『ハムレット』の世界に異世界転生!?
ダンスカンパニー、男肉 du Soleilが3年ぶりに新作大長編を上演!
J-POP、ヒップホップ、レゲエ、漫画、アニメ、ゲームなど、さまざまなポップカルチャーの知識を用いて、唯一無二のダンスパフォーマンスを繰り広げる男肉 du Soleil(以下、男肉(オニク))。団長・池浦さだ夢を中心に、熱気あふれる全力のパフォーマンスで魅せる彼らが、コロナ禍での2度の公演中止を経て3年ぶりに大長編の新作『転生したハムレットの世界で生きるべきか死ぬべきか戻れるか、それが問題だ』を上演する。4月21日(木)からの京都公演開幕を目前に、池浦さだ夢に話を聞いた。
ベタな言い方をすると、“ハムレットつっこみコメディ”です(笑)
3年ぶりの公演に「今は気合いが入っているというよりも、学生時代のフレッシュな感じに戻った気持ち。公演ができることに対して、純粋にワクワクしています」と話す池浦。今作では、シェイクスピア四大悲劇のひとつ『ハムレット』を題材に、交通事故死した男の転生した先が『ハムレット』の世界だった…と、異世界転生の話を交えて展開していく。「『ハムレット』は大学生のときに読んで以来なので、今回、改めてみんなで戯曲を読みました。ハムレットは、父王が叔父に殺されて、母親がその叔父と結婚して落ち込んで、復讐に目覚めて気が狂ったふりをするっていう話なんですけど、それが最後まで理解できなくて。どう考えても狂ったふりしない方がいいですよね(笑)。狂ったふりをしたことで、愛する恋人まで自殺して、自分はイングランドに送られそうになり…って、全然うまくいってない(笑)。そんなつっこみどころがたくさんある『ハムレット』の物語を、現代から転生してきた人がいたら「ちょっとおかしくない?」って言えるだろうと。ベタな言い方をすると、ハムレットつっこみコメディです(笑)」。
セリフのある劇にダンス、ラップを取り入れて展開していく男肉のステージ。今作でもそれらをふんだんに盛り込んでお届けする。「何かをするにはエネルギーが必要だと思っていて、舞台上とはいえ、転生するとなればある程度のエネルギーをため込まないといけないからダンスでそのエネルギーを表現したり。何か奇跡を起こそうとするときにはダンスは絶対に必要で(笑)。これは男肉に昔から伝わる伝統芸で「奇跡が起きるときはダンスあり!」と。ラップも、YouTubeとかにある“歴史をラップで覚えよう”みたいな感覚で、『ハムレット』の内容とかセリフをラップで伝えてみたりとか。ラップは言葉の内容を伝える音楽だと思っているので、いい効果があるなと思います」。
アラフォーの男肉が挑む“かわいい系”ダンスにも注目!
中でも、今作での新たな挑戦は“かわいい系”だという。「今回は3年ぶりということもあって、僕らが今まで踊ってきたものを、一度全部集めて、そこからリバイバルするダンスが多いのですが、今までになかったダンスとしては“かわいい系”に挑戦しています(笑)。“Kawaii EDM”っていうジャンルがあって、元々、Future Bassっていう電子音楽系のピコピコした音楽から派生したものなんです。今まで僕らは結構激しめの、J-POPとかを使って踊ってきたので、ピコピコしたかわいい音で動くとどうなるんだろう?って、アプローチをしてみたくなったんです。ただ、40歳近いオッサンがそれで踊ると、“かわいい”じゃなくて“奇怪”になってしまいました(笑)。でも、不思議とアラフォーのオジサンたちがかわいい曲ではしゃいでいるっていうのは、なかなか見応えがあるというか、見ようによっては癒しの空間なのかなと(笑)」。
コロナ禍以前は、観客をステージに上げて一緒に踊ったり、コール&レスポンスをしたりと、客席とのコミュニケーションも男肉の醍醐味のひとつだったが、それも封印。舞台と客席の距離をしっかり取りつつ、新たなコミュニケーションの方法を模索している。「僕たちは体感型というか、お客さんとのコミュニケーションも含めて楽しみたいんですよ。ライバルはUSJやと思ってるんで(笑)。以前は、男肉が絡んでもいいよという人には“男肉飛び散る席”を、絡んでほしくない人には“絶対安全席”を用意していたんですけど、今回はそんな設定をなくして、全席が安全席です(笑)。ラップ中のコール&レスポンスもできないですから。手拍子をするにしても気を遣いますよね…。“手拍子”ではなくて“かしわ手”と言って、清めてるんだよという感じを出すのがいいかなとか、僕らの写真を貼ったうちわを用意して使ってもらおうかなとか…(笑)。あとはペンライトみたいにスマホの灯りを出してもらおうかなとか、いろいろ考えています」。
コロナ対策のための制約がありつつも、楽しませたい、一緒に楽しみたいという思いは変わらない。「『ハムレット』って有名だけどどんな物語か知らない人もいると思いますし、異世界転生についてもどういうことか知らない人もいると思いますが、その両方のことがちゃんとわかるようになっています。それを知ったうえで、飛沫は極力抑えた素敵なダンス、素敵なラップ、飛沫以外のほとばしる男肉の情熱を感じていただける2時間になっています。学生時代に戻ったいい初期衝動をもとに、シンプルに楽しんでもらえるものをお届けしたいと思います」。

取材・文/黒石悦子
(2022年4月20日更新)
Check