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映画コメンテーターLiLiCoとDJ加美幸伸がイチオシ!
ミュージカル『ボディガード』がイギリスから初来日

1992年に公開され、世界中で大ヒットを放ったハリウッド映画『ボディガード』のミュージカル版がイギリスから初来日する。ホイットニー・ヒューストン演じるスター歌手のレイチェルと、ケビン・コスナー演じるボディガードのフランクが織りなすラブストーリーは、サスペンスも交え、ブームを引き起こした。映画を見たことがなくても、ホイットニーが劇中で歌う「エンダ―――♪」でおなじみの『I Will Always Love You』を耳にしたことがある人は多いはず。ミュージカル版は2012年にロンドンで初演され、世界11か国以上をまわり400万人を動員した。今回、映画コメンテーターで『ボディガード』来日公演のオフィシャルサポーターを務めるLiLiCoと、FM COCOLOで毎週金曜日15時台に演劇情報専門コーナー「ステージぴあ SPOT-LIGHT」を担当するDJ加美幸伸が、一足先に東京公演を観劇。映画もリアルタイムで見ていたふたりに、ミュージカル版の魅力について対談してもらった。

「名曲ですから! 本物の音楽がここにある」(LiLiCo)

 
――おふたりともミュージカル『ボディガード』を観て、興奮冷めやらぬようですね。LiLiCoさんは、日本は洋画・洋楽離れだとおっしゃっていましたが。
 
LiLiCo「そうなんです。今、特に若い人たちが洋画・洋楽離れなんです。もう20年ぐらい前からですかね。日本の方は洋楽は聴いたことがあるか、ないかのどちらかなんですよ。ただ、聴いていなかった人たちでも、今回のホイットニーのナンバーは知っていますよね。主人(純烈・小田井涼平)もそんなに洋楽に浸っていた人ではないんです。ハワード・ジョーンズを知っているぐらい。そんな主人でも今回の『ボディガード』を観て『洋楽を知らない俺だって、さすがにこの曲たちは知っている』と言っていましたから。名曲中の名曲は時が経っても残っていくんですね。本物の音楽がここにあるのかなと思いますね。あれほどヒットした映画なので、映画を観ていない方でもこのミュージカルから入ってくれたらと思います。親子で観に来てくれたらうれしいですね。ティーンエージャーにとっては、チケットの値段が高すぎると思うかもしれないけど、キャストが生で目の前にいて、どれだけこの舞台のために練習して、身体を使って生み出しているかということを考えたら、高くはないです。しかも今回はイギリスからキャストが来ているわけですから。これを観なかったら、乗り遅れている、エンタテインメントを語れない、ぐらいになってほしいですね」
 
加美「ちなみに、LiLiCoさんのご主人で純烈の小田井涼平さんはBARBEE BOYS(バービーボーイズ)のコピーバンドをやっていて、歌ではなくサックスを演奏されていたんですよね」
 
LiLiCo「私も先週聞いて知りました(笑)。あの辺りの時代の人間ですから、米米CLUBやUnicorn(ユニコーン)も好きなんです」。
 
加美「そんな人でも『ボディガード』はやばいと。曲は知っている」
 
LiLiCo「『ダイ・ハード』みたいに、映画はテレビの放送で途切れ途切れに見ているけど、ストーリーは詳しく覚えていないくらいの状態。ただ物語はシンプルなんですよね。スターがいて、ストーカーが出てきて、どうするかといったら、ボディガードを付けるしかない(笑)。初めはお互い素直に相手のことを受け入れられない。何となくどうなるかは分かってしまうけど、あの時代、それが面白くて、ワクワクしましたよね」
 
加美「そうそう。僕はミュージカル版を見て、なんか気持ちがリセットされました。舞台上でドラマは続いているけれど、歌のシーンがところどころに入ることで、気持ちがリセットされて、また次のシーンに入っていける。それが新しい楽しみ方なのかなと思いました」
 
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――舞台では、ホイットニーの名曲16曲がオンパレードで流れるそうですね。
 
