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父・中村芝翫と共に、中村橋之助、中村福之助、
中村歌之助の三兄弟が大阪松竹座「壽初春大歌舞伎」で
襲名披露!その素顔に迫るインタビュー!

2016年10月、東京・歌舞伎座を皮切りに、親子四人での襲名披露をスタートさせた八代目中村芝翫、四代目中村橋之助、三代目中村福之助、四代目中村歌之助。2ヵ月の歌舞伎座公演に続いて、1月2日(月・祝)からは大阪松竹座の「壽初春大歌舞伎」で襲名披露を行う。歌舞伎座の襲名披露を終えての心境や、大阪での襲名披露への意気込みなど、橋之助(写真左)、福之助(同右)、歌之助(同中)の3兄弟に話を聞いた。

――10月、11月と歌舞伎座公演を無事終えられ、12月はユニバーサルスタジオジャパン(以下、USJ)の襲名記念パレードに始まり、一日交通啓発隊長、ミナミでのお練りなどをされて、毎週大阪の街や人に触れてこられたと思いますが、どんな印象を受けましたか?

橋之助:うちは元々、母親が京都出身ですし、父方の曾祖母も関西なので、3人共関西の血が入っているんです。それに、歌舞伎界でも関西の俳優の方々とも仲良くしていただいたりしているので、すごく親近感があります。今まで大阪松竹座に出させていただいたときも、出待ちして下さる方や、街で声をかけて下さる方も、気さくにいろいろお話されるのがすごく好きで。慣れないことばかりでしたが、楽しくさせていただきました。

福之助:USJのパレードだったり、一日交通啓発隊長だったり、初めてのことばかりでしたが、皆さん温かく迎えて下さいました。特にUSJは今まで見る側でしたので、見ていたパレードに出られるというのはすごくうれしかったです。

歌之助:僕もすごく楽しませていただきました。大阪の皆さんは勢いがあって、雰囲気が温かいなと思います。3人とも初舞台から本名でやってきたので、襲名した名前で呼んでいただけるとすごく感慨深いですね。

――USJには、前からご家族で行かれていたんですよね。

橋之助:よく行きますね。家族そろって大好きなんです。ですから、いつもパレードを観ていましたし、今回あのフロートの上に乗せていただいて、想像をはるかに超える楽しさがありました。

――橋之助さんのブログでは「USJは来るたびに刺激があって、芝居に生かせることもある」ということを書かれていましたね。

橋之助:そうなんです。「ハリウッドライド」とか、ただただ楽しい絶叫系ももちろん好きなんですけど、僕は「ジョーズ」とか「ウォーターワールド」とか「ウッドペッカー」がすごく好きなんですよ。お芝居のヒントを得ようと思って行くわけじゃないですけど、例えば「ウォーターワールド」を見ていても、“立廻りであの手は使えるんじゃないか”とか、ふと思うんです。お弟子さんや家族と一緒に行くと、「あれは使えそうだね」とか話してますね。

福之助:普段は東京にいるので滅多に来ることができないんですが、今年は2~ 3回来させてもらっていて、毎回違った工夫が施されていたり、お客さんが飽きない工夫がされていますよね。そういうところはすごく面白いなと思います。

歌之助:本当に来るたびにアトラクションもイベントも、新しいものを取り入れていることが多いなと思いますね。歌舞伎でも、父や(中村)勘三郎の叔父が「コクーン歌舞伎」などで、毎回新しいことをやっていたので、そういうところにも共通点があるなと思いますね。

橋之助:USJは今、“クールジャパン”というのをやってらして、日本から発信できるものをたくさん作ろうとされている。AKB48も公演をされていましたが、歌舞伎の若手俳優とUSJのコラボもあり得るんじゃないかなって思います。分かりやすい演目ももちろんそうですし、あえて古典の演目をやってみるのも面白いんじゃないかと思います。USJだからできるテーマパークと歌舞伎のコラボが実現するといいなと思いますね。

――今回のパレードをきっかけに、切り開いていけるといいですね。ところで、記者会見で橋之助さんと福之助さんが「歌之助が構ってくれない」と仰っていましたが、普段の3人はどんな感じで過ごされているんですか?

