZOBEST」

【東京公演】
▼2023年1月20日(金)・21日(土)
シアターサンモール

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:514-848
▼2023年1月28日(土) 17:00
ABCホール
全席指定-4500円
※未就学児童は入場不可。
※本公演は政府ならびに関係諸機関により策定された新型コロナウイルス感染症対策ガイドラインに基づき、感染拡大防止対策を講じて開催致します。
※グレープカンパニーHPにて【感染予防対策に関するお願い】を必ずご確認のうえ、ご購入・ご来場下さい。
※購入時に登録の氏名・緊急連絡先は、万が一来場者から感染者が発生した場合等、必要に応じて保健所等の公的機関へ提供させて頂く場合がございます。
※新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)を事前にインストールし、公演前後でアプリを稼働することをお願い致します。
※新型コロナウイルス感染拡大に伴い、政府・自治体等による指示や要請により、やむを得ず公演中止になる場合があります。
※販売期間中は1人4枚まで。インターネットオークション等無断有償譲渡禁止。転売チケットでの入場不可。お持ちのチケットが転売チケットであることが発見された場合は、入場をお断りいたします。
[問]サウンドクリエーター
■06-6357-4400

【宮城公演】
▼2023年2月4日(土)
仙台市シルバーセンター 交流ホール

【愛知公演】
▼2023年2月18日(土)
今池ガスホール

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