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「僕らが面白いと思うものをどっしりと真ん中に」
かもめんたるが“ハードボイルド”をテーマに
新作ライブを敢行!

自意識や二面性など、人間が抱えるダークなポイントを笑いに変えるかもめんたる。昨年の『抜旗根生~ある兄弟の物語~』からは、ヨーロッパ企画の作・演出である上田誠が構成協力として参加し、“よりよい形”で笑いを生み出す彼らが、新作『なのに、ハードボイルド』で3回目の大阪公演を果たす。公演を前に、岩崎う大、槙尾ユウスケのふたりに話を聞いた。

――昨年の大阪公演の手応えはいかがでしたか?

岩崎:前回、東京、大阪、名古屋でやった中で、大阪公演が一番盛り上がった気がします。やっていて、大阪のお客さんとの相性がすごくいいなと思うんです。笑うのが上手だなって思います。

槙尾:いいポイントで笑ってくださるというか。フリとかでウケちゃうと肝心なところがウケなくなっちゃったりとかするんですよ。大阪の客席は、聞くところは聞いて、笑うところはドンッと笑ってくれる気がします。

岩崎:ウケてると、お客さんが言ってほしいことを自然とアドリブでできたりするんですよ(笑)。お客さんの中に浮いてきた感情とかをキャッチして、それを言ったらウケるみたいな。だから、大阪だけのアドリブとかがあったりするんですよね。

――求められていることが自然とわかるんですね。

岩崎:はい(笑)。僕の手柄じゃない、お客さんの手柄ともいうべきアドリブが生まれたりしますね。初めて大阪でライブをしたときは、お笑いのメッカでやるプレッシャーみたいなものを感じていたんですけど、今は逆に楽しんでやれていますね。

槙尾:“あ、これ伝わるんだ~!”って思うことが結構ありますね。

――今回は『なのに、ハードボイルド』というタイトルで、どんな内容を考えられているんですか?

岩崎:お笑いのライブタイトルなので、それにすごく沿ってるわけではないんですけど、全体をハードボイルドの雰囲気にして。ハードボイルドって一種の生き様みたいな感じがあると思うんですよね。僕らのコントは、キャラのバックグラウンドも結構大事にしてたりするので、そういう意味で、ハードボイルドというのは結構いじりやすい題材なんですよね。僕が作る笑いとの相性は意外といいのかなって思っていますね。

槙尾:基本的に、僕らは毎回オムニバス形式でコントを何本もやるので、一つひとつのコントはそういうのを意識せずに笑える内容にもなっていて。全体として、ハードボイルドの雰囲気のライブになっている感じです。

――ハードボイルドをテーマにしたのは?

岩崎:毎回似たようなテーマだと面白くないので、意識的に変えるようにしているんですよ。僕らは暗いことをネタにしがちなので、今まではなるべく楽し気なパッケージに包むということは気にしてたんですけど、落ち着いている雰囲気とか、ハードボイルドなところは手を出してこなかったので、やってみようかなと。

――ハードボイルドといえば渋いイメージがありますが、どんなキャラクターが登場するんですか?

岩崎:探偵だとか、そういう分かりやすいハードボイルドさみたいなのは入ってたりしますね。あと、ハードボイルドというと、“浮ついていない”ようなイメージもあると思うんです。そういう意味で、僕らが面白いと思うものをどっしりとど真ん中に置いていくということはありますね。“これがかもめんたるの真骨頂だ!”みたいなものをやっていきたいとも思っています。

――前回から、ヨーロッパ企画の上田誠さんが構成協力という形で入られていますよね。

岩崎:構成協力という肩書きではあるんですけど、関わり合い方としては、いろいろ相談に乗ってくれたり、ライブの構成も、1本1本のネタの内容も。ネタが生まれるところからだったり、台本になってからの相談だったり。前回公演でいうと、“ドッヂボールで外野に出るときに、自意識が高すぎてどういう顔をしていいかわからない人”のネタがあったんですよ。そのネタを考えるときに、実際にドッヂボールをやりながら話す方がいいのか、それとも、会社のドッヂボール大会なので、大会前日にオフィスで話しているのがいいのかとか、そんなところでの吟味を一緒にしていただいたり。オヤジギャグを言うふたりのおっさんがたまたま出会った場合にどんなことが起きるのかというのを、オヤジギャグじゃなくて、例えばエピソードトークの取り合いでもいいんじゃないかとか。そういうことを色々と相談して、“こっちも面白いけど、この方がそもそものテーマになっているかもしれないですね”って、元々僕の中にあるやりたいことを表現するのに最適なものだったり、ネタとしてのバランスだったりを一緒に考えていく感じです。上田さんから“前回よりいいペースですね”って言ってもらえるだけで、すごく安心感がありますね。

――大体何本くらいのネタを?

岩崎:8本です。上田さんから“コント一つひとつの内容も前回以上にパワーアップしている”と言っていただけたので、本番に向けて精度を上げていきたいですね。

――ネタの中で、新しい挑戦はあるんですか?

岩崎:ネタ一つひとつに関しては、毎回新しいキャラをやるっていうのがあるので、このライブでも何個か新しいキャラを作っています。それがエース級のキャラに育ってくれたらなというのがありますね。あとは細かいボケでもあまり人がやっていないようなボケ方も取り入れていますし、このライブ全体を通して言えば“ハードボイルド”をどこまで分解して、今までのハードボイルドという言葉にどれだけ違う色味を与えることができるかですね。お客さんが観終わった後に、ハードボイルドに対しての考え方が変わったりすれば面白いかなと思います。

――今回のネタを聞いて、槇尾さんはどう感じました?

