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トラックを使った野外劇『muro式.がくげいかい』
1年越しの大阪公演がいよいよ開幕!

俳優・ムロツヨシのライフワークともいえる舞台『muro式』。2018年の『muro式.10』をもって一旦は幕を閉じたが、2021年に野外でトラックを使用した舞台『muro式.がくげいかい』として再開。注目を集めつつもコロナ禍のため開催が見送られた大阪公演が、5月3日(火・祝)より花博記念公園鶴見緑地でついに実現する。待望の大阪公演に向けて、ムロが来阪、1年越しの上演に向けて意気込みを語ってくれた。

カッコつけた言い方をすると“前例を作りたい”

 
『muro式』は、ムロが「やりたい役者、脚本家とやりたいことをやる」というコンセプトで2008年から10年間ほぼ毎年開催してきた舞台。30代前半の頃、多くの人に自身を認知してもらうべく「公開オーディションの場所」としてスタートした。そこからじわじわと人気を広げたムロ。「少しずつ自分の舞台ができるようになり、お客さんにも認知していただいたところで、公開オーディションというよりも、作品を発表できるプロの集団として何かしら特徴のある舞台を心がけて作ってきました」。そして、2018年に一旦区切りをつけ、「新しい舞台を作っていこう」と思った矢先、新型コロナウイルスにより演劇界も大きな影響を受けた。「強い敵を相手に、舞台をあきらめるのではなく、ここで何かできることはないかと。当時、まだ劇場の感染対策などルールがはっきりしない状況でしたので、カッコつけた言い方をしますと、前例を作りたいなと思い、トラックを使って野外劇をやろうということになりました。少し背伸びをしてでも何かしら形にしたいなと思ったのが、『muro式.がくげいかい』のスタートです」。
 
今作では、「子どもたちに笑いを作れる男になりたい」という思いから、桃太郎をモチーフにした喜劇を上演。昼公演は“ショート・キッズバージョン”として、未就学児を含む子どもも一緒に楽しめる演出でお届けする。「今回が一番わかりやすくて、何も残らない舞台をやろうと。多くのお客さんが“悔しいけど笑っちゃった”となってもらえるように、バカバカしいものを作りました。ショートバージョンは、上演中にお子さんが泣き叫んでもいい。それに対して役者はどう動くかというところも楽しんでもらえれば。僕たちが子どもの頃に見ていたドリフターズのような形を作りたいと思って、昼公演であれば、子どもたちの安全面も守りやすいなと設定させていただきました」。
 
本作にはムロの他、約400人のオーディションから選ばれた西野凪沙、ヨーロッパ企画の本多力、永野宗典が出演する。「ヨーロッパ企画さんは群像劇を特徴としてやられていますが、僕は個のプレイヤーとして永野宗典、本多力が好きで、そして嫉妬しています。僕のできないことをやれる人。そして、三角形が作れる3人なんですね。全員特徴が違っていて、それぞれが補い合える。誰もが三角形の頂点になれるし、底辺にもなれる。本多さんは不器用そうに見えてじつはどの役にも適応する力がある人。永野さんはひとつの役に対しての説得力に深さがある人。個性の強い解釈をするところが魅力だなと思います。あと、ふたりは受け皿になれるのがすごいところだと思います。相手との絶妙な距離感、そして、相手のセリフが変わったら、それを拾ってあえて笑いに変えたり、面白い方向に持っていける力がある。また西野さんは、とても野心がある。その野心の強さは、昔の僕にも似ているなと。前回から1年経って、舞台度胸が強くなっているなと思います。今回は、この3人のオジサンたちに引っ張られるだけではダメで、より同じ場所に立とうとしている気持ちを持つことだったり、より引っ張っていってほしいと思っていて、いろんなシーンで立ち位置を一歩前にしました。この1年、うれしいことだけじゃなくて、悔しいこともあったみたいなので、その鬱憤やよかったことの成功体験を舞台に活かしてほしいなと思います」。

 
ここで楽しまなきゃもったいないと思ってもらえたら

 
2021年の東京公演から1年、セリフや演出を再確認しながら再び作り上げた。「まず役者たちが楽しむことが絶対最低条件としてあって。前回ゼロから作り上げたものを再確認しました。僕たちが飽きているようであれば変えないといけないですし、セリフひとつ、演出ひとつ変えたりもしています。1幕の話の出だしも、エンディングも変わっていますし、よりここを見てほしいというところを長くしたり、より分かりやすく、より笑えて見やすいものを作っています。“何だこりゃ?”っていう時間も増やしました(笑)。演出面でもかなりパワーアップしています」。
 
天候や生活音も味方につけ、楽しめるのは野外の舞台ならではの見どころだ。会場の広さに合わせて、プラスアルファの演出も考えるという。「天候に左右されることをプラスにしたいというのはあって。前回の東京公演のときは少し寒かったんです。寒いけどどうやってみんなに集中してもらおうかとかも考えましたし、ヘリコプターが近づいたらヘリコプターを見ちゃうから、それをお芝居に活かしたりとか。生活の音だったり、風の音だったり、劇場とは違って、野外はちょっとした不安やアクシデントが多めなので、それにどう対応して面白く見てもらうか。お客さんもここで楽しまなきゃもったいないって思ってもらえたらいいなと。大阪は一番広い会場になるので、トラックの登場の仕方、お客さんとの距離感など、その広さをどう使おうかなというのも楽しみです。広いところを走るオジサンを見るだけで笑えてくることもあるので、そんなシーンを永野君か本多君に作りたいと思います(笑)」。
 
テーマ曲を手掛けたのは東京スカパラダイスオーケストラ。昨年の東京公演の際は歌詞がない状態だったが、本番中に歌詞を作り『めでたしソングfeat.ムロツヨシ』というタイトルでリリースもされた。「ストーリーがあるような劇曲になっていますし、手拍子ができるような曲を作っていただきましたので、皆さんにも手拍子をして参加していただこうと思っています。去年の公演中は歌詞が存在しなかったんですけど、劇中のどこかで歌う場面も作っていますので、そちらも楽しみにしていただければ」。
 
最後に大阪公演に向けて「昨年は大阪で公演ができなくて、本当に悔しい思いをしましたが、改めて1年かけて、スタッフさん、共演者とアイデアを出し合い、さらに、昨年の東京公演があったからこその新しい作り方、演出を入れて、新しい“がくげいかい”になっております。配信を見た方も見ていない方も、『muro式』に来たことがある方もない方も、誰もが楽しめる舞台になっていると思います。お子さんと楽しめる昼公演も作りました。ご家族、お友達と遊びに、楽しみに来ていただけたらうれしいです。野外劇、トラックの上で待っています。ぜひお越しください」とメッセージを送った。ムロツヨシをはじめ、大人が本気で作る“がくげいかい”に期待したい。
 
公演は5月3日(火・祝)から11日(水)まで、大阪・花博記念公園鶴見緑地 パーゴラ広場 特設会場にて。チケット発売中。

取材・文:黒石悦子



(2022年5月 2日更新)


Check

『muro式.がくげいかい』

チケット発売中 Pコード:511-089

▼5月3日(火・祝) 19:00
▼5月4日(水・祝) 14:00(★)/19:00
▼5月5日(木・祝) 19:00
▼5月6日(金) 19:00
▼5月7日(土) 14:00(★)/19:00
▼5月8日(日) 19:00
▼5月9日(月) 19:00
▼5月10日(火) 19:00
▼5月11日(水) 19:00

花博記念公園鶴見緑地パーゴラ広場 特設会場

全席指定-8000円
全席指定 一般-5000円(★)
全席指定 高校生以下-2000円(★)

[出演]西野凪沙/本多力/永野宗典/ムロツヨシ
[劇作・脚本]ふじきみつ彦
[演出]ムロツヨシ

※(★)5/4(水・祝)・7(土)14:00公演はショート・キッズバージョン
※【14:00公演】中学生以下は保護者同伴のうえご来場ください。未就学児は保護者1名につきお子様1名まで膝上無料。お座席が必要な場合は有料。【19:00公演】未就学児童は入場不可。
※雨天中止の可能性有り。ご来場・ご観劇の際は、マスクの着用を必須とさせて頂きます。会場での感染予防対策の詳細は、随時公演公式サイトにてご確認下さい。
※販売期間中はインターネットにて受付。店頭での直接販売はなし。1人1公演4枚まで。

[問]キョードーインフォメーション
■0570-200-888

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