ホーム > インタビュー&レポート > 中山優馬×池田純矢が『砂の城』で瞬間瞬間を生きる!
――まず、『砂の城』を作った経緯から教えてください。
池田 今までの自分の恥ずかしかったり、汚かったり、醜かったりする部分も含めて作品にして昇華できないかと。それをしないことには前に進めないので、やるしかないと思ったんです。これまで笑って楽しめるハッピーエンドのエンタテインメントを作ってきたんですけど、今回はあえて芸術と呼んでいます。そこで勝負したいですね。
中山 台本を読んで、人間の本質的な部分やセクシャルな部分がかなりセンシティブに描かれていて、今までの池田作品とは違う印象でした。
池田 2年半ぐらい前に、優馬とふたりでご飯を食べて、作品を作りたいねと話をしていたんです。僕らの共通点として、プロとして常に80点以上は出せる。その中で、120点も出せば、0点も出せる俳優はうらやましいなと思っていたんです。僕らが120点を出すにはどうすればいいかと考えた時に、即興だと。今、心に生まれたものを舞台上に出す。すごく難しくて恥ずかしいけど、僕らだからハイクオリティでできるだろうというところから始まりました。優馬はどんなに突飛で奇妙なことを言っても、「はい、やります」と言ってくれるし、とてもセンスがある。こんなにいい俳優はなかなかいないと思いますし、間違いなく今後の演劇業界を背負っていく俳優になるだろうなと。僕ももちろん、今後の演劇業界を背負っていきたいと思っています。
中山 純矢君は演出家として辛抱強く、時にはヒントを与えて、役者から出るもの、生まれるものを待っていてくれる。作家脳と演出家脳と俳優脳で全然違うアプローチをするので、すごいなぁと。ただ、純矢君も自分の役に入った時は誰よりも悩んでいるなと。
池田 ハハハハッ。
中山 そこは誰も演出できないので、一人で悩んでください(笑)。
池田 難しいんですよ。でも俳優の心が一番動く瞬間を見ていて、そこを敏感に拾えるのは自分の演出家としての強みかなと思います。
――池田さんが、自分の汚いところを表現しないと次に進めないと思うに至ったきっかけは?
池田 2年半前ぐらいに、いろいろとあり、今まで自分がやったことは何だったんだろうという時期があって、うつ病になったんです。栗山民也さんやG2さん、小川絵梨子さんなど、憧れの演出家はたくさんいますけど、先輩方に並びたいとかではなく、超えたい。でも、世界一を認識していない人間が上にいけるわけはない。ブロードウェイとかトップって何だろうと考えた時、自分が世界一になれるのは、自分の感情で正直にやるしかないなと。うつ病を含めいろんなことがあり、ここで今、自分のことをオブラートで包んだり、きれいな言葉に変換したりするのではなく、ありのままで、自分の苦しみや喜びを本当の感情で描きたいと思ったんです。今、この作品を上演するのは、前へ進むことでもありますし、過去の自分への決別や許し、第一歩でもあるんです。
――今のところ、即興のシーンでどのような手ごたえをつかんでいますか。
池田 例えばミュージカルで歌う場合、作詞家や作曲家の感情に自分が気持ちを寄せていたんですが、今回は俳優の自由なので、極論でいえば、自分が一番気持ちいいところで歌える。それが役の感情にもなりうる。従来のミュージカルや音楽劇よりも、よりシームレスに、セリフや感情の乗せ方がしっかりとできるものになっているのではと思います。今回は、即興で歌やダンスが繰り広げられ、その動きは毎回違う。舞台の儚さや切なさの粋を極める作品になればいいなと思っています。昼と夜の公演でガラッと180度作品性が変わるようなものにしたいですね。
中山 今までは音楽があると、その音をどれだけ正確にとって、どこで感情やニュアンスを入れていくかという、そこに時間を費やしていました。今回は、自分の中から生まれるものなので、ニュアンスはすでに入っている。自分の感情が一番乗っている上で音楽が成立する状態です。
――中山さんが主演された舞台『ダディ』を拝見しましたが、表現力や演技力がパワーアップし、すごく成長されたと思いました。
中山 ありがとうございます。『ダディ』も含め、いろんな経験を積んでいるおかげだと思います。今回演じるテオは本当に不思議なキャラクターで、稽古場に入って、なるほどこっちかと思うことがたくさんあって、すごく難しいというか、不思議な人物ですね。
池田 真っすぐ演じてしまうと、おそらく曲解されてしまうし、本質の部分が伝わらないようなセリフしか残してない。セリフ以外のところで頑張ってねという感じですね。
――池田さんは同じ俳優として中山さんの成長ぶりはどう感じましたか?
池田 すごいです。僕も『ダディ』は感動しましたし、芝居のアプローチが変わったねと彼に言いました。いい意味で、危うい芝居に変わりましたね。今までは、80点以上出してくれるという安心感がありました。でも、『ダディ』で瞬間瞬間を生きる大きな武器を手に入れた。その武器を今回で存分に使ってもらいたいです。
取材・文/米満ゆう子
(2022年11月 1日更新)
チケット発売中 Pコード:514-516
【大阪公演】
▼11月3日(木・祝)~13日(日)
(火)(水)13:00 (木)(金)18:00 (土)(日)12:00/16:00
※11/10(木)13:00。11/13(日)12:00。
ABCホール
全席指定-8800円
[作・演出]池田純矢
[出演]中山優馬/岐洲匠/夏川アサ/野島健児/池田純矢/鈴木勝吾/升毅/他
[ピアノ]ハラヨシヒロ
※出演者変更に伴う払戻し不可。車いす席をご利用の方はチケットを購入の上、事前にお問合せ先にご連絡ください。来場者から新型コロナウイルス感染者が発生した場合などにおける濃厚接触者の特定等の目的で、必要に応じて保健所等の公的機関へ来場者の氏名及び緊急連絡先が提供され得る場合がございます。2枚以上でご購入されたお客様は、状況によっては連席でご案内できない場合がございます。公演中止の場合を除きチケットの払い戻しはいたしません。ご来場時にはマスクの着用を必須とさせていただく場合がございます。会場での感染予防対策の詳細は、随時公演公式サイトにてご案内致しますので、ご確認ください。
※販売期間中は専用URL(https://w.pia.jp/t/sunanoshiro/)にて販売。店頭での直接販売はなし。1人1公演4枚まで。
[問]公演事務局■0570-200-114