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2回目となる師匠・笑福亭鶴瓶との親子会は
何と笑福亭のお家芸『らくだ』で親子競演!
落語への想い、師匠への想いを笑福亭べ瓶に直撃!

関西の出身ながら東京に拠点を構え、今年で噺家生活20年目を迎える笑福亭べ瓶が、噺家生活50年目の師匠・笑福亭鶴瓶と3月31日(木)、昼は東京・新宿末廣亭、夜は赤坂レッドシアターで親子会を開催する。しかも、目玉となるのは笑福亭のお家芸『らくだ』の親子競演! 破門されること3回という前代未聞の男が師匠から学んだ「芸は人なり」を胸に刻み、覚悟と決意を見せるという。親子会を前にして、その心境を聞いた。

――2015年に初めての鶴瓶師匠との親子会を開催されました。今回は、何度目ですか? 
 
笑福亭べ瓶(以下・べ瓶)「実はあれ以来、2回目なんです。僕は親子会っていうのは特別な会にしたいので、あんまり定例にするよりも5年に1回ぐらいのペースでやらせていただけたらなっていう感じだったんですよ。前回が2015年で7年あいちゃったんですけど、僕が噺家生活20年、師匠が50年。僕が40歳で、師匠が70歳なので、年齢的にも芸歴的にも、ちょうど良いタイミングかなと思ってお願いをさせていただいたんです」。
 
――第1回の時は、べ瓶さんからは言い出せず、師匠の方から親子会を提案してくださったんでしたよね。
 
べ瓶「そうです。今回は流れからお話すると、僕は新宿末廣亭の出番をほぼ毎月いただいていまして、そこのお席亭の方から『べ瓶ちゃん20年になるんだから、なんかウチでやらない?』って言っていただいたんです。もちろん自分の会にさせていただいても良かったんですけど、東京の寄席でうちの師匠にトリをとっていただくっていうことを、師匠がまだまだ元気なうちにやっていただきたいなぁっていう風に思って。で、お昼は師匠にトリを取っていただく。夜は僕が毎年独演会をやらせていただいている赤坂レッドシアターで、僕がトリを取らせていただこう、と。トリでやる師匠と僕のネタは決まっていまして、『らくだ』です」。
 
――昼は新宿末廣亭、夜は赤坂レッドシアターで、親子で『らくだ』の競演という趣向…興味深いですね。これをお願いした時の師匠の反応はいかがでしたか?
 
べ瓶「うちの師匠は基本、昼夜公演って絶対しはらへんので怒られるかと思ったら、普通に『お前、俺が昼夜やらへんの知ってるやろ』と。でも、『そのうえで、お願いさせていただいております』て言うたら『ほな、やったるわ』って言ってくれはったんです」。

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――なぜ、『らくだ』だったんですか?
 
べ瓶「もちろん、『らくだ』というネタは笑福亭のお家芸であり、一番大事にしているネタのひとつ。僕も噺家生活20年になって、いつまでもうちの師匠におんぶにだっこでもダメやし、六代目(笑福亭)松鶴直系の師匠方に、いつまでも金魚の糞みたいにしててもいけない時期になってきてる。自分も笑福亭の看板を引っ張っていくと言うとおこがましいですけど、ちゃんと次の世代に繋ぐことができる鎖の一部にならないといけないというようにマインドも変わってきているところなので、『らくだ』に挑むというのは、ちょうどいいタイミングなのかなと思います」。
 
――べ瓶さんが『らくだ』を手掛けたのはいつ頃からですか?
 
べ瓶「2015年の11月です。そこからはもう何回も舞台にはかけてますし、独演会でもやらせてもらってるんですけど、実はうちの師匠には1回も聴いてもらった事がない。どうすれば聴いてもらえるチャンスがあるだろうと考えてたら、『あっ、一緒の会やったら聴いてもらえるんちゃうか』って。それに、そうでもしないとたぶんうちの師匠は聴いてくれない(笑)。笑福亭は元々そういう捨て育ちのスタイルなんですけど、師匠がまだまだ現役バリバリでやっているうちに、聴いてほしいなというのが正直な気持ちですね」。
 
――六代目(笑福亭)松鶴師匠をはじめ、鶴瓶師匠といった直系のお弟子さん、さらに笑福亭以外でも多くの上方の噺家さんが『らくだ』を演じられています。べ瓶さんは、どなたをお手本に?
 
べ瓶「最初、うちの師匠に『「らくだ」のお稽古をつけていただけませんか?』とお願いをしたら『勝手に覚えてやれ』って言われて。『でも、ネタがネタですから』と言うと、『俺の音源と映像を事務所に言うてもらえ』と。うちの師匠の型でやりたかったので、鶴瓶の型で覚えました。ただ、六代目松鶴師匠も(桂)米朝師匠もされてますし、十八番にされてた笑福亭直系の先代の松喬師匠や鶴志師匠、また他のご一門の方もされるので、その方々の音源もお聞きしながら。もちろんベースは、うちの師匠の型でやるんですけど、できるだけ笑福亭の方々のエッセンスをいただこうと思いながら覚えていきました」。
 
――7年前の親子会の時は、全く緊張や不安はないとおっしゃっていました。
 
べ瓶「前回は、そんな怖くなくて。というのも、うちの師匠を見にくるお客さんて、前のめりで見てくれはるので、安心して臨めるし実は気も楽なんです。でも今回は、やっぱり『らくだ』を昼夜でやるっていうことを謳ってますし、前回より明らかに緊張すると思います。今の時点でも緊張感はありますし、ましてやうちの師匠を末廣亭という歴史のある小屋にお呼びして『らくだ』をやっていただくというのも、どこかでカセをおかけしてるんじゃないかという。けど、うちの師匠はそういうカセを嫌がる方じゃないと僕は思っているので、『こいつ、そんなことを俺に言うてきよったか』と好意的に思ってくださってると信じています(笑)。そういうことも含めて、今回は緊張もするし不安にもなる親子会になるんじゃないかなと思います」。
 
――べ瓶さんの中で、「親子会」というものの位置づけは?
 
