ホーム > インタビュー&レポート > 「楽しみ疲れて帰ってほしい!」 ダンスカンパニー、男肉 du Soleilの新作に ヨーロッパ企画・永野宗典が参戦!
――今回は、永野さんを迎えてどんな作品になりそうですか?
池浦「いつもよりパフォーマンス多めで作ろうとしています」
――それは、大変そうですね。
池浦「そうなんですよ。お芝居の上手な永野さんから、お芝居を抜こうと思っています」
永野「僕にダンスだけ残してどうするの(笑)」
池浦「新たな永野さんを見せてやるんですよ!」
――永野さんは男肉の稽古に参加していかがですか?
永野「必死です!でも質問するたびに、かなり丁寧に教えてくれるんですよ。例えば、ジャンプして回転して同じところに立ち止るっていうのがあるんですけど、できるだろうと思ってやってみたら全然できなくて。そしたら、“90度ずつ回りましょう”って言ってくれてやってたら、いつの間にかできるようになったんですよ。そこの丁寧さというか、アドバイスの的確さは、男肉の蓄積みたいなものを感じましたね」
池浦「10年やってますからね」
永野「ダンスカンパニーなんだなっていうのを実感しました」
池浦「まぁまぁ付き合い長いですけど、ここで初めて…」
永野「ようやくわかりました(笑)」
――以前男肉に出られた石田さんからも、そんな言葉を聞きました。
永野「本番だけ見ていても、彼らの実力がわからないっていう(笑)」
池浦「みんな、ただのひょうきんな団長か、足痛い団長しか知らないのでね(笑)」
永野「だから本当に“ご指導願います!”っていう感じ挑んでいますね」
――今まではダンスの経験はあまりないんですか?
永野「ないですね。『ハイタウン2014』というヨーロッパ企画のイベントで、20~30分の、ダンサーのきたまりさんが振付演出するステージに出演したのが初めてです。でも、その後、バレエ教室にも行きました。僕は常々、身体を動かすことに興味があったので、男肉にも出たいとラブコールをずっと送っていたんですよ。念願叶いました(笑)」
――ほかのメンバーの皆さんも順番に出られてますしね。永野さんも、「そろそろ出させてほしい!」と?
永野「前回は酒井君が出てましたけど、僕は酒井君が出るより前から出たいと言っていたんですよ。おそらく、2012年の石田君が2回目くらいに出た公演のアフタートークでは出たいって言ってたんじゃないかな。結構長い間想いを募らせていました(笑)。それで、去年の年末に、劇団内の会議でアンケートがあって、男肉に出たいということを書いたらスムーズに決まっていきました」
――今回の『鉄球』ではどんなことが行われるんですか?
池浦「脱獄ものをしようと思っているんです。脱獄といえば、鉄球に繋がれているイメージなのでタイトルは『鉄球』。永野さんを鉄球に繋いで、舞台上でいろんなことをしていただきます。ストーリーとしては、団員の森本萌黄という唯一の女肉が、男肉禁止法により脱出不可能な監獄島に捕えられて、それを永野さんが助けに行くという、ものすごく簡単なお話です(笑)。その物語を、できる限りいろんなラップとかパフォーマンスに乗せて展開していきたいと思っています」
――ダンスが増えるんですか?
池浦「そうですね。男肉たちの“フィジカルシアター”みたいなイメージです。何でも面白そうなことを取り入れたいと思っています」
永野「本番で使われるかはわからないですけど、手前でメンバーがお芝居していて、僕が背景でずっとソロダンスしているシーンも作りましたよ。それもちょっと人形劇風のお芝居で、ひと癖ふた癖ある感じですね(笑)」
池浦「永野さんが救いに行くだけの、めっちゃ簡単なお話なんでね。見せ方をとにかくこだわらないと、大変なことになるぞっていう…」
――団長は永野さんにどんなことを期待していますか?
池浦「永野さんはめっちゃ考えてくれるんです。言ったことを全身で受け止めようとしてくれる。今までやったことのないような、身体的なことをたくさん注文するから、それをどう消化して出してくれるのかが楽しみですね。ダンスはほとんどやられてないので、振りなんかなかなか出ないと思うんですけど、僕が“こんな動きをしてほしい”と言うと、自らいろいろ動いてくれるんですよ。そうやって提案してくれるのは、今まで出ていただいたヨーロッパ企画の方々の中で初めてです」
永野「そうなんだ(笑)。そういうものだと思ってました。男肉の人たちは、団長が“こういう動きして”って言うと、無言でひたすらやってるんですよ。僕もただ見てるわけにもいかないから、一緒に考えてみるんです。採用されたことはないですけど、とりあえずなんか冒険できたらと思って(笑)」
池浦「打てば響く感じ(笑)。そういう意味では楽しみというか、言うたびにいろいろと、出汁殻になるまで頑張ってくれるので。なので、セリフを話す以外のいろんなことにいっぱいトライしてもらって、僕がそれを見て楽しみたいですね」
永野「僕も憧れみたいなのがあったんです。男肉の舞台では最後にダンスの応酬みたいなのがあって、観ていてすごく辛そうだけど、やってみたいなっていうのも感じて。そういう憧れも募っていたので、割と必死に、男肉に染まっていこうとしています」
――実際男肉の稽古に参加していかがですか?
永野「辛いことが多いですね(笑)。僕、本当にダンスの振りを覚えