ホーム > インタビュー&レポート > 鈴木砂羽、かもめんたるら強力なゲストを迎えて贈る 苦笑系コントユニット、表現・さわやかの新作は 胸キュンならぬ“胸ザワ”の中年恋愛モノ! 主宰・池田鉄洋にインタビュー
――毎回、メンバーの方々の濃い芝居に、涙を流すほど笑います(笑)。今回は、鈴木砂羽さんやかもめんたるさんといった豪華な顔ぶれも参加されますね。
そうなんです。真面目に恋愛のことを取り上げたら僕たちらしくなくて面白いかなと思ったんですけど、予想以上に豪華なキャストが揃って内容が負けるので、原作がある話ではありますが、スケールを一回りも二回りも大きくしたいと思っています。特に鈴木砂羽さんというパワフルな女優さんと、『キングオブコント』のチャンピオンをコントユニットの公演に呼ぶという、厚顔無恥な感じで…(笑)。今までは10年くらい一緒にやってきたメンバーの中で、私が女性を演じたり、佐藤真弓という女優に男性を演じてもらったりしながら恋愛っぽいこともしてきたんですが、今回はベクトルは違いますけど、かもめんたるの槙尾ユウスケさん含めて、キャラ立ちした美女が集まりました(笑)。
――女装した槙尾さん、めちゃくちゃ可愛いですよね(笑)。
だから、恋愛ものできるな~って思って(笑)。かなりイチャイチャする芝居にしたいなって思ってるんです。舞台で中年の人たちがイチャイチャするって絶対危険でしょ(笑)。たぶん笑いよりも“あぁ~!!”っていう悲鳴みたいなものが起きる気がします。“ムズムズする~!”みたいなことになればいいなと思っているんです(笑)。目を背けたくなるくらいの恋愛モノをしたいですね。
――怖いもの見たさみたいな…。
そうですね。そうなると思います(笑)。
――池田さんは毎回女装をされていますが、今回もありそうですか?
悩みどころなんですよね。槙尾さんがめちゃくちゃ可愛い女装をなさるので、確実に負ける気がして嫌なんですよ(笑)。かもめんたるの(岩崎)う大さんと槙尾さんの壁ドンとかは、何の意味があるんだろうと思うんですけど、やってみたいな(笑)。たぶん誰も見たくないとは思いながら、私と砂羽ちゃんの壁ドンとかやってみたり…。壁ドンはやたら出てくるんじゃないかなと思います(笑)。
――いろんなところで苦笑が生まれそうですね(笑)。今回、鈴木砂羽さんを呼ばれたきっかけはあるんですか?
砂羽ちゃんは第一回公演から観ていただいていて、その頃から“私も出して!”って仰っていたんです。それからいろいろと共演させていただくうちに、世間一般で知られている鈴木砂羽というイメージを越えた面白さが見えてきて。この人の面白さは猛獣並みに手に負えないなと思っていたんですけど、昨年の『The Greatest Hits Of HYOGEN SAWAYAKA』で1日だけゲスト出演していただいたときに、すごく楽しんでらっしゃって、お客さんにも喜んでいただいたので、その時のノリで“次出てくださいよ!”って言ったら“分かりました”って快諾してくださったんです。今までお呼びできなかったのは、猛獣ということもそうですけど、砂羽ちゃんの面白さを余すことなく出せる設定を思いつかなかったんですよね。それくらいのパワフルな方なので、今回は本当に砂羽ちゃんの魅力を存分に堪能していただけると思います(笑)。ただ、他の客演さんも同じ匂いを発する方々なので、それぞれが主役のコーナーを作りたいですね。
――さわやかの方々も猛獣ぞろいですが…(笑)。
その辺りはさすがに10年間やってきているので…(笑)。ただ、まだ彼らの面白さを伝えきれていない気がして悔しいとは思いますね。
――毎回お腹いっぱいになるくらい濃いですが、まだ面白さが秘められているんですね(笑)!池田さんがコントを作る時の発想の源はどこにあるんですか?
家で考えこんでできたことはなくて、例えば『山崎春のパン祭り』というコントは、渋谷の町内会のお祭りを見た時に思いついたんです。繁華街から少し離れた町で、見物客は誰もいなくて、4人が神輿を担いで、1人がうちわを持って歩いていて。基本的に、そういうときに感じる“なんて寂しいんだろう”っていう気持ちが肝になっている気がしますね。みんな寂しいっていう気持ちを隠して生きているじゃないですか。自分も寂しいことは見せたくないですし。それが見えたときの愛おしさというのがあると思うんです。
――元々、コントをやろうと思ったのはどうしてですか?
ドリフをはじめ、『オレたちひょうきん族』、『ポリスアカデミー』、『裸の銃を持つ男』、『オースティン・パワーズ』とか、『ハイスクール!奇面組』を見て、子どものころから笑いに救われてきたことがたくさんあるんです。で、それが一番大事なものだと思ってきた人生なんですよ。舞台でやっていても、笑っていただけた瞬間が一番分かりやすく通じるんです。だから僕は笑える作品をやりたいですし、そういう作品が素晴らしいと思っているからこそ“爆笑系”とは言えないので、“苦笑系”コントユニットとしているんです。芸人さんへの憧れは強いんですが、なりたいと思ったことはなくて、喜劇俳優になりたいと思っていましたね。それしかできないというのもありますが、役者ならではの笑いに魅力を感じて。自分的には常に王道だと思っているんですが、こんなにツッコミがないコメディは珍しいみたいで(笑)。男同士がキスしているのをツッコまずに傍観していますからね(笑)。
――結構、皆さん自由にされていますよね。
ボケのユートピアですね(笑)。
――演出する時にはどんな指示をされているんですか?
よく口にしているのは“もっと可愛く”っていうことですね。愛すべき人たちを出したいと思っているから、その人がチャーミングに見えないと嫌なんです。ツッコまれる対象だけど、それでも可愛い存在にしたい。ただ、演出するというよりも、実際は段取りを決めるくらいですね。不器用なメンバーばかりなので、段取りを全然覚えてくれないんですよ(笑)。
――だからこその面白さもありそうです。
もっと早く段取りが覚えられたら外部でも重宝がられると思うんですけどね(笑)。その面白さも確かにありますね。メンバーのいけだしんはどうしても踊れないですし。ヒップホップみたいなダンスを要求しても、彼が普段聞いているのは長渕剛だから、無理ですよね(笑)。彼の中の文化にないんですよ。でもそれが面白いし、10年やってきても飽きなかったから、辞めるのももったいない気がして、あと10年続けようと思っているんです(笑)。
――今回の舞台で目指されている着地点はあるんですか?
普通はうまくオチがつくことが着地点なんでしょうけど、私のコントはいつも寂しいとか切ない気持ちで終わることが多いんです。今回は、胸キュンで終わらせたいと思っているんですが、我々がやる胸キュンは本当に見てられない、胸がザワザワするものになると思うので、“胸ザワ”ですね(笑)。30歳、40歳過ぎての大恋愛は、人に絶対言えなくても心の中ではあったりするじゃないですか。観ている方々のそういう蓋をしていたい部分を、わざわざ開けてほじくり返すようなお芝居になると思います。受け入れられるかどうかは分かりませんが、うまくいったら新ジャンルになると思うんですよね。鳥肌が立ち続けるみっともない“ハーレクイン・ロマンス”みたいな(笑)。勝算は見えています!
――新ジャンルの誕生、楽しみにしています(笑)!ありがとうございました。
取材・文:黒石悦子
(2015年9月15日更新)