ブルゾンちえみ、KERAの代表作で舞台初出演
劇作家・演出家で劇団ナイロン100℃を主宰するケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)。2018年には紫綬褒章を、2019年には第26回読売演劇大賞 最優秀作品賞・優秀演出家賞を受賞するなど、第一線で演劇界をけん引している。KERAが30年以上、世に送り出してきた戯曲の中から選りすぐり、今、精彩を放つ演出家の手で新たに創り上げるシリーズ「KERA CROSS」プロジェクトが始動した。
第一弾は鈴木裕美演出による『フローズン・ビーチ』。ナイロン100℃公演として1998年に初演し、第43回岸田國士戯曲賞を受賞したナイロン100℃初期の代表作だ。舞台は大西洋とカリブ海の間に浮かぶリゾート・アイランドにある別荘の一室。そこで起きたある事件を軸に、複雑に絡み合った5人の女たちの心の機微と運命を16年にわたって描いたミステリー・コメディだ。

出演は、鈴木杏、朝倉あき、シルビア・グラブ、そしてブルゾンちえみ。ブルゾン演じる市子は物語の冒頭部分でも重要な役割を担うのだが、舞台は初挑戦。作品そのもののファンも多い大作だ。「出演が決まってから、いろんな方が“あの作品が好きで”とお声かけくださって。ファンの方々が今回の『フローズン・ビーチ』がどういうバージョンになるのか楽しみにされていることが伝わってくるので、このカンパニーならではの新しいものをご提供しようという気持ちで挑みます」と意気込む。
2017年にブレイクし、いまや若手とは思えぬ堂々たる風格も感じられるが、「舞台は何もかもが初めてで、自分に何が足りなくて、どこを頑張るべきなのかも分からない」と一抹の不安をのぞかせる。「一つ一つ段階を踏んで、ここまでたどり着いたのであれば“だから私はここに立てた!”という思いがあると思うのですが、この作品のお話をいただいた時も、私でいいんですか?って何度も聞いてしまって…」。自分はこれでよいのかと自問自答を繰り返す日々だという。それでも「いくら人に“大丈夫”と言われても、もう性格だから直らない(笑)」と開き直りつつもある。その度胸と、尽きることのない向上心が彼女をますます大舞台へと導いてゆく。
「新しい経験とか、何か知識を得た時に、“昨日の自分より絶対に成長した”と達成感を得ることが好きなんです。舞台はもう、それはかなりのものですよね。汗水たらして必死に取り組んでいくことになりますし…」と、本公演で“最上級”の達成感を得られるのではないかと期待をふくらませる。
舞台は「ダイレクトに観客の反応を感じられ、嘘がないから好き」なのだとか。「お笑いで地方に行った時も、こんなに集まっていただけるんだと思ってうれしくなります。喜んでくださる声を聞くとホッとするというか、リアルに人と人が接することは大事だなと思います」と開幕を待ち望む。
公演は、7月12日(金)に開幕する神奈川プレビュー公演を皮切りに、各地を巡演。大阪公演は8月16日(金)~18日(日)にサンケイホールブリーゼで上演。チケット発売中。
取材・文:岩本和子
(2019年5月28日更新)
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