ホーム > インタビュー&レポート > 時空を超えた手紙のやり取りが人の心に温もりを与える 東野圭吾原作の舞台『ナミヤ雑貨店の奇蹟』がシアター BRAVA!最後のステージに登場! 主役・敦也を演じる キャラメルボックス・多田直人にインタビュー!
--多田さんは、2013年の初演でも敦也役でした。出演は2度目になりますが、作品に対してどういうイメージをお持ちですか?
初演時は、稽古前に原作を読みました。東野さんといえばミステリーというイメージがあるのですが、こういうハートウォーミングな物語も書かれるんだという新鮮さと、巧みな構成力にものすごく驚き、感銘を受けた覚えがあります。稽古が始まってからは「やっぱり原作が面白いから大丈夫だよね」という後ろ盾みたいな安心感、支えみたいなものを感じていましたね。しかも東野さんの作品ですから。とはいえ、1ヶ月も稽古をしていると、だんだんみんな悩んで、壁にぶち当たったりして、迷いみたいなものも出てくるわけです。そういうことを感じて、乗り越えながら初日を迎えるわけですが、初日を迎えて作品力の偉大さを思い知りました。そして、「やっぱりこの作品はおもしろいよね、そうだよね、お客さんはここで笑うよね、ここで感動するよね」とか、答え合わせをしていくような感覚でしたね。
--前回、お客様の感想などで印象に残っているものはありますか?
今回どうなるか分からないですけど、初演ではナミヤ雑貨店をどすんと舞台上に乗っけたんです。抽象的な装置じゃなくて、6畳1間みたいな店の奥を再現して作ったのが驚きとしてお客様にはあったんじゃないかな。あと、この作品は、人じゃなくて手紙が時を越えてやり取りされる、しかもその内容は悩み相談。僕は、そこがこの作品の本当に素晴らしいアイデアだなと思うのですが、皆さん、多かれ少なかれ悩みを抱えながら世の中を生きていると思うので、人の悩みに触れることで何か思わぬ形で自分の悩みが解決されたりとか、舞台を観てお客様は「あ、なるほどな」とか、「こういう考え方もあるんだ。私も明日から頑張ってみようかな」とか思われるのではないかと。人の悩みに寄り添えた、とても意義のある作品になっていたんじゃないでしょうか。
--今回、3人組のキャスティングに新しく松田凌さん、鮎川太陽さんが入ります。多田さんは同じ役を3年ぶり2回目に務められますが、前回を踏まえてのプランはありますか?
まず松田くんと鮎川くんに飲まれないようにということですかね(笑)。いや、本当、若くて活きいい感じがして、油断していると「多田直人はどこに出ていたんだ」と、飲まれてしまうんじゃないかと思うわけです。「負けないぞ」と思うと同時に、3人のチームワークも必要で。前回はみんな(キャラメルボックスの)劇団員だったので、自ずとチームワークができていましたが、今回はほぼ初めましての状態からで。ただ、そういうことはお客様には関係ないので、チームワークをきちんと作っていきたいと思いますし、松田くん、鮎川くんの良さを引き出したいなと思います。年上の役者として、それぐらいのことは思ってもいいなじゃないかと(笑)。僕は同じ作品で同じ役を再演するのがまだ1回しかなくて、1回目は『無伴奏ソナタ』という作品でした。ただ、それはちょっと特殊で、それも2年ぶりの再演だったのですが、初演と全く同じメンバーでできたんですね。だから、初演の続きみたいな感じで稽古が始まって、より細かいところまで詰めて、より完成度を高めて再演に臨めた。そういう意味では、上がっていたハードルをきちんと越えられたような感覚があったんですが、今回は僕以外、がらっとメンバーが変わるので、ハードルは初演から上がっているのかもしれないですけど、飛び越える以外の越え方をしても面白がれるんじゃないかなという、そういう楽しみはあります。
--今回、BRAVA!プロデュース公演で、多田さん、最終公演の主役です!
