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森鷗外の名作「高瀬舟」「山椒大夫」を朗読劇で上演!
『極上文學』大阪公演を直前に控える村田 充、
藤原祐規、椎名鯛造に作品への思いを聞いた

日本の名作を朗読、パフォーマンス、音楽を用いて立体的に描く『極上文學』。最新公演は森鷗外の「高瀬舟・山椒大夫」を上演する。弟殺しの罪でとらわれ、護送される兄と、罪人を護送する役人の対比が様々な事柄を問いかける「高瀬舟」、身売りされた姉・安寿と弟・厨子王の行く末を描いた「山椒大夫」。「高瀬舟」の兄・喜助を演じる村田 充、護送舟の役人・庄兵衛を演じる藤原祐規、そして同作の弟と「山椒大夫」の厨子王を演じる椎名鯛造に、作品や舞台『極上文學』へ挑む心境を聞いた。

--まずは「高瀬舟」「山椒大夫」という作品そのもののご感想をお聞かせください。

村田 充(以下、村田)学生のときと今では印象が違うなと思いました。あと、僕らが読んでいるのは台本なので(原作とは)違うものとして感じられるというか。感受性は子どもの頃の方が高かったと思うんですけど、いろいろ経験してきた分、作品の世界観を感じることができたかなと思います。

--学生の頃と、どう違いますか?

村田 言葉から色や景色を感じたりすることはなかったんですけど、今回台本として読んだとき、景色がすごく目に浮かびました。その差が一番大きいかもしれないですね。
 
--台本として読むというのは、どういう感覚なんですか?
 
村田 『極上文學』の台本はちょっと特殊でして、普通の演劇ではあまりやらない“ト書きを読む”というものもあります。それがナレーションにもなっているんですけど、物語の語り手としてストーリーをちゃんとお伝えすると同時に役としての演技をやっていくという、難しい手法をとっているところです。
 
--なるほど。続いて藤原さん、椎名さんのご感想をお願いします。
 
藤原祐規(以下、藤原) 僕は原作を読んだことがなくて台本から入りました。今回、『極上文學』は3回目の参加になるんですが、僕の中のイメージでは文学って分かりにくいというか、全部が全部、全員が理解できるものではないと思ったいたんですが、今回の作品に関しては老若男女関係なく、どこかに共感する部分があるなと思います。
 
椎名鯛造(以下、椎名) 台本を読んでから原作を読むと、見えてくるものが全然違って。台本にすると省かれている表現もあって、“ここは体で表現して分かりやすく伝えた方がいいな”とか、そういうことが見えてきて、すごく不思議な感じで読みました。2作品ともそんなにハッピーな作品ではないですが、そこでただ暗くなるんじゃなくて、明日に向かう勇気なんかをどういうふうに演劇として読んで、伝えるかということはすごく感じました。

--東京公演を終えられての心境はいかがですか?

村田 ありがたいことにすごく好評を得ることができまして、この人気シリーズの一つの作品として恥じないものができているのかなと思いました。
 
藤原 今回、僕は、そうがっつりと稽古ができたわけじゃなくて、本番をやりながら“こっちなのかな”“あっちなのかな”と試行錯誤を繰り返してきました。キャストも毎回変わるので、毎回全力でやってますけど、ようやくいろんなことが一致してきました。大阪公演では、また東京公演とは違う色が出せるんじゃないかなと思って、そこを頑張ってお客さんに伝えられたらいいなと思います。
 
椎名 藤原さんもおっしゃってましたけど、東京公演も実際に幕が開いて分かることが非常に多くて。でもやっていくうちにそれが固まりつつあって。ただ、マルチキャスティングなので、大阪でもまた感じていないことだったりとか、受けきれなかった台詞だとか、新しい刺激があるんだろうなと思います。それは、僕自身も楽しみです。相手の台詞を受けることによって起きる感情からまた生まれる厨子王と弟というのも絶対にあるので、それを多くの人に見ていただけるのは嬉しいです。千秋楽まで気を抜かずに、常にいいものを作れるように頑張りたいと思います。
 
--『極上文學』は特異な舞台だと思いますが、ストレートプレイなどと比べてどこが最も違うと感じますか?
 
村田 芝居中の意識のもって行き方は、僕はいつもと変わらないです。いつも指先まで集中してやるようにしているんですけど、このシリーズは、手に台本持つということが小道具としての役割を立派に果たしていて。台本は、読むための道具なのですが、演出の小道具として使えるように、自分の手を扱うように繊細に見せるというところはありますね。
 
--台本を小道具として、というのは?
 
