コンドルズが『Tomorrow Never Knows』を
テーマに潔いダンスを見せる!
主宰の近藤良平をインタビュー
ダンスカンパニーのコンドルズが、『コンドルズ日本縦断新世界ツアー2015 Tomorrow Never Knows 大阪公演スペシャル』を開催する。学ラン姿の男性が繰り広げるコンテンポラリーダンスや映像、人形劇、コントなどのパフォーマンスは、ユーモラスで、笑えて、かつ文句なしにかっこいい! コンドルズ主宰で、振付家・ダンサーの近藤良平に、新作や今年行われた南アフリカ公演などについて語ってもらった。
――まず、毎年恒例のツアーで、新作公演でもある『Tomorrow Never Knows』について聞かせて下さい。
僕的にはビートルズのアルバム『リボルバー』の収録曲をタイトルとして取ったんですけど、意外と世の中の人はミスチルの同名曲として知っているんですよね。このタイトルは、前から使いたくて、やっと、今、使えるタイミングがきたかなと。「明日はよく分からない」という意味ですが、ちょっと真面目な話をすると、明日は分からないということに対して、ネガティブにとるのか、ポジティブにとるのか。シンプルなことですが、自分たちが10代のころだったら、ワクワクすることなのに、このご時世だったりすると、明日が分からないということは、同じ言葉でもちょっとネガティブに捉えてしまう。今、世界全体がそういう状況に入り込んでいる気がして。お客さんがどう捉えるかは興味があります。今、色々と世の中の状況は深刻で、こういうタイトルでありながら、いつものコンドルズを潔くやる!そういう意味では、いいタイトルだと思います。
――コンドルズは、タイトルをテーマに、ダンスやコント、映像などのパフォーマンスを膨らませていきます。
『Tomorrow Never Knows』から感じることに対して、抗うつもりはなくて。「明日はよく分からない」ことをハッと気づかされる。そこを今回表現できればいいと思っています。今、ダンスのリハーサルをしていても、明日に対する不安感みたいなものは、そこはかとなく出てきてしまう。でも、一方では明日に向かって楽しまないと!とも思うよね。段々、年食っちゃうし(笑)。そういう意味では、色々な気持ちがパフォーマンスの中で見えかくれするんですよ。今回の公演用に作ったチラシは、南アフリカのマゼラン海峡をバックに撮影しているんです。「海を越えてコンドルズが行くぞ!」という、冒険だったり、夢だったりの雰囲気を作っている。その部分も見せたいですね。
――昨年公演された『GIGANT』は、ワークショップに参加していた子どもたちも出演しましたが、今作では?
昨年はそういう仕掛けをしたけれど、今回はいたってシンプルです。いつもの人形劇や映像、コントもかなり面白いと思います。今、流行りのプロジェクションマッピング自体が嫌いな訳ではないんですけど、それに合わせると、作品がものすごい速さで終わっていってしまい、ちょっと僕らとは違う気がして。コンドルズは、影絵やアニメ、人形劇など、一つひとつ、昔から手作りで、今回もあきずに真剣に取り組んでいますね。『Tomorrow Never Knows』がテーマとして所々で匂うようになっています。詳しくは言えないけど、コンドルズのガムラン風というのもあるから期待していて下さい。
――今回は、梅田のナレッジシアターで開催されます。この会場は初めてですよね?
そうです。飲みに行くには最高の場所ですよ(笑)。公演をするにしても、新しい場所は新鮮なので、楽しみですね。お客さんとの距離も近いのでお得感があるかもしれない。ご当地のコントのネタももちろん、考えています。
――楽しみにしております。ところで、話は変わりますが、今年2月にコンドルズは南アフリカで公演されました。
ものすごく危険な国で、行ってはいけない場所がいっぱいあって。僕たち男でさえ、夕方5時以降に行くと、一発で身ぐるみはがされるぞという場所があるんです。移動をするのも専用のタクシーを使わないと危なくて。でも、タクシーから外を見ると「ララララー♪」と楽しそうに歌っている人たちがいっぱいいる(笑)。危険なんだけど、不思議な国でした。
――観客の反応はいかがでしたか?
良かったです。1ヶ所はケープタウンの田舎の野外劇場でやったんですが、舞台の奥に赤いハイビスカスの花が咲いている。公演していると、いい感じに日が沈んできて、星が見えてくる。そこはワインエリアで、観客は皆、飲んだくれて見てました。また、港町でも公演をして、そこは黒人がいっぱい来てくれて、にぎやかな感じ。逆にケープタウンは白人が多くて、人種が地域によって分かれていることを現実的に感じましたね。海外ではいつも時事ネタをやるんです。セサミストリートをパロディにした「スサムストリート」というコントでは、スキャンダルになったアフリカの女優のマネをすると超受けた(笑)。ダンスはダンスで純粋に皆、楽しんでくれました。コンドルズのメンバーの橋爪利博は、世界中どこに行っても、必ずヤツと同じ風貌の人がいるみたいなヤツなんですよ。だから、フィリピンに行こうが、南米に行こうが、アフリカに行こうが、一番人気でしたね。公演の後、打ち上げで行ったクラブでも、もうモテモテで、巨大な女の人に羽交い絞めにされて、家に連れて帰りたいと口説かれていた(笑)。あと、オクダサトシというデブがいるんですけど(笑)、彼は南アフリカでは一切通用しない。もっとふくよかな人がいっぱいいるから。公演でもデブネタは一切、受けませんでしたね(笑)。
――ちなみに、いつも、ブリーフ一枚でエロティックかつ爆笑もののダンスを見せてくれる、古賀剛さんのパフォーマンスは?
