「新しい地平を目指して、まずは10年励みたい」
新生阿佐ヶ谷スパイダースの大阪公演が間もなく!
1996年の旗揚げより、公演ごとにキャストを集める演劇プロデュースユニットとして活動してきた阿佐ヶ谷スパイダースが、新たなメンバーを迎えて劇団化。新生阿佐ヶ谷スパイダースの第1弾公演となる『MAKOTO』が、8月25日(土)・26日(日)、大阪・近鉄アート館にて上演される。主宰の長塚圭史に話を聞いた。
「劇団化したひとつの理由として、プロデュース公演をやり続けていても新しい道が見えないと、解散の話まで出ていたんです。でもそこで、全然違う形で創作できる集団を構築できないかという思いが生まれ、純粋に“劇を作りたい”と思う人たちと一緒にやれたらいいんじゃないかという結論に至り、新しいメンバーを集めることになりました」と、劇団化したきっかけを語る長塚。中村まことや村岡希美などの実力派俳優陣と、オーディションにより加わった7人の若手俳優と共に、22年目の再出発を果たした。
現在はスタッフ、俳優を含めて26人が集結。すべて自分たちで役割分担しながら手作りしていくという。「劇場との交渉は僕が直談判(笑)。チラシの配布も、バラシをするのもすべて劇団員でやります。そのすべてが演劇的行為であるはずだというところに立ち戻ろうと。完全に逆行していますが、そんな思いでやっていると、楽しいんです(笑)。いずれは地方にもメンバーがいて、そこでクリエイションしたり、子どものための劇を作ったり。何ができるか分からないけれど、新しい地平を目指して、まずは10年励んでいきたいですね」。

今作の『MAKOTO』の主人公は医療事故で妻を失った自称漫画家。破天荒な漫画家と彼を取り巻く市井の人々と家族の物語が描かれる。「奥さんを急に失ってしまった男の話です。人の内側の葛藤とか、内側で起きていることって、外から見ただけじゃ分からない。その人にとって大切なことが表に出たとき、それが例えば発火するとか、そういうことがあったらどうなのかなって考えたところから始まりました。東京という変容していく大都市の中で、男が孤独とどう向き合っていくか、奥さんのことを乗り越えてどう生きていくかを描きます。ひとりの人間を忘れようとするときのエネルギーは、なかなか奇抜なところに向かいます。主人公は中村まことさんが演じることもあり、なかなかの破天荒です(笑)。とてもリアリティのある部分もたくさん出てきて、僕も新鮮な気持ちで作っています」。
また「近鉄アート館で公演ができるのも楽しみ」と語る長塚。「非常に密な距離感の中で作ることができるので、新しい阿佐ヶ谷スパイダースをお見せするには非常にいい空間だなと思っています。僕らの熱を伝えることができればいいなと。手間と時間をかけて作れるのが劇団の良さだと思うので、そのことを大いに体感していただければと思います」。
東京公演は連日大盛況。阿佐ヶ谷スパイダースの新たな船出をお見逃しなく! 大阪公演は8月25日(土)・26日(日)、近鉄アート館にて。チケットは発売中。
取材・文:黒石悦子
撮影:木村正史
(2018年8月21日更新)
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