村田 持ち方、めくり方、開き方、めくるタイミングとか、それを感情表現の一部として見せます。開く角度を調節したりとか、ト書きを読んでいて誰のことを言っているのか示すために台本をその人の方に向けてたりとか。さっきもちょっと言いましたが、台詞やト書きに川、舟、月といった象徴的な景色が出てくるんですけど、今回僕の大きなテーマとして、それらをお客様もどれだけ共有してもらえるかということに重きを置いています。なので、そういったものを表現するために小道具をたくさん使っていますし、その表現が伝わるキャパシティでやらせてもらっているので、いつも以上に集中して繊細にと心がけています。役者はすごく繊細に、いろんなことを考えながらライブ感のあるこのシリーズを一生懸命やっていると思います。
 
藤原 やっぱり、台本を持つということが他の舞台と全く違うと思うんですけど、お客さんに読んでるんだなと思わせないことを大前提として。だから、簡単に言えば、台本を持っているけど人が自分に向かって台詞を言っているときとか、そっちに意識を持っていったりとか、逆に自分が誰かに向かって放っているときもそうしたり。本来、朗読劇は台本をずっと見ていてもいいと思うんですけど、どこかしらのタイミングでは目線を外してちゃんと向き合っていたい。お客さんは、お芝居として観れるようなものができたらと思います。すごく難しいラインだと思うんですけど、そこをどう自然に見せるか。“立って読んでいるだけ”ということには絶対にならないよう、いろいろと工夫しているなと思います。
 
椎名 一緒になっちゃうんですけど、台本を持っているというのはすごく大きくて。あと、朗読劇で生演奏というのはすごく特徴的だなと思います。演奏との息の合わせ方もすごく面白いですし、音が放つお客様に与える感情だったり…。観ること、聴くこと、感覚で表現できることがすごく大きいと思います。
 
--ちなみに、初めて『極上文學』に出演されたときに感じられたギャップなどはありますか?
 
村田 僕は(出演が)2回目で、ちょうど1年前に「走れメロス」という作品で初めて参加させていただきました。その時は、稽古時間が2日しかなくて。いきなりこの円形ホールで本番を迎えたんですよ。しかもその2日間の稽古から1ヶ月空いて本番で。
 
藤原 すごい…(笑)。
 
村田 なので段取りごとをちゃんと遂行するというだけで、すごく緊張したことを覚えていますね。
 
--今回はどうですか?
 
村田 しっかりと稽古ができたので、割と早い段階から答えが出せていて。他の普通のストレートプレイよりもしっかり稽古したと思います。今回は楽しみにしていた作品だったというのもあって、割と序盤からいろいろ考えながらチャレンジできた末の今の役作りになったかなという感じがありました。
 
--村田さんは「高瀬舟」で喜助で、「山椒大夫」で悪党の山椒大夫と、役柄が全然違いますが、それぞれの役はいかがですか? 
 
村田 個人的には喜助の方がやりやすいです。多分、今までの僕の作品を観てくださったファンの方には山椒大夫の方がしっくり来てるんじゃないかなという感じはあります。悪役はたくさんやらせていただきましたが、豪快な高笑いをするようなキャラクターよりも陰鬱なキャラクターを演じることが多かったので、そういった意味では山椒大夫のような豪快な、いかにも悪い人っていうのは、今までの僕を応援してくださった方も新鮮に観ていただけるのではと思います。あと、今まで悪役の僕しか知らない方からすると、喜助のような繊細な役どころは、実は僕の好きな部分でもあるので、そこをアピールする機会をいただけかなと思います。
 
--藤原さんは、始めて出演されたときのことについては?
 
藤原 僕は第2弾の「銀河鉄道の夜」という作品で初めて出演させていただいたのですが、朗読劇って聞いてたのに“全然、朗読劇じゃないじゃん!”って(笑)。衣裳も着ているし、舞台セットもあるし、みんなも動き回ってるから、ここで俺が立って読んでいてもただいるだけ、どうやったら読んでいるだけに見えないかなってそのときからすごく考えて。そこがルーツだったような気がしますね。相手を見るのも、見ている時間を計算したりとか、どのタイミングでめくるのかとか。お客さんになるべくストレスのないように、芝居の一つとして観てもらえるように気をつけました。
 
--「高瀬舟」での庄兵衛の役はいかがですか?
 
藤原 喜助が足ることを知っているといいますか。普通の人からするとすごく小さな幸せを本当に深い幸せとして感じることができる。それは、一般の方はあまり分からない、理解できないこと、難しいことだと思うんです。それを客観視している役なので、台詞を言う僕にも刺さってきます。
 
-時代設定は昔ですが、何となく現代と変わらないような。
 
藤原 そうですね。庄兵衛が観ているものとか、「高瀬舟」で感じるものも現代に置き換えることができると思うので、そういった意味では皆さんにわかっていただける。そこをどううまく伝えられるかですね。
 
--では、椎名さん、どうですか?
 
