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「生まれ故郷の関西で全力で輝きを放ちます!」
コメディエンヌ久本雅美が
「初笑い 松竹新喜劇 新春お年玉公演」で
京都・南座に登場!

2016年1月1日、50年ぶりに松竹新喜劇が南座の初春公演にお目見えする。夫婦愛を描いた『えくぼ』と、勘違いが巻き起こす騒動を描いたまげもの喜劇『浪花の夢 宝の入船』の二演目を上演。久本雅美が3度目の松竹新喜劇出演を果たし、『えくぼ』では惚れたホステスが忘れられない夫(渋谷天外)に“顔を見て食事をすると飯がまずくなる”など言われながらも、健気に仕事に励む嫁、秋子を勤める。本公演でもコメディエンヌの本領発揮に期待大、「初笑い 松竹新喜劇 新春お年玉公演」に向けての意気込みを聞いた。

--今回で3回目の松竹新喜劇ご出演ですが、1回目はいかがでしたか?
 
小さいときから見ていた松竹新喜劇という歴史のある劇団は、WAHAHA本舗という劇団とは、正直、真逆の笑いですよね。なので、お話をいただいたときは、すごいプレッシャーでした。でも、お話をいただく中で、意味のないことはないんやろうなと思って飛び込ませていただいたら、まあ本当にすばらしいお芝居で。泣いて笑って、笑って泣いてという。本当に喜劇やなぁっていうことを感動させていただきました。また、皆さんものすごく温かくて、新参者の私を受け入れてくださって。もちろん台本に沿ってではありますが、私の自由な発想を受け止めてくれるんです。役柄に沿った私らしい、私の味が出るようなものに関しては、受け止めてくれはったんですね。まずそれに驚きました。
 
--では、最初から久本さんの個性も汲まれたものになっていたんでね。

正直、大阪人でありながら、昔の大阪の言葉の中には分からないものもあるんです。「これ、どういう意味ですか?」とか、「これ、どういうような言い方するんですか?」っていうくらいのところから始まるくらい。でも現代劇なら現代風に変えていいよとおっしゃっていただいて。ストーリーや役柄から外れない限りはいいよということで、1回目も、「これいいですか、あれいいですか」っていうことをほとんど受け入れていただきました。それをまたちゃんと返してくれる。さすが長年やってこられた皆さんでしたね。
 
--1回目はそんな感じで取り組まれたのですね。では、2回目はどうでしたか?
 
2回目に出演させていただいた演目は『お祭り提灯』という十八番の演目。私も『お祭り提灯』が大好きで、1回目のときに自分の出番が終わって観て帰ったくらい。最後のどんでん返し最高やなって。その『お祭り提灯』の金貸しの役だったんです。何十年も上演されてきた中で、その役は歴代男性なんですよね。女性は松竹新喜劇の長い歴史の中で私が二人目だったみたいで。それでいて前回は坂東彌十郎さんがやってはっているのを見ていたので、「いや、無理無理」と。そんな重責を担うようなことは無理やと思って胃が痛くなるくらいだったんですけど、そこはもう自分の中にないものは出ないですから、開き直って自分らしい金貸しのお銀を楽しんで演じるしかないなと。ただ、金貸しのお銀は意地悪ですけど、意地悪の中に“このおばあちゃん、お金がめちゃめちゃ好きやねんな。お金がめちゃめちゃ好きな根底には何か合ったはずや“というような、そういうチャーミングさをお届けできたらいいなという思いでお稽古もさせていたただきました。
 
--その時のお稽古場はいかがでしたか?

