ホーム > インタビュー&レポート > 『THE WINDS OF GOD』が2年ぶりに上演! 今井雅之が届けたい想いとは…?
海外ミュージカルが流行っていた初演当時、「日本人の作品で、日本人として堂々と演じられる役をやりたい」と思ったことから本作を手掛けたという今井。しかし「誰も書いてくれないから(笑)」と、子どもの頃から興味を持っていた神風特攻隊について取材し、それまで今井が持っていたイメージとのギャップを物語にするべく、筆を執った。「100名以上の方に取材をさせていただいて、そのとき“何のために突っ込もうと思ったんですか?”と聞いたんです。日本の男に生まれた以上は、“天皇陛下のため、日本祖国のため”と言うのかなと思っていたんですが、違ったんですよね。ほとんどの人が“お母さんを守るため”とか“家族を守るため”って仰ったんです。20歳前後の若者たちが、訓練をして、特攻隊になって相手に向かっていく。でも皆さんの話を聞くと、中身は今の若者と変わらないんですよ。だから、何とか現代の若い人たちにも観てもらえる作品にしたいと、現代の漫才師が太平洋戦争の時代にタイムスリップするという、作品に入り込みやすい設定にしたんです」。
27年間上演し続けてきた今井のライフワークとも言える作品。本作を抜きに自身の芸能生活は語れないという。「この作品があったから役者として生きてこられたし、良い意味でも悪い意味でも、いろんな面を見てきました。27年間、良いことが“2”で、“98”は悪いことだったかもしれない。でもその“2”が見れたのはすごく大きいことで、悪いことの何倍の価値があるんです。先日、歴代のWINDSのメンバーが集まってくれて、“あぁ、すごいな”と思ったんです。これだけの人たちがこの作品に関わってたんだと思うとすごく嬉しかったし、やっぱりWINDSは僕の一番の思い出なんだなと思いましたね」。
売れない若手漫才コンビのアニキとキンタが、街でのナンパ途中、事故を起こして意識を失う。目が覚めるとそこは1945年8月、ふたりは特攻隊基地の兵舎にいた…という物語。主演を務める予定だった今井に代わってアニキ役を重松隆志が務め、キンタをお笑い芸人の井戸田潤が演じる。「個人的に思うのは、井戸田君には役者としてのセンスを感じますね。この作品は、後半にすごく役者のアビリティを求められるんですよ。その後半部分がすごく良いなと思います」。
最後に、今井が本作を通じて届けたい想いを尋ねた。「興味を持ってもらいたいんです。あの時代ってどうだったのかなって。学校でも教えてくれないし、今の人たちは、知るきっかけがほとんどないと思うんです。特攻隊の人たちは、きっとやりたいことがいっぱいあったけど、明日死ななくちゃいけない。そういうことを考えると、今がどれだけ平和なのかがわかりますよね。いろんな夢を持てて、自由で、すごく良い時代だと思うんです。だけど、簡単に人を殺したり、部屋に引きこもったり、自殺したり…。そういうことを耳にするたび、何やってるんだって思うんです。だからいろんな人にこの作品を観ていただいて、歴史に興味を持つと同時に、平和な時代に生きている自分について、何か感じていただければと思います」。
取材・文:黒石悦子
(2015年5月18日更新)