椎名 僕も『極上文學』に出演させていただくのは2回目で、充さんと同じ「走れメロス」だったんですが、マルチキャスティングゆえに充さんと稽古場でも本番でもお会いしたことがなかったんです。だから先ほど、充さんの口から「走れメロス」という言葉が出たとき、“…あ、俺もそれ出た!、共演作なんだ…!”っていう思いがありました(笑)。こういうパターンもあり得る公演です。初めて出たとき、僕も朗読劇と聞いていて。ただ、周りの人からも「大変だよ」と(笑)。それで稽古場に行ってみたら思った以上に大変で(笑)。最初は台本が邪魔でしかなかったです。読むときはもちろん必要なんですけど、ダンスのシーンのときとかは邪魔で。これをうまく表現に使えてなくて反省しているうちに本番が終わってしまいました。今回、このお話を頂いたときは、しっかりと演劇として効果的に使えるように、もっとお客様に観やすいようにしたいなという思いがありました。僕がこの稽古に初めてて参加したとき、通し稽古だったんですけど、自分のやる役の部分にひたすら注意書きとか入れてて。やってくうちに間に合わなくなってチェックだけつけるようになって。で、後々自分でやってみたら何のチェックだっけ?って思い出せず、結局、演出家さんに聞くという(笑)。日々、反省しておりながら生きております。
 
--今回、厨子王と『高瀬舟』の弟の役は、いかがですか?
 
椎名 この作品はもともと別の作品ですが、今回は一つの物語としてお客様に提供しています。「高瀬舟」の弟の役はすごく切ないですし、苦しいです。兄の喜助に申し訳ないという気持ちも出てきたりとか。実際、高瀬舟で送られて、護送されているシーンでは「お兄ちゃんのせいじゃない、僕が望んだことなのに」とすごく苦しいいです。そこはすごく繊細に演じていて、意味のない動きや表情がないので、“今、きっとこういう感情なんだな”っていうことが伝わりやすくなっていると思います。そして、厨子王の役では、厨子王の成長を見せたいと思います。厨子王の物語を、大人になっていく様を繊細に表現をできればいいなというのが自分の中の課題です。そこを伝えられるように演じていきます。
 
--では最後に、大阪公演に向けての意気込みをお願いします。
 
村田 僕が狙うところは、ギリギリ朗読劇というライン。しっかりお芝居にして“じゃあ、台本は要らないじゃいないか”と思われないように。本があるという制限があるからこそ『極上文學』という世界がとても繊細で、はかなくて、美しい物語として完成するものだと思うので、ギリギリ朗読劇であるという部分を狙っていきたいと。僕は役者なので、これが仮にシンプルに朗読劇であれば僕はオファーをお受けできなかったというか。声だけで感情を表現する技術がまだまだなので、その分、手や表情、身振りなどを利用できる、よりストレートプレイの方式である『極上文學』は自分が得意としている表現を遺憾なく発揮することができます。東京公演も盛況のうちに終えることができましたから、その勢いとモチベーションを切らさずに大阪に入れました。あとはしっかりと準備して、コンディションを高めて、数少ない大阪公演に来てくださったお客様に極上な時間を過ごしていただけるように、1分1秒、気を抜かずに、舞台にいるときも、舞台袖で待機しているときも集中を切らさずに、お客様のためだけに演技をしたいなと思います。どうぞよろしくお願いします。
 
藤原 本番をやるたびに前の公演と違った色が出ているのを実感していて。東京も千秋楽になるにつれ、自分の中で盛り上がってくるものがあったので、大阪でまたみどうなるのかと非常に楽しみであります。4回しかチャンスがないですが、4回とも違う公演になると思います。東京公演よりももっともっとお客様に伝えられるものがあるよう、僕自身も感じるものがあるように頑張りたいと思います。
 
椎名 まず、お客様は劇場に入られたら舞台セットが見えると思うんですけど、舞台セットから楽しいですし、それがどういうふうに作品と関わってくるんだろうと想像してほしいと思います。いざ物語が始まると、とても切ないし、悲しいお話なんですけど、誰かしらに感情移入していただいてストーリーを追っていただくと、救いはあるし、とても優しい気持ちになれる作品だと思います。後悔はさせない作品だと思うので、一人でも多くの方に観ていただければと思います。



(2015年10月24日更新)


Check
写真左より、椎名鯛造、村田 充、藤原祐規。

極上文學「高瀬舟・山椒大夫」

Pコード:446-328

▼10月24日(土) 13:00

▼10月24日(土) 17:00

▼10月25日(日) 12:00
指定席の当日引換券あり!

▼10月25日(日) 16:00
極上シート・指定席とも当日引換券あり!

大阪ビジネスパーク円形ホール

極上シート(当日引換券)-8500円(前方エリア/グッズ特典付)

指定席(当日引換券)-5900円

[原作]森鷗外

[演出]キムラ真

[脚本]神楽澤小虎

[出演]村田 充/伊勢大貴/藤原祐規/松本祐一/椎名鯛造/服部翼/天宮良/松田洋治

※未就学児童は入場不可。公演ごとに組合せが変わるマルチキャスティングで上演。
※各公演2日前10:00よりインターネット・店頭にて販売。電話での受付はなし。公演当日会場にて開演1時間前より座席指定券と引換え。1人1公演につき2枚まで。

[問]CLIE[TEL]03-6455-4771

極上文學
http://www.gekijooo.net/

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