槙尾:今までと比べてすごく分かりやすくなった要素もあるし、その分、深みが増していたりもして。だからすごく面白いし、読んですぐに、たくさんの人が笑ってくれそうなイメージが浮かびましたね。それは上田さんのアドバイスがあってこそのもので、昨年の関わり合いを経て、今回すごく上田さんとう大さんの共同作業がうまくいっているのかなという感じはありましたね。

――上田さんと一緒にやることで新しい発見がたくさんありそうですね。

岩崎:ありますね。というのも、広い範囲の人に対して伝わるか伝わらないかで考えたときに、“そこまで広い範囲の人には伝わらないかな、単独ライブでやるにしても狭いかな”って思いながら相談すると、“面白いですね。微妙にこう変えたらより伝わりやすいんじゃないですか”って言ってくれたりするので。それまで自分の中で無理かなと思って手を伸ばさなかったところも、上田さんに相談することで自然にやれてる気がしますね。

――なるほど。槙尾さんも何かチャレンジしていることは?

槙尾:ハードボイルドな女性…ですかね(笑)。

岩崎:オープニングはハードボイルドな男女から始まるので。

槙尾:ほかのコントでもぶっとんだキャラとか、いろんなキャラクターが出てきますね。

――ハードボイルドな女性って新しいキャラクターですよね(笑)。

槙尾:そうですね(笑)。新境地を開拓していきたいですね。

岩崎:でもちょっとステレオタイプな感じで、簡単なところでやってる感があったので。もうちょっとキャラに向き合ってもらって創り込んでもらいたい。

槙尾:そうかもしれない(笑)。本番までにもっと向き合います。

岩崎:あまりやりすぎて、人が持っていないイメージのハードボイルドな女がリアルに登場しても本末転倒なことになっちゃうので、分かりやすいハードボイルドでいいとは思うんですけどね。

――周りも納得させつつ、そのイメージを超えるものを創らないといけないんですね。ところで、昨年は「劇団かもめんたる」も立ち上げられました。

岩崎:ずっと、単独ライブを年に2回やっていたんですけど、そんなにペースが多いと希少価値がないのかなと思い始めてきて。単独ライブは年に1回やる、で、もう1回やっていた分を新たに「劇団かもめんたる」の公演にする。劇団として大きくなれば、単独ライブももっと多くの人に観ていただけるようになるだろうし。劇団では1時間半~2時間弱くらいの一つのお芝居をやるんですよ。第1回はヨーロッパ企画の石田剛太さんとかにも出ていただき、9人でお芝居をしまして。演劇としての活動を「劇団かもめんたる」でしていきながら、ゆくゆくは、演劇を観るお客さんに単独ライブにも足を運んでいただける流れができたらいいかな、と。作品作りとしては、単独ライブで表現しないような長いお話もできるので。“お笑いとは呼べないけど面白い”ということを劇団でやって作品を色分けしていき、お互いが太い2本柱になったら面白いなって思いますね。

――劇団を始めたことでお笑いライブにいい影響があったりも?

岩崎:意識的にはしていないんですけど、何かしらの結果を及ぼしているとは思うんですよね。長いお話を作るスキルみたいなのは上がっていると思うので。僕ら、ラストコントは長めのネタをやるので、そのときは、前より堂々とやれるんじゃないかなとか(笑)。

――自信につながっている感じですね。“昨年はふがいない思いをして、コントに対してハングリーな気持ちが湧き上がってきた”というコメントも見ましたが…。

岩崎:2015年の「キングオブコント」で、準決勝で敗退しちゃったんですよ。ネタ番組にもなかなか出られなくて、テレビに出る回数も減ったりして、苦渋をなめるというのがありまして。やっぱりどこかで「キングオブコント」に落ちるまでは、あまり恥ずかしいところを見せられないという思いもあったと思うんですよね。だけど、それを機にそういうのを取っ払いました。自分が今やりたいことをもっと正直にやった方が、強いネタができるんじゃないかなと思ってやっていますね。結果的に、上田さんとか槇尾からも、“前より面白くなっている”という評価をいただいているので、ぜひそれをお客さんにも観ていただきたいと思いますね。ちょっと腹を括った感じがあります。

――吹っ切れてパワーアップしたかもめんたるさん、すごく楽しみです。

槙尾:大阪は3回目ですし、なんとなく大阪のお客さんは僕らのコントを笑ってくださるといういいイメージもできていて。僕らも大阪に来るのが楽しみですし、今回も間違いなく楽しんでいただける内容になっていると思うので、みなさんも楽しみにしていただきたいですね。

岩崎:本当に、自信作を持って大阪に来れると思っています。来ていただけたら、楽しい時間をお約束します。

 

取材・文:黒石悦子




(2016年3月 1日更新)


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かもめんたる●1980年生まれ広島県出身の槙尾ユウスケ(写真左)、1978年生まれ東京都出身の岩崎う大(写真右)のコンビ。早稲田大学のお笑いサークルメンバーで構成された5人組コントグループWAGE解散後、2007年10月に劇団イワサキマキオを結成。2010年10月より「かもめんたる」のコンビ名で活動をスタートする。「キングオブコント2012」決勝で3位の成績を残し、翌年、念願の王座に輝いた実力者。ナイロン100℃『社長吸血記』、表現・さわやか『TanPenChu』など、演劇公演にも客演で参加。NHK Eテ

かもめんたる第17回単独ライブ
「なのに、ハードボイルド」

▼3月5日(土) 18:30

HEP HALL

前売-3300円

当日-3800円

※全席指定。

[出演]かもめんたる

※終演後、アフタートークあり。未就学児童は入場不可。

[問]サウンドクリエーター
[TEL]06-6357-4400