「楽しく、じわっと」 大宮エリー×板尾創路×片桐仁が語る『消えない絵』
作家で画家の大宮エリーが作・演出を手掛け、ミュージシャンと役者のコラボで生み出す舞台「LIVE×LIVE SING IN THE STORY」が、12月11日(土)・12日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼにて上演される。2009年に東京で上演され好評を博した作品の12年ぶりの第二弾となり、今回は、1日目は鈴木杏×ハナレグミによる『家族の風景』、2日目は片桐仁×板尾創路×真心ブラザーズによる『消えない絵』が、音楽と芝居で届けられるという。2日目の『消えない絵』の稽古場を取材した。
真心ブラザーズの楽曲『消えない絵』をモチーフに書き下ろされた本作は、同じ時代を生き、一時は共同生活もしていたゴッホとゴーギャンの物語。1886年のパリを舞台に、ゴッホを片桐仁、ゴーギャンを板尾創路が演じ、実際に起きたこととフィクションを混ぜ合わせたふたりの日々を描く。
ゴッホとゴーギャンといえば、けんかによって共同生活を解消したエピソードや、口論の末ゴッホが耳を切り落とすというエピソードは有名。やや激しい印象もあるふたりだが、稽古場で観られたのは、愛おしさと、けれどどこか哀愁も感じるふたりだった。無邪気でピュアなゴッホと、落ち着いた静けさを持つゴーギャン。大宮が「イメージは、トムとジェリー、キキとララ」と笑っていたが、ふたりのやり取りは時にププッと笑えて、時にしんみりして、なんだかとても心地がいい。大宮は丁寧に演出をつけながらも、ふたりの芝居を楽しんでいるようで、芝居を見てとてもうれしそうに笑っていた。
取材時は、真心ブラザーズの合流はまだこれからという段階だが、現段階でどんな作品になりつつあるかを大宮に尋ねると「板尾さんと片桐さんの掛け合いがすごく面白い。遊ぶところは遊んでもらって、だけど伝えたいところはちゃんと伝わる、という芝居になっていると思います」と語る。役は完全に当て書きで、「おふたりともお笑いの方としてはちょっと狂気な印象があるから、ゴッホとゴーギャンはすごく合ってるなと思って。おふたりとも芸術家ですし、ピッタリだと思います」。ゴッホファンでもある片桐は、大宮の脚本について「エリーさんなりのアーティスト論と、ゴッホとゴーギャンの話を組み合わせている。歴史上の話だけどある種のフィクションみたいなところがあって、それが面白いですよね」と明かす。
通常よりかなり短い稽古時間で本番を迎える本作。板尾が「本番が1日だけだし、稽古日数も少ないので、今はグワーッという感じで稽古をしています(笑)」と話せば、片桐も「時間がない中でも楽しみにしてくれているお客さんに相応のものを見せなきゃいけなから、今はプレッシャーがあります(笑)。しかも1日目はスーパー舞台女優・鈴木杏ちゃんのお芝居ですからね。すごいの見せつけてくるんでしょう? 観るか迷ってますよ。“ガーン!”ってなるかもしれないから(笑)」。かなりヘビーな状況ではありそうだが、大宮が「そんなに時間ないくせに、初日におしゃべりしちゃいましたね」と暴露。片桐も「2~3時間喋ってましたね」、板尾も「3人で話すのは久しぶりだったから」と笑って、いい雰囲気だ。
「普通の俳優さんだったらこのスケジュールは断ると思う(笑)」と言う板尾に、なぜそれをできたのか尋ねると「やっぱり僕は芸人やから、また違うパワーでどこかを補えると思えてるんかな(笑)。ちょっと楽天的になるというか。だけどそういうのも含めての舞台になると思う。堅苦しいやつじゃないから。楽しく、ちょっとじわっとしてもらえたらいいですよね」。片桐も「ここに真心さんの歌が入った時にどんな印象になるかも楽しみですよね」と期待する本作ならではのコラボレーション。「笑ってもらって、来年に希望が持てるように、前向きになれるようにっていう気持ちでつくっています」(大宮)という、一夜限りの公演をお楽しみに。
取材・文/中川實穂
大宮エリー&片桐仁から動画コメントが到着!
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(2021年12月 9日更新)
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