ああでもない、こうでもないとやりながら本番をさせていただいて。(渋谷)天外座長も稽古中に役が固まってくると、だんだんよくなったよと言っていただいて、本当に最後は楽しんでやることできました。それに、天外兄さんが「外の人が来たっていうことは、外の風に触れなあかんのやし、その人の持っているものを発揮してもらって松竹新喜劇でうまくバランスをとっていくことが大事や」って言ってくれはって、本当に嬉しかったです。
 
--それは嬉しいお言葉ですね。
 
そうやって守っていただいた中で思う存分させていただいたのですが、非常に嬉しかったのは井上惠美子姉さんが「本当にあなたのお銀は最高よ」と言ってくださったことですね。小島慶四郎さんという、昔から見ていた大好きな、藤山寛美さんと丁々発止する、本当に大好きな役者さんも、井上姉さんも、本番中に袖で見てくださっていたんですね。それを若手の男の子が「姉さん、井上さんと慶四郎さんが袖で見て、手叩いて喜んではりましたよ」って言ってくれて、すっごい嬉しかったですね。本当に、松竹新喜劇でものすごく勉強させていただいています。天外兄さんがダメ出しで、「喜劇やからリアルはええけど、シリアスはあかんで」っておっしゃったんです。その言葉を聞いて、松竹新喜劇に出させてもらってよかったと思いましたね。もちろんWAHAHA本舗みたいな何でもありの過激な舞台をやり続けていくっていうのもありますが、年齢を経てくると喜劇のお芝居をやりたくなるっていうか、じっくり学びたくなる。そういうちょうどいいときに、喜劇にずっとまい進されている松竹新喜劇という伝統のある劇団で学ばせていただけるのは宝やなと思います。
 
--では、久本さんの長いキャリアの中でも、すごく大きな節目になったのでは。

何というか、この経験は、私が喜劇をやり続けていく上で、多分年齢を経れば経るほど実感するんでしょうね。本当にあのタイミングで松竹さんにお声かけていただいて、舞台に立たせていただいて、喜劇というものを自分の中で改めて考えさせてもらった。その上でありがたくも舞台で微力ながらも力をつけさせていただいたということを年齢を経れば経るほど思ってくるんでしょうね。。
 
--小さいときに松竹新喜劇をご覧になっていたときは、どんな印象でしたか?

寛美さんの天才的なお芝居にみんながお腹を抱えて笑うわけじゃないですか。それに受け答えする、すばらしい脇の重鎮の方たちの力は半端やないと思いますけども、小さいときはそんなん分かりませんから、おもろいなってだけで笑っている。自分がこの世界に入って、自分なりにやってきた中で、改めて喜劇の難しさも、楽しさも、学ばせてもらっていると実感しますね。
 
--難しさというのは?

そもそもWAHAHA本舗は、自分たちの芝居は自分たちで台本を書くので、自分のキャラを存分に発揮するために死力を尽くすんです。でも、普通は台本の役をどう演じていくか。もちろん、私もプロデュース公演やドラマなど出させてもらっていますから、やったことないわけではないんです。だけど改めて喜劇の舞台で自分らしく演じていく、しかもWAHAHA本舗のファンの方ではない、アウェイなところで皆さんにどう喜んでもらえるのか、どう楽しんでもらえるのか、この役を通してどうこの思いを伝えていくのかっていうのは、ほんま毎日考えてますね。
 
--松竹新喜劇は本当によくできてますよね。
 
……そうやねん。本がよ~できてるなぁって思うよね~。もうすごいですよね。見終わって誰も嫌な気にならないという、本当に喜劇中の喜劇ですよ。みんな、「ああ、おもろかったなぁ~」って。ちょっと人に優しくしようかなって、ええ人になろうっていうような、本当に喜劇の王者ですよね。残るんですよ、松竹新喜劇って。人として優しくなったり、温かくなったり、豊かになったりというね。人間の心を振わせる、機微を教えてくれるというか。昔は娯楽が寄席とか舞台だけでしたから、そういった意味では昔から本当にみんなに元気と希望を与えていはったんやろうと思います。

--そして今回、3回目のご出演で。初めての関西での公演になりますね。
 
しかも南座では50年ぶりの「松竹新喜劇 新春公演」に出させていただいて、本当に光栄です。『えくぼ』という演目で大きな役をいただいているわけですけども、これはまた難しいなぁ…(笑)。
 