歌之助:僕は基本的に、楽屋とかでガヤガヤしない人なんです。

橋之助:冷めてるんだよね(笑)。

歌之助:そういうわけじゃなくて、自分でも感じるくらい、結構神経を使うんです。兄二人は体力を使っての疲れかもしれないですけど、僕は精神的にずっと気を張っているタイプ。だから、芝居の前であまりうるさくしてほしくないのに二人が入ってくるので冷たくあしらっちゃうんです(笑)。

橋之助:学校と家の顔が全然違うのが宜生(歌之助)だよね。僕と宗生(福之助)は常に一緒(笑)。

歌之助:僕、めちゃくちゃ人見知りなので、友達を作るのも相当時間がかかるんですよ。一回話しただけじゃダメですね。

福之助:この2年ほど、兄が大学生になってから舞台に出ることが多くなってきて、歌之助と僕は家でお留守番することが多くなったんです。それで一気に仲が深まったよね。

歌之助:(福之助が)一方的ですけどね(笑)。

――歌之助さんは今、学校ではどんなことが流行ってるんですか?

歌之助:最近は舞台に出ているのであまり学校での流行りが分からないんですけど、恋ダンス(ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』のエンディングで流れていたダンス)は結構やってました。そして(福之助を指して)この人が全然違うダンスを一人でやってる(笑)。

福之助:僕もずっと舞台に出てたから恋ダンスを知らなかったんです。で、弟や友達がやっているのを見てダンスを覚えようとしたんですが、全然違う踊りになっているらしくて、めっちゃツッコまれた(笑)。

歌之助:創作ダンスを一人でやってるみたいだったから(笑)。

――見てみたいですね(笑)。橋之助さんは、最近のマイブームはありますか?

橋之助:最近はお休みがないので何かをすることがなかなか難しいんですが、僕は、歌舞伎座の襲名披露が終わってから、部屋の大掃除をしたんです。それで、ベッドを新調して模様替えをしたり、服も全部整理したらすごく居心地がよくて快適で。あと、2ヵ月の襲名披露中に、身だしなみをちゃんとしようって、自分の中の意識がすごく変わったんです。だから、スーツも一度着たらちゃんときれいに整えて、毎日同じものは着ない。襲名のおかげで、街を歩いていて声をかけていただけることがすごく多くなって。無意識のうちに“ちゃんとしなきゃ”っていう意識が芽生えましたね。

福之助:僕もよく母から、襲名披露も始まったんだから、友達と遊びに行くときにも人に見られているという意識は常に持つように、と言われますね。

――橋之助さんはその大掃除で、自分で書いた台本が出てきたんですよね。昔からそういうお芝居ごっこみたいなことをされていたんですね。

橋之助:めちゃくちゃしていましたよ。台本だけじゃなくて、小さい頃に使っていた小道具も大量に出てきたんです。それを(中村)勘九郎の兄の息子二人、七緒八と哲之がちょうど家でお芝居ごっこをしている年齢なので譲りました。台本は読んだら意外とちゃんとしていて、自分でもびっくりしました(笑)。中学生の頃に歴史の授業で習ったことを勝手に脚色して書いているんです。うちの父が『小笠原騒動』や、『霧太郎天狗酒醼』とか、復活の通し狂言を大阪松竹座や南座でやっていたように、いつか、お芝居ごっこでやっていたものを大人になって脚色して上演できたら面白いなと思いましたね。

――すごい!楽しみですね。そして間もなく、大阪松竹座での襲名披露が幕を開けますが、改めて、歌舞伎座の襲名披露を経て、今の心境はいかがですか?

福之助:歌舞伎座での2ヵ月はあっという間で、一日一日がすごく充実していました。11月の千穐楽が終わったときは、ひとまず歌舞伎座が終わって少しホッとしたのですが、すぐ1月公演も始まるので、まだまだ気を引き締めていかないといけないと思いますね。それに襲名披露は(2017年の)12月まで続くので、最後まで気を抜かずに頑張りたいです。

歌之助:僕は東京以外の公演に出ること自体が初めてなので、楽しみな反面、不安な面もありますね。でも歌舞伎座公演が終わった途端に寂しさを感じていたので、またお芝居ができるのはすごくうれしいです。それに今回の大阪松竹座はどれも大役ばかりで、序幕では兄弟3人で一つのお芝居を演らせていただきますし、夜の部は父の『勧進帳』で3人で四天王として出させていただくので、本当に楽しみですね。

橋之助:歌舞伎座での2ヵ月の襲名披露は、本当にあっという間でしたが、やっている間は1日がめちゃくちゃ長くて終わりが見えないというか、本当にここまで1日が長いと思ったのは初めてでした。怒涛でしたね。でも、歌舞伎は毎日同じことをするので、ただただ毎日が流れていくだけではダメだと思い、1日1日成長できるように毎日自分で課題を見つけていました。“昨日はあそこがダメだったから、今日はこうしてみよう”とか。歌舞伎座でいいお役をやらせていただいている以上は、意識的にやっていこう、と。その意識を3人で共有できたかは分かりませんが、僕が見た限りでは10月の初日から11月の千穐楽までで、二人の顔つきがすごく変わったなと思います。特に歌之助はまだ中学3年生で、福之助はちゃんと芝居に出始めてまだ3ヵ月ほどしか経っていないという右も左も分からない状況。それを思うと、弟二人の頑張りはヒシヒシと感じたので、僕も負けていられないなと思いました。次の大阪松竹座では、5役を勤めさせていただくので、正直なところちょっと焦りはあります(笑)。僕が1月にやらせていただくのは、5つとも緊張の糸がマックスに張りつめた状態でやるような役ばかり。それに声を張るお役が多く、気持ち的にも体力的にも不安な点はありますが、お客様の印象に残るお役が多いので、うれしいですし、チャンスだとも思っています。