LiLiCo「映画の中では使われていないホイットニーの名曲が、こんなにもこのストーリーに合っているんだという、驚きもありますよね」
 
加美「そう。あれっ、この曲は映画にも出てきたっけ?となる」
 
LiLiCo「最初にミュージカルを観て、映画を観た人は『曲が少ない!』と思うはずですよ。映画ではホイットニーの『Run to You』『Queen of the Night』『I Have Nothing』『I Will Always Love You』など数曲だけしか使われていないですからね。私はホイットニーの1986年のヒット曲『Greatest Love of All』が大好きで、ちょうど日本に行きたいと夢見ていたときに聴いていた曲なんです。私は1988年の12月に日本に来たからよく覚えていますね。スウェーデンでもう学校に行きたくないと、日本でスターになる夢を見ていた時代の曲なので、それが舞台で使われるなんて、びっくりしましたね。舞台版ではどうやって少ない曲数で埋めるのかなと思っていたんです。だからこんなにもほかのホイットニーの名曲で埋められているんだと」
 
――ジュークボックス・ミュージカルのような楽しみ方もできるんですね。
 
加美「ミュージカルが好きで観る人と、『ジャージー・ボーイズ』のような音楽メインのミュージカルが好きだという人、両方が楽しめると僕は思いましたね。音楽もすごく質の高いものだから、すごくお得な感じがしました。レイチェル役がダブルキャストというのも大きくて、ホイットニーがこの世に出てきたとき、歌うまいなと思ったと同時にすごいキュートやなと思ったんですよね。舞台版のキャストのふたりもそうですから、ほんと、両方楽しめます」
 
――映画ではレイチェルがホイットニー本人とかぶりますよね? 舞台版はどうでしたか。
 
LiLiCo「レイチェル役の一人、アレクサンドラ・バークはイギリスのスターなんです。特にイギリスのポップスを聴いている人は『嘘でしょう?』と思っているはずです。だって、ミュージカル界の人間じゃなくて、アレクサンドラはシンガーとしてスターだから。スターがミュージカルに出るなんて、そしてスターの役を演じるなんて、興奮しますよね」
 
加美「ある意味、リアリティはあるよね。スターのアレクサンドラが出ているということを考えながら観る、というリアリティが」
 
LiLiCo「もうひとりのジェンリー・シャローはミュージカルに何作も出ている人なんです。あのふたりが一緒にいると、ジェンリーがすごくアレクサンドラのことを尊敬しているのが分かるし、ほっこりします。もうちょっとバチバチかなと思っていたんです。私なんて、出てないのに私があのふたりとバチバチだったんだもん(笑)」
 
加美「4人目のレイチェルや!」
 
LiLiCo「ふたりのどちらかが風邪引いたら、私が役取っちゃいますよ(笑)」
 
――LiLiCoさんが演じるレイチェルは見たいですよね(笑)。
 
LiLiCo「私、出たいと思いましたもん。2020年には日本キャスト版も上演されるじゃないですか。フランク役は大谷亮平さんですし(笑)。私、真っ先に『キャスティング決まってる?』と聞きましたから。どの役でもいいから出たい!と思って(笑)。とにかく、日本中で『ボディガード』旋風が巻き起こってほしいです」
 
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「イギリスで生まれたミュージカルを大阪で見られるチャンス!」(加美)

 
――人物像についてうかがいたいと思います。映画ではレイチェルは初め、高飛車でイヤな人にも見えますよね。
 
LiLiCo「そうそう、あれ、結構ホイットニーそのままなのかな(笑)。何が面白いって、1月にホイットニーのドキュメンタリー映画『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー』が公開されたんですよ。結構勝ち気な人なんだなと思って。だから余計に、『ボディガード』を観ると面白いんですよ。でもスターは、ああいう風に強く生きないといけない面があるんでしょうね。特にレイチェルは息子がいるので。高飛車じゃなくていいんですけど、強く生きないと自分や家族を守れない。でも、女性は何で変わるかと言えば、それはもう恋ですよね。レイチェルは恋で変わり、段々、柔らかい表情になっていく。フランクに期待している時のレイチェルが私は好きです。フランクに『誘っているんだよ、分かってよー』という感じがかわいい。でもフランクはそれに気付けないんです。女性の観客は『分かるわー』と盛り上がるのではないかと思います」
 