--『えくぼ』は秋子さんのお役で。
 
旦那に邪険に扱われながら、働き者の役で。その旦那に甘えるところが笑いのツボなんですけど、これがなかなか、またどないしようかと(笑)。

--秋子さんは、テレビで拝見する久本さんのイメージとは、私の中ではちょっと遠い女性という感じがします。
 
まず、言い方が悪いですけど、ぶっさいくな役をやったことがないんですよ(笑)。テレビでぶっさいくとかいじられるのはありますけども(笑)。秋子さんは何か嫌なことを言われても“しゃあないな~”って言いながら暮らしてますよね。女心としては分からんことはないんです。それをどうやって表現するかですね。旦那に思い切って甘えるシーンも、あまりやりすぎてもダメやと思いますし、かといって普通にやっているのではつまんない。どうやって弾けたらいいのかなっていうのが、今、私の中で課題としてあります。だけどそこは絶対に大事なシーンで、甘えることによって彼女の不器用さやかわいらしさを表現せなあかんので、やり過ぎもせず、やらなさ過ぎもせず、いい頃合を見つけていった上で、何ともいえないチャーミングな笑いにもっていけたらいいなと思ってます。
 
--普段の舞台でも、いい頃合を見つけられたら気持ちいいですか?
 
それはやっぱり気持ちいいよね。それは何かいうと、お客様が喜んでくださっているという、笑いの大きさでしょうね。笑いが大きければ大きいほど伝わっているわけですから。げらげら笑う笑いと、くすっと笑う笑いってあると思うんです。その中での空気感ってあるので、やっていて気持ちよければ、くすくす笑いも、大きな笑いも、あ、伝わってるなって。また日によってお客様の雰囲気も違うし、こっちの体調とかで間合いもぎくしゃくするときもあるから、本当に1日1日がゼロからのスタート、真剣勝負ですよね。
 
--1日1日、その場に集まっていらっしゃる方によって違ってくる。
 
違ってきます。毎回ウケているところが、ほとんど外さないけど、ある日突然、全然笑いがこないときだってありますからね。え!? なんでや!って思いますよ。その時の空気とか、言い方とか、間合いとかがちょっとでも違ったら、あれ?ってなりますよ。だから怖いんです、舞台は。だから緊張するんです。
 
--いろんなお仕事の中でそういう緊張感が刺激になりますか。
 
面白いですね~。舞台をやっているときほど、健康に気遣うことはないですよ。普段なんかどうでもええわ~ってやってんのに、舞台に入る前後、最中はアホみたいに意識しますよ(笑)。加湿器はちゃんとする、お酒もほどほどにする、声のことを心配して、喉が痛くなったらお酒なんかほとんど飲まない。飲まないと気が済まないので1、2杯は飲みますけど、えらいもんで「白湯ください」とか言ってね(笑)。

--話は戻りますが、松竹新喜劇の俳優さん方とご一緒にされて、いかがですか?