――福之助さんと歌之助さんはどう挑もうと思われていますか?

福之助:この年では経験できないことをさせてもらっているということを忘れずにやっていきたいなと思っています。序幕の『吉例寿曽我』は今までたくさん観てきた曽我物(祝祭劇)で、そのお役をやらせていただくのはすごく楽しみ。その反面、プレッシャーも感じています。夜の『勧進帳』は、昨年の「平成中村座」で父が弁慶を勤めたときに四天王で出させていただいたのですが、それが僕の中では初めての大人の役。すごくいろんなことを学んだ演目でもありますし、昨年よりもどれだけ変われるかが自分でも楽しみです。また今回は弟も一緒なので、しっかりと演じたい。夜の部の『鶴亀』も、(坂田)藤十郎の叔父様と一緒に出させていただくので、頑張りたいと思います。

歌之助:全部が大きな役なので、ちゃんと気を引き締めて演らなければという気持ちもありますし、すべて初めてのお役なので、プレッシャーも感じています。不安な面も多いんですけど、本当に全部やりたい役をやらせていただくので、楽しみたいなと思います。

――3兄弟で出る舞台は心強いですか?

歌之助:心強いですね。特に『勧進帳』は兄たちが一度演らせていただいているので、すごく頼もしいです。ただ、それに頼りっぱなしでは芸が止まってしまうと父にもよく言われますので、兄を頼りつつ、自分も成長していきたいなと思います。

――橋之助さんは、長男としての気負いみたいなものは感じられていますか?

橋之助:今はまだ、ある程度引っ張りたい気持ちはありますね。まだまだ引っ張れるようなレベルではないんですが、僕も勘九郎の兄や七之助の兄にお稽古してもらったり、引っ張ってもらったように、できることがあれば手助けしたい。逆に僕がダメなときには二人にも助けてもらいますし。どちらかが立ち止まっているときには手を引けるくらいのバランスでやっていきたいなとは思います。襲名披露は来年の12月まで続きますので、その頃には僕が引っ張るのではなく、それぞれが役の取り合いをするくらいになっていればとも思いますし、3年後、4年後くらいにはそれぞれが出し物をできるようになっていればと思います。なので、僕が前を行くわけではなく、それぞれが役者として仲間であり、ライバルでもあり、兄弟でもあるというのが理想の形。みんなでお尻を叩き合って進んでいきたいですね。

――最後に、約1ヵ月の大阪公演で楽しみにされていることを教えてください。

橋之助:僕はお昼ご飯が楽しみで、中央軒の皿うどんかインディアンカレーの2択なんです(笑)。大阪松竹座に出させていただくのは2年ぶりで、久しぶりにその二つのローテーションができるなと思って、今からすごく楽しみです!

福之助:僕も中央軒の皿うどんを食べたいのと、お好み焼きやたこ焼きが好きなので、たくさん食べたいです。

歌之助:僕は初めての大阪なので、とにかくみんなと一緒においしいものをたくさん食べたいですね(笑)。


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取材・文/黒石悦子

 




(2016年12月28日更新)


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中村国生改め四代目中村橋之助

中村宗生改め三代目中村福之助

中村宜生改め四代目中村歌之助

襲名披露

壽初春大歌舞伎

発売中

Pコード:454-737

▼2017年1月2日(月・休)~26日(木)
大阪松竹座

1等席-18000円
2等席-10000円
3等席-6000円

<昼の部 11:00>
『吉例寿曽我』
『梶原平三誉石切』
『恋飛脚大和往来 新口村』

<昼の部 16:00>
『鶴亀』
『襲名披露 口上』
『勧進帳』
『雁のたより』

[出演]中村芝翫、中村橋之助、中村福之助、中村歌之助/坂田藤十郎、片岡仁左衛門 他

※貸切=1/4(水)16:00。
※日時・席種により取り扱いのない場合あり。
※4歳以上は有料。

[問]大阪松竹座
[TEL]06-6214-2211

大阪松竹座
http://www.shochiku.co.jp/play/shochikuza/

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