ホーム > インタビュー&レポート > ヨーロッパ企画・イエティ、10作目の新作は 日本の“食”事情を描いた グルメがテーマの脱力系コメディ
京都の人気劇団・ヨーロッパ企画の劇団内ユニット、イエティの新作『俺の白飯を越えてゆけ!!』の大阪公演が7月2日(木)よりin→dependent theatre 1stにて幕を開ける。
脚本・演出を手掛ける大歳倫弘が題材として取り上げるものの多くは、テレビ通販、パン、インターネットなど、身近なのに舞台では触れられることが少ない“ジャンクカルチャー”。10作目となる今回は、“グルメ”をテーマにしたコメディを展開している。
舞台は、ある夫婦が営む定食屋。客足がパッタリと途絶え、暇そうに過ごすふたりのもとに、ひとりの常連客・筧が久しぶりに顔を見せる。近所にオープンしたオーガニックカフェに筧を持っていかれたことを知った店主は、筧を取り戻そうと、そのオーガニックカフェの店主からアドバイスを受け、流行を取り入れようとするが…。次々と変わっていく日本の“食”事情や、トレンドを追いかける日本人、さまざまな店のアプローチの仕方など、特徴をうまく捉えた展開が面白い。しかし、流行に左右される人たちをナナメから見るわけではなく、時折、皮肉を込めながらも面白がり、“愛すべき人たち”のような視点で描くのが大歳らしい見せ方だ。
ヨーロッパ企画からは、諏訪雅、酒井善史、角田貴志、本多力が出演。筧の気持ちを取り戻そうと必死な店主役の諏訪、気取った雰囲気で観客すらもイラッとさせる酒井、気難しい店主がピタリとハマった角田、本多が暑苦しい店主役で新たな一面を見せるなど、それぞれがさまざまなジャンルのキャラの濃い店主を演じている。そして、オーガニックカフェでありそうなこと、ラーメン屋でよく見る風景など、世間一般にあるイメージをデフォルメして描くことで共感の笑いを生み出す。また、ヨーロッパ企画の本公演『ビルのゲーツ』などでも活躍を見せた拙者ムニエルの加藤啓が、イエティ初参戦。定食屋の常連客役として、ヨーロッパ企画ならではのユルッとした空気に溶け込みつつも、確かな存在感を発揮している。
脱力した笑いと、意外な展開も楽しめるラスト。濃密な空間でユル~く繰り広げるイエティワールドをお楽しみに。
取材・文:黒石悦子
(2015年7月 1日更新)