皆さんすばらしいです。プロです。(藤山)扇治郎さんは(藤山寛美の)お孫さんということで、皆さんの期待の星ですし、また背負っていく人間やと思います。扇ちゃんは本当に人柄がいい。あの子は愛される人間ですね。かわいらしい天然ちゃんで。その天然ちゃんがほっとけないくらい、かわいらしい人間性ですね。誠実でまじめですしね。どんどん芝居が上手になってきてはりますね、本当に。重鎮の皆様もお年を召しているのに、何でそんなに元気なん!?っていうくらいお元気ですし、笑いに対して貪欲です。日々、笑かしたろうっていう思いに満ち溢れてますから、感動します。例えば、曽我廼家文童(そがのや・ぶんどう)さんとお稽古場で初めて絡ませてもらったときは、曽我廼家寛太郎(そがのや・かんたろう)さんと夫婦役で。私が「もう社長~」とか何とか言うてるときに、私が押されて文童さんの股間にどーんと頭をうずめたんですよ。そんなんしてもばっちり受け止めてくれはりましたね。「わ~、えらいパワフルな奥さんでんな~」って。普通やったら、うわ!ってなるじゃないですか。わーって来たものに対して、ボーンと応えるという、もう、すごいなと思いましたね。懐が深いというか、笑いに対する引き出しが半端ないですね。稽古場でアドリブで違うことしても、何やったって受け止めて返しはりますから。すごいなって思いますね。小島慶四郎さんも、存在だけで笑ってまうし、泣いてしまいます。『お祭り提灯』のとき、小島さんが屑屋さんで、「くず、くず、人間のくず」って私に対して言うときがあるんですけど、それでも毎日言い方をああしてみようか、こうしてみようかって。大きく変えるわけじゃないですけど、言い方をちょっと変えてみたりしてはって、もう勉強になりますよ。これでよしとしていない皆さんの、どこまでも笑いに対する情熱と貪欲さ、そして引き出しの多さは、こうならなあかんなって思いますね。
 
--座長の天外さんを中心に、日々皆さん貪欲に。

天外兄さんだって毎日、お客さんによって言い方を変えはるしね。何よりも私に「自由にしてええよ」って言うてくれはる。松竹新喜劇の雰囲気とか、持っているものに関して外れたら、あかんことはあかんともちろん言わはりますけど、それ以外は全部受け止めてくれはりますね。それこそ、むしろもっと好きにせえくらいの。それでいて、ちょっと外れたら「それはやりすぎやろ、そこは止めとこか」って言うてくれはるので、うまいことさじ加減を教えていただきながら、本当に自由にさせてもらってますね。こうあらねばならいという劇団かと思っていたら、そうじゃなかったということが本当にびっくりしました。これは稽古場での丁々発止になりますけど。
 
--そうして練られたものが舞台にお目見えするんですね。稽古場では皆さんがいろんなものをぶつけあって、受け止めあって。
 
そうです。だからここどないしたろうかなって考えてやったことにOK出たら嬉しいですね。
 
--では最後に、関西の皆様に一言お願いいたします。
 
大阪生まれの大阪育ちが東京に行って喜劇をやってきたわけですけど、その中で本当に皆様に育てていただきながら、いよいよ私の生まれ故郷の関西で、しかも小さいときから見ていた憧れの、伝統のある松竹新喜劇で。久本はどないしてやるのかと思っていただいていると思いますので、そのご期待に絶対に沿えられるように面白いものをお見せします。一生懸命がんばりますので、ぜひ足を運んでいただきたいと思います。「久本はいろいろやってきたけど、よう頑張っとるやん」と、「松竹でもこうやって大事にしてもらってがんばっとるやん。これからまた楽しみやで」って言われるような、そういう輝きが放てるように全身で頑張りたいと思います! 
 



(2015年12月28日更新)


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松竹新喜劇
初笑い 新春お年玉公演
「えくぼ」
「浪花の夢 宝の入船」

発売中 Pコード:446-475

▼1月1日(金・祝)13:00
▼1月2日(土)11:00/15:30
▼1月3日(日)11:00/15:30
▼1月4日(月)11:00/15:30
▼1月5日(火)11:00/15:30
▼1月6日(水)11:00/15:30
▼1月7日(木)11:00/15:30

南座

1等席-10000円
2等席-5000円
3等席-3000円

[出演]渋谷天外/藤山扇治郎/高田次郎/小島慶四郎/井上惠美子/曽我廼家玉太呂/曽我廼家八十吉/久本雅美/曽我廼家文童/大津嶺子/芦屋小雁/中川雅夫/室龍規

※特別席は取扱いなし。未就学児童は入場不可。

[問]南座
[TEL]075-561-1155

南座
http://www.shochiku.co.jp/play/minamiza/

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