べ瓶「落語家っていうのは、自分が白旗を上げて『あなたには敵いません』というところから入門してのスタートですから。人生を捧げた人に自分を見てもらう、聴いてもらうっていうのは、何よりも特別ですよね。特に今回は趣向があるので、緊張感なのか、高揚感なのか、今までに感じたことのない気持ちで舞台に上がれるんじゃないかなっていう。お化け屋敷に入っていくような感覚かなあ。入りたくないけど、どんな怖いのが来るんやろうっていうワクワクもある、みたいな」。
 
――そんなワクワクドキドキの親子会。夜の部のレッドシアターの構成を教えてください。
 
べ瓶「まずはじめに師匠と対談をやらせていただきます。その後僕が出て、師匠が出て、中入り休憩が入って、そして僕の『らくだ』です」。
 
――対談から入るのは、鶴瓶一門らしいというか。
 
べ瓶「実は前回の親子会ではできなかったことなんですよ。その時の僕は『対談させてください』なんて言うのはおこがましいと思ってたから言えなくて。ちなみに、昼夜公演どっちも最初に対談をさせてもらいます。僕の会によく来てくださるお客さんに聞くと『鶴瓶さんとの対談を長く聞きたいです』っていう方も結構多いんですよ。こんなことを言うと語弊がありますけど、落語っていつでも聞けるじゃないですか?でも、対談というものは、こういう時にしかできないことだから、確かに長くやってもいいのかなと。ただ、うちの師匠に『お前、どんだけしゃべるねん。はよ落語せえ』って言われたら即終わります(笑)」。
 
――今回は、日常雑記風の「べべ日記」はされないんですか?
 
べ瓶「もう一席はうちの師匠の前の出番なんで、前座噺というか軽い短めの噺にしようかなと。『らくだ』があるんでね。『べべ日記』は完全なる『鶴瓶噺』への憧れです。「べべ噺」とするのは恥ずかしいですし、何よりおこがましいのでできません。ただ、東京のある尊敬する先輩に「お前のスケッチトークは面白いねぇ」って言われたのがきっかけで、ちょっと自信が持てたので、そこから独演会でやりだして、って感じなので。なので、今回の親子会でべべ日記をやるなんてことは、100%ございません(笑)」。

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――今回の親子会には限りませんが、鶴瓶師匠から一番学びたいこと、盗みたいところはどこでしょうか?
 
べ瓶「落語の技術とかより、師匠が元々まとっている、人に対する優しさだったり、分け隔てのないところだったり、人間性の部分ですね。『芸は人なり』ですから、いくら小手先の技術がうまくなったって性根が悪かったらダメだろうし。僕なんか3回も破門されていますし、師匠に迷惑かけた過去もあるわけですから。そんなことも含めて、師匠がこの世界に戻してくれて、今、噺家としてやらせていただいてるのは、師匠と師匠の奥さんのおかげなので、あのおふたりの人間力を学びたいですね」。
 
――本当に「芸は人なり」ですものね。
 
べ瓶「自分がどういう人生を歩んできたのかみたいなことが、60歳を過ぎたらにじみ出ると思うんです。今は、うちの師匠ぐらいの年齢になった時、いい落語をするためにもがいてるって感じですかね。たぶん70歳になっても、もがいてるんでしょうけど(笑)。だって、うちの師匠はあの年になっても『これではあかん、もっとできるはずや』と常に向上心を持ってやってはるんですよ。そういう姿が一番勉強になりますね」。
 
――最後にもう一度、親子会についてアピールをお願いします。
 
べ瓶「東京のお客さんに笑福亭の一番大切なネタを見せるというのは、ある意味、挑戦やし勝負ではあります。『上方の落語、どんなもんじゃい!』と。東京の由緒ある寄席の長い歴史上で、上方の落語家が親子会をやるのはおそらく初めてで、しかも笑福亭のお家芸である『らくだ』をやるという覚悟みたいなものを見にきていただきたいし、笑福亭の『らくだ』は自分もバトンのひとつとしてちゃんと受け継ぎますっていう決意も見ていただきたい。そして、お客さんにそれを承認していただけるような高座を僕もやらないといけないと思ってるので、ぜひその姿を見に来てください。また、できればこのパッケージで大阪でもやりたいなという思いはあります。なので、3月31日の親子会がうまくいって、師匠が『おもろかったな』って言ってくださったら、『大阪でもやりませんか?』って言ってみます。即4回目の破門になるでしょうが(笑)」。

取材・文:松尾美矢子



(2022年3月 2日更新)


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『鶴瓶・べ瓶親子会』

Sold out!!
▼3月31日(木) 19:00
赤坂RED/THEATER
全席指定-4000円
[出演]笑福亭鶴瓶/笑福亭べ瓶
※中学生以下入場不可。
[問]アイランドプロモーション
■06-6136-8430