……そうなんですよ!(笑)。しかも、名前も一番前にあって、こうやって宣伝にも来させていただいて…。…俺でいいのか!?っていうのもあるんですけど、期待にはしっかり応えなくちゃいけないと思っています。前回とキャストが変わっていますが、僕以外の劇団員が6人出るので、それがすごく心強いです。成井の演出を知っている人間が僕以外6人いる。新しい人も6人いる。このバランスがすごく良く作用するんじゃないかなと思っています。決定版にたがわない、完成度の高いものは作れるんじゃないかと思います。
--時代と時代が飛ぶので、原作を読まれた方はそれをどう表現するのかなって思われているのでは?
その辺も初演のときに稽古するにあたって割と苦労した点ではありました。「今どうなってんだ」「時間がどうなってんだ? この手紙はどこから来たんだ?」という説明台詞みたいなものが多く出てくる中で、ただの説明台詞ではないということを示すために、何か動きを加えてみたり、何かに喩えてみたり、そういうところを楽しく見せるどうしたらいいんだろうなと、他の二人と考えた覚えがありますね。
--とはいえ、タイムトラベルものは得意ではないですか?
タイムトラベルといえばキャラメルボックスでおなじみなんですけども(笑)、この作品は手紙がタイムスリップしてくるというところが見どころですよね。また、東野さんはさすがというか、ただただ実直に演じていれば、すっと1本通るような気持ちよさが役を作る上であって。そこも含めて作品力が素晴らしいなと思いました。
--先に本を読んだ方がいいのか、後から読む方がいいのか…。
そうですね…、これはいつも原作モノをやるときに論議する点ではあるのですが、この作品はどちらでもいいんじゃないかな。『ナミヤ雑貨店の奇蹟』はオムニバスっぽくなっていて、それがさーっと1つのストーリーにまとまっていくっていう気持ちよさがあるんです。ただ、時間の関係上、全部は見せていなくて。なので、読んだ方は「あ、あのエピソードをここにねじ込んできたのかな」という楽しみ方できると思います。読んでいない方は、舞台を観た後に「他にもこんなエピソードがあったんだ」という楽しみがあると思います。
--原作を読まれて、どんな感想を抱かれましたか?
気持ちよさを感じましたね。「ナミヤさんでのこの回答がこっちに繋がって、コソ泥3人がひねり出した回答がこう作用していくんだ。そして過去、未来が変わっていくんだ」っていう。それから一つに収束していく感覚が痛快でした。原作モノを舞台化する楽しみの一つは、1人で読んでいたものがキャストの人数分の脳で読むこと。「あなたはここでこういうふうに読むんだ」「あなたはこの役をこういうふうに演じるのね」とか、自分では考えなかった『ナミヤ雑貨店の奇蹟』という物語がどんどん広がっていく感覚がありました。それが稽古中からすごく楽しくて。僕がそんなに感動しなかった部分も、隣の人はすごく感動するかもしれないとか、そういうことを見つけられる楽しさもあって。なので、お客様の感動するポイントもそれぞれだと思うけど、小説だと感じられなかった部分が舞台で改めて感じることも往々にしてあるんじゃないかと思います。
--初演をご覧になった方も、今回は観にこられた方がいいですね。
絶対来た方がいいと思います! やっぱり初演を観た人は初演を観たからこその楽しみ方できるので。それは再演を観るときの特権だと思います。絶対違いますしね。変な話、「あれ? 初演の方が面白かった?」って思われてもいいんです。いや、よくないですけど(笑)、僕はそれが演劇だと思います。もちろん僕たちも初演を超える勢いで頑張ります。そういう楽しみ方ができるのは初演を観た方だけなので、ぜひ想い出を更新してもらえたらと思います! もちろん、今回が初めてという方もぜひ来てください!
(2016年3月23日更新)
発売中
Pコード:448-928
▼5月6日(金)19:00
▼5月7日(土)13:00/17:00
▼5月8日(日)13:00
シアターBRAVA!
S席-7000円
S席(学生料金)-4000円
A席-6000円
A席(学生料金)-4000円
[原作]東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川文庫刊)
[脚本・演出]成井豊
[出演]多田直人/松田凌/鮎川太陽/菊地美香/鯨井康介/石橋徹郎/大森美紀子/岡内美喜子/左東広之/小林春世/金城あさみ/近藤利紘/川原和久
※未就学児童は入場不可。学生席は入場時に学生証の提示が必要となります。(小学生以下は提示不要)
[問]シアターBRAVA!
[TEL]06-6946-2260
シアターBRAVA!
http://theaterbrava.com/