加美「そうだね、レイチェルは分かりやすいもんね」
 
LiLiCo「舞台では生でそれを見せないといけないから、多少、映画より大きめの演技をするんですよ。舞台と映画の演技は全然違いますから、それを今回いいバランスで、演じてくれていますね」
 
 
加美「フランク役のブノワ・マレシャルさんは、結構、映画のケビン・コスナー寄りですよね」
 
LiLiCo「そうですね、動きも大きいしね。私はハリウッドスターと同席した際に本物のボディガードを何人も見ているんですけど、フランクのように空間をクロールして助けに来る人はいないですから(笑)。でも、そうであってほしいという願望も叶えてくれるミュージカルです。皆、守られたいですし。あんないい男に守られたら、そりゃ恋に落ちますよね」
 
――ブラッド・ピットやジョニー・デップに取材したことのあるLiLiCoさんから見ても、ブノワさんは彼らに負けないほどのイケメンと仰っていましたよね。フランクは加美さんから見てもいい男ですか?
 
加美「腹立ちますね。この人、分かってるなぁという感じがします(笑)。ラストのレイチェルとフランクの演出も、映画を見ていた世代からすると映画を思い出すし、いろいろとリンクしていくんですよ。自分の中の記憶も蘇らせてくれる」
 
LiLiCo「映像と生の舞台をすごくうまく使い分けていますよね。ストーカーがたくらみで何か作っている場面を生でやってしまうとシーン転換が難しいけど、それを映像で見せるなど。バランスがいいんですよね」
 
加美「本当にそう思いますね」
 
LiLiCo「手元を見せなければならないシーンは、ちゃんと映像を使って客席全体まで情報を届けているんです」
 
thebodyguard3.jpg――フランクのアクションシーンはどうでしたか。
 
加美「何かさりげなくてええ感じでしたね。激しくもなく。『007』みたいな感じ。さりげなくパンパンとやって相手を蹴散らし、クールで粋な感じです」
 
LiLiCo「今まで大物の政治家を守ってきたフランクが、今回はセレブだから守り方が違う気がするんですよね」
 
加美「もともとはレーガンさんのボディガードやもんね」
 
LiLiCo「ジャケットの裾がフワッとひるがえる程度のアクションはしていたと思うんですが、やっぱり守るのが女性で、自分が気に入られていないことが分かると、そういう守り方になるんじゃないかと思いますね。人間は勝手で、自分が嫌いというのはいいんだけど、嫌われると傷つくんですよ(笑)。そういうのも裏のテーマとしてあるんじゃないかなと。だからさりげなさがある。女性からしても、あまりにも激しい守り方だと逆に怖いですよ」
 
加美「なるほど、そうかー。いや、もう一回見に行かなあかんわ(笑)」
 
LiLiCo「私もアレクサンドラの公演を見たので、ジェンリーバージョンでもう一回見たいですね。大阪のお客さんがどういうリアクションをするのかも見てみたいです」
 
――たくさんあると思いますが、おふたりが一番グッときたシーンはどこでしょう。
 
LiLiCo「やっぱり『I Will Always Love You』のシーンですね。これ以上はネタバレになるので言えませんが、東京公演の初日では、“エンダ―――♪”の瞬間に、観客もウワーッと興奮していましたね」
 
加美「なりましたねー」。
 
LiLiCo「びっくりしましたよ。さらに素晴らしい歌唱力と衣裳で、あのシーンは本当にずば抜けるんです。そこが聴かせどころでもあります」
 
加美「あれは良かったですね。ほかには、舞台上で早着替えをするシーンがあるんです。黒子さんかと思ってたらダンサーたちで、さりげなく着替えながら歌うんですよ。赤のドレスに変わって、あれは印象的でしたね。また、レイチェルのレコーディングのシーンで、フランクが部屋に入ってきて、彼のレイチェルのスタッフとの距離の取り方が面白かった。この人とは何かがある、この人は受け入れようとしているとか、距離を取る時のフランクの表情の絶妙さが、見ていて社会的でドキドキしました」
 
