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「上質で純粋な会話劇を見てほしい」
濃密な会話の応酬で繰り広げるサスペンス劇の傑作
ロベール・トマの『罠』が7年ぶりに登場!
主演のダニエルを演じる加藤和樹にインタビュー

新婚3ヶ月の夫ダニエルと妻のエリザベート。バカンスで訪れていた先で妻が行方不明になった。やがてマクシマン神父に付き添われて戻ってきたエリザベートだが、全くの別人になっていた…。1960年にフランスの劇作家、ロベール・トマが書き下ろしたサスペンスの傑作『罠』は、日本でも何度か上演され、緊張感のある会話のやり取りや意表をつく結末などが評判を呼び、好評を博してきた。加藤和樹は2009年に主人公のダニエル役で初主演し、2010年には再演。今年、7年ぶりの再々演が決定した。登場人物はわずか6人という濃密な会話劇に、三度挑む。

上演時間は約2時間。休憩なし。最後の最後までどう展開するか分からない、一言たりとも聞き逃せない、テンポの速い濃縮されたサスペンス劇。主人公のダニエルを演じる加藤は、ほぼステージに出っぱなし、しゃべりっぱなしだ。

初演、再演では20代半ばだった加藤も、30歳を越えた。よりダニエルという人物に近くなった今、どう演じるか楽しみだという。
「今回はもう少し大人の魅力を出せればいいと思うのですが…でも、そんな余裕なんてないとも思います(笑)。ただ、年齢が近くなった分、見た目にも無理がないので、お客様もすっと話の世界に入って来れるのではないかなと思います。台詞の量も膨大で、精神的に追い詰められる役どころなので、初演では何が本当で何が嘘か自分の中でよく分からなくなったんです。それだけ自分と役の境目がなくなってしまう役でした。ただ、そんな精神状態になったときに“これがダニエルの心情なのか”とも思って。今回もその境地まで行けたらまた、見えてくるものがあるのかなと思います。これだけ全身全霊で体当たりできる役もなかなかないので、30歳を越えた自分がどう演じられるのかも楽しみの一つです」。


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他人の言うことに即座に反応し、“2分と黙っていられない男”と言われるダニエル。特にカンタン警部とのやり取りは注目だ。
「カンタン警部役は、初めて共演させていただく筒井道隆さんで。ダニエルはカンタン警部とのやり取りが非常に多いので、二人の関係性をうまく作っていければ、より深みが出てくるのかなと思います」。

また、妻のエリザベートを演じる白石美帆とは初演で、ベルトンを演じる初風緑とは再演で共演した。メルルーシュ役の山口馬木也とはさきの『ハムレット』で共演したばかり。そしてマクシマン神父役の渡部秀というこの顔ぶれに、過去2回とはまた異なる魅力のある作品にできると確信している。
「この6人で作り出す緊張感、空気感も、前回とはまた違ったものになると思います。ダニエルは人の言うことに翻弄され続けるのですが、その姿はどこかおかしくもあって。僕自身、彼らの中に素直に身を投じようと思います。そうすることで自然とまた“うわ、やられた”となると思うので、1つ1つに新鮮なリアクションをしていきたいです」。

6人の間で飛び交う会話の量は膨大だ。最後までどう引きつけるのか。
「台詞の中にいろんな情報が入っている作品ですが、それを100%大事にしていると間延びしてしまうこともあるので、何を聞かせて、何を捨てるか、はっきりさせないと、と思っています。それは稽古で共演する皆さんと役に合ったテンポを確かめながら、会話が気持ちよく運べばいいなと思いますね。(舞台で)劇場に行くといつも、声がどこまで届くのか確認をしているのですが、そういうことを気にし過ぎるとどこか作り込んでしまうことになるので、ダニエルに関してはもう、感情で演じていきたいなと思います。初演、再演も、全力で、がむしゃらにぶつかったので、その気持ちはなくしたくないですね」。


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グランドミュージカルに大型時代劇と、ここ数年、舞台作品でも活躍の幅をぐんと広げている。そんな中でストレートプレイは「誤魔化しが効かない分、僕にとっては怖いものでもある」と言う。しかし、それ以上にやりがいも感じている。
「役として芯が通っていて、最後までちゃんと立てたときは何とも言えない達成感を感じます。『ハムレット』でもそうでしたが、会話劇はテンポが大事で、ちょっと間違ってしまうとお客様がうまく乗っかれず、“あれ?”という空気になることもあるんです。“今日はすごく間が悪かったな”とか、やっていても思うことがあって。それって僕ら役者だけが作り出せるものじゃなくて、会場のお客様のリアクションや呼吸も感じながら作っていくものなので、そこはすごく難しいところでもあります」。

また、「上質で純粋な会話劇を見ていただくことで、こういう作品もあるんだと知ってもらう。そういうことを僕らがもっともっと発信していかないといけないと思っています」と、一つの使命を持って挑んでいる。


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サスペンス劇だけに多くは語れないが、ダニエルは「もう何も信じられない」と人間不信に陥る。そんなダニエルの心情と観客の心理がシンクロしていく様も見どころだ。
「“ええ? そうだったの?”と、いろんな感情がお客様の中から湧き上がってくると思います。次から次へと新たな謎が生まれて、考えている間に次の問題も発生してくるので、振り回されるダニエルの感情にお客様もついて来てくだされば最後は自然とだまされると思います。なので、ぜひ、だまされに来てください。そしてもう1回、見てください(笑)。“ああ、そういうことだったのか”と分かったら、もう1回見たくなると思います!」。


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撮影/渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)




(2017年6月28日更新)


Check

「罠」

発売中

Pコード:455-947

▼7月15日(土)13:00/17:00★
▼7月16日(日)13:00

兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

全席指定-8500円

[作]ロベール・トマ
[演出]深作健太
[出演]加藤和樹/白石美帆/渡部秀/初風緑/山口馬木也/筒井道隆
※未就学児童は入場不可。

★=7/15(土)17時公演終了後、出演者によるトークショーあり。

[問]芸術文化センターチケットオフィス
[TEL]0798-68-0255

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