三国志、朗読劇としては初のZeppツアーを5大都市で開催中!
今なお幅広い層から愛される中国の歴史書「三国志」。舞台となるのは1800年ほど前、強大な帝国である後漢が崩れ始めた時代だ。これまで小説や漫画、ドラマにゲームと、様々な形で親しまれてきた三国志だが、『朗読劇「三国志」〜誓いの調べ〜』は、4人の人気声優がキャスティングされ、音楽と演奏を二十五絃箏奏者の中井智弥が手がける。そのストーリーは、愛、友情、勇気、そして野望のキーワードから再構築された内容になっている。
朗読劇と聞くと演者が椅子に座って読み合わせをしていくようなスタイルを想像していたが、実際はドラマチックなBGMに二十五絃箏の繊細な音色が重なったり、舞台照明を効果的に使ったりと、内容盛りだくさん。シンプルなストーリー展開、アレンジを加えたエピソード、更には演者達のアドリブが飛び出す嬉しい一幕もあり、三国志に詳しくない人でもとっつきやすい印象を受けた。
定刻に間に合うように着席すると、客席をひとつずつ空けて座るようになっており、観客は安心して観劇に集中することができる。この朗読劇ツアーは会場ごとにキャストが異なるのが特徴で、名古屋公演では劉備(笠間淳)、関羽(山口智広)、張飛(伊東健人)がステージ中央に登場。3人を見守るように、少し離れたところに撫子(小原莉子)がおり、声優たちは三国志の世界観に合わせた衣装に身を包んでいる。二十五絃箏は舞台下手に鎮座し、時に壮大なメロディーを奏で、また時には効果音としてその存在感を放っていた。
物語は3人の男たちが出会い、義勇軍を結成するところから始まる。後漢の末裔でありながら謙虚な性格で、無闇に人を斬ってはならないというのが信条の劉備。大酒飲みで荒っぽい性格だが情に厚く、戦に強い張飛。ミステリアスな雰囲気を持ち何を考えているか分かりにくいが、常に優れた判断力で場を収める関羽。混乱を極めたこの国を自分たちの力でどうにかしようとするところから、物語が動き出すのだ。
その声量はもちろんのこと、圧倒されたのは声優たちの表現力だった。上品な人柄とは裏腹におっちょこちょいな一面、怒りにうち震え、思わず肩がすくむほどの叫び声、決して消すことができない後悔の念を苦しげに語るうめき声…多彩な表情でキャラクターに命を吹き込むと、その人となりが立体的になり、観客は自然と親近感を覚える。登場人物たちが心を開いて絆を深め、変化を与えあっていく様子は、今ここに実在する人物のような臨場感に溢れているのだ。みんなで酒を飲み交わしどんちゃん騒ぎをする場面では、観客である私たちも宴に参加する志願兵の一員になったような、ふふっと笑える仕掛けも用意されている。
演出の仕方も目を引いた。会話をじっくり聞かせるシーンとは裏腹に、戦が始まると音楽のテンポも速くなり、キャストが代わる代わる畳み掛けるセリフによって場内には緊張感が走る。そしてほんの些細な手法によって、シーンを印象付ける工夫も。声優たちの迫真の演技、壮大なスケール感を生み出す二十五絃箏の響き、趣向を凝らした演出すべてが合わさって、観る者の想像力をかきたてる仕組みになっているのだ。
最後に、特に印象に残ったセリフも引用しておきたい。登場人物の語る言葉には、作り手のメッセージが明確に託されていたと思うからだ。
「自分の金や権力に夢中で、この国に生きる人間のことなど、かけらも考えちゃいねえ。疫病が流行ろうが、お構いなしだ」
「この世を変えたいという想いに、男も女もない」
「理不尽に屈するな」
毎年のように経験する異常気象に加え、突如現れた新型コロナウイルスの流行、何が正解かわからず、疲弊するばかりのニュース。誰も想像していなかった苦境も間もなく2年が過ぎようとし、舞台を見つめながら自分たちの現状を重ねた人も少なくなかったはずだ。朗読劇「三国志」は、志を高く掲げ、あきらめない勇気を貫いた人々の物語である。演者たちの豊かな表現力によって、観客の頭の中に壮大な情景を描き出す朗読劇、ぜひ体験してみてほしい。
大阪公演は11月21日(日)Zepp Namba(OSAKA)、東京公演は12月5日(日)Zepp Haneda(TOKYO)にて開催。チケットは発売中。
Text by 青木美穂

名古屋夜公演終了後(Twitterより引用)
(2021年11月12日更新)
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