あれは最高に受けた。世界共通です(笑)。
――南アフリカで感じられたことも、これからの公演で活かせそうですか?
そうですね。コンドルズは笑いだけを追求しているわけではないですけど、ピュアな笑いの面白さを改めて感じましたね。さすがに南アフリカまで行くと。
――関西の公演を拝見していても、恒例のお笑いのコントやネタはお客さんが「来たー!」と待っている感じがしますものね。
確かに、関西のほうが「よっ!出て来た!待ってました!」感が東京のお客さんよりあるような気がしますね。土地柄なのかな。初期のころは、言い方は悪いけど、コンドルズはそんなにお客に媚びないというか、迎合しないから、それが関西で通用するのか心配してたんですよ。今は、お客さんが応えてくれますね。いつも言っていますが、三世代的に見てもらえるのが理想ですね。でも、去年から気づいたことがあるんですが、若いメンバーが増えると、お客さんは生命体として若い人を好むんですね(笑)。若者に目が向いて若者にファンがつく。公演後、コンドルズが会場で物販を始めると、若いメンバーのところにだけ行列ができる。いい意味で新しいファンがついたということですね。
――でも、昔のお客さんは近藤さんのところに並ぶでしょう。
昔のお客さん…、だけ?(爆笑)。
――すみません。言い方が悪かったですね(笑)。それは悔しくはないですか?
ちょっと悔しいかも(笑)。若い人が踊ると、「俺だって踊れるんだ」と年寄り組は触発され、やっきになって、今、練習していますよ(笑)。コンドルズは今年結成19年目で、こんなに息の長いダンスカンパニーも少ないと思うんですけど、意外と続けていくパワーはあるんです。皆が潔くやっている。前のほうがネチネチと活動していた気がする(笑)。
――メンバーの中にも潔さが出て来たと。
それは感じますね。いい塩梅に。やりたいことがいっぱいある若者メンバーがいるから、おじいちゃんたちも頑張るんですよ(笑)。
――おじいちゃんというほどではないですけどね(笑)。でも、昔からのコンドルズのメンバーは、会社の社長だったり、大学の准教授だったり、ほかのお仕事をされている方もいます。そして、コンドルズでダンサーとしても活動されて、豊かな人生を歩んでいらっしゃいますよね。それがパフォーマンスにも出ていると思います。
そうありたいです。例えば、古賀ちゃんには、自分が会社で働いているからご褒美としてコンドルズがあるんですよ。価値が自分で作れる。そういうのが積み重ねなんだろうなと。オクダはデカくてデブだからこそ「ダンスカンパニーでやっている」という意義を感じていると思うんです。最近は、石渕聡が留学先のフランスから戻ってきて、コンドルズのいい刺激になっています。石渕の動きってシャカシャカシャカシャカして、ちょっとヘンで独特なんですよ。イケメンの若者も負けたと思うぐらい(笑)。それで若手も頑張る。
――個性的なメンバーの皆さんを、今までどうやってリーダーとして引っ張ってこられたのですか?
いつも言っていますけど、皆をまとめるつもりは毛頭ないです(笑)。好き勝手にやっといてという部分が多い。でもしぶとく、皆、集まりますよね(笑)。今年の春は埼玉公演をやったんですけど、埼玉は稽古場が広いんですよ。僕たち、バレーボールにはまっちゃって(笑)。メンバーが12人集まると、若手チームとおっさんチームに分かれてものすごい燃えるんですよね。負けてたまるかというすさまじいパワーで(笑)。
――それをコントに取り入れたりは?
うーん、あんまりなかった(笑)。でも団結はしましたよ。そのために皆、遅刻しないで来るんだから。
――古いメンバーも若手もお互いいい刺激となっているんですね。以前、東京スカパラダイスオーケストラのメンバーを取材したときに、「音楽は一生続けるだろうけど、スカパラが持つテンションでライブを続けられなくなったら、スカパラは辞める。いかにあのテンションを保ち続けるか」だとおっしゃっていたんです。
似てるなぁ。それは同じですね。スカパラも男の集団だしね。コンドルズが皆で集まると、笑いが起きる分量もすごいんですよ。僕は、よそのカンパニーや劇団で公演することも多いんですが、他と比べると、僕らはずっと笑っていますね。「ブルマーとは何ぞや」みたいな話を1時間ぐらいずっとしている(笑)。
――中学、高校時代のロッカールームみたいですね。
そうそう(笑)。
――うらやましいですね。コンドルズとしては南アフリカ公演で、目標にしていた5大陸を制覇されました。今後の活動について教えて下さい。
次はまだ決まっていませんけど、日本全県制覇ですかね(笑)。47日間で制覇するのはキツイから、60日間ぐらいかけたいなぁ…。来年は20周年だけど、そこは軽く突き抜けたいですよね。そうしないと20年で終わっちゃうと困るから(笑)。
――最後の質問です。今さらですが、近藤さんにとってダンスとは何ですか?
暇つぶしですね。「よっしゃーダンスやるぞー!」と気負うのではなく、日常の中にダンスを組み込みたいから、あたり前でありたい。真剣な、真面目な暇つぶしですね。真面目な暇つぶしって良くないですか? 昔、『誓いの休暇』というダンスの作品を作ったんですよ。僕、その言葉が好きで。ダラダラしたいから、何かの代償で休みたいんじゃなくて、潔く休暇に向かいたい。休暇をメインにしたいんです。
取材・文/米満ゆうこ
(2015年9月 1日更新)
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