LiLiCo「関係を持ってはいけない人と関係を持ってしまった次の日は、超やばいですよ(笑)」
 
加美「レイチェルがレコーディングで歌っていて、スタッフの皆が『最高!』と言ってる横にスッとフランクが現れるんですよ。あの距離感、すごいなと思って」
 
LiLiCo「私たち観客だけは、『何があったか知っているよ!』とお腹の中で蝶々が飛んでるみたいな感じになる(笑)」
 
加美「そういうドキドキもありましたね」
 
――最後に読者にメッセージをお願いします。
 
LiLiCo「私、雑誌『ぴあMovie Special』の『この映画、埋もらせちゃダメ!』 というコーナーで連載していて、いつもは映画を紹介していますが、今回はイチオシの舞台です。映画を年間400本見ていて、目が肥えてしまった私が『これ見なきゃだめだよ』と断言できます! まぁ、『ボディガード』はそもそも埋もれていない映画なんですけど(笑)。その埋もれていない映画のミュージカル版がイギリスの本格的なキャスト、スタッフで来ているわけです。大阪の14公演、キャストは全力を尽くして大阪の皆さんを楽しませようとしています。皆さん人柄の良い素敵な方ばかりです。ブノワさんは日本でモデルをされていた経験があり、日本語を少し話せたりするんです。関西の皆さんはすごく元気で、ヨーロッパの観客みたいに熱くなるんじゃないかなと思うから、声援、応援をしてほしいですね。舞台ってだいたい、後から『行きたかったー』という声を聞くんですよね。それでは遅いから、チケットは今すぐ買ってください! 公演が終わった後、『観たかったー』というのはナシです! 本格的なエンタテイナーがいるように、本格的な観客がいると思うんです。関西の皆さんは外国の公演に慣れてきていると思うので、その本格さを『ボディガード』のキャストにも見せるチャンスです」
 
加美「大阪公演、盛り上がってほしいですね。イギリスで生まれたミュージカルを大阪で見られるチャンスはなかなかないんです。そのチャンスは今なんですよ!」
 
LiLiCo「“エンダ―――♪”のシーンの衣裳は70万円くらいするそうです。ステージ衣裳というよりも本物のドレスなんです。『Queen of the Night』は金色だったり、衣裳も豪華で素晴らしい。セットもレコーディングスタジオやログハウス、アカデミー賞授賞式の裏側まで全部、見られる。そして最後はライブなんです。そこは躊躇せず、ぜひ、立ち上がってくださいね!」

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取材・文:米満ゆうこ



(2019年10月10日更新)


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撮影:鈴木久美子

ミュージカル『ボディガード』
来日公演

チケット発売中 Pコード:492-410

▼10月11日(金) 18:30
▼10月12日(土) 12:30/17:30
▼10月13日(日) 12:30/17:30
▼10月14日(月・祝) 12:30
▼10月16日(水) 13:30/18:30
▼10月17日(木) 13:30/18:30
▼10月18日(金) 13:30
▼10月19日(土) 12:30/17:30
▼10月20日(日) 12:30

梅田芸術劇場メインホール

S席-14000円 A席-9500円 B席-5500円
U-25当日引換券-7500円(25歳以下)
S席(一般1名+U25 1名)引換券-21000円(S席ファミリーチケット・U25=25歳以下)
S席(一般1名+U25 2名)引換券-28000円(S席ファミリーチケット・U25=25歳以下)
S席(一般2名+U25 1名)引換券-35000円(S席ファミリーチケット・U25=25歳以下)
S席(一般2名+U25 2名)引換券-42000円(S席ファミリーチケット・U25=25歳以下)

[原案・原作]ローレンス・カスダン(映画脚本)
[劇作・脚本]アレクサンダー・ディネラリス
[演出]テア・シャロック
[出演]アレクサンドラ・バーク(Wキャスト)/ジェンリー・シャロー(Wキャスト)/ブノワ・マレシャル/他

※未就学児童は入場不可。英語上演・日本語字幕付。一部Wキャストあり。

[問]梅田芸術劇場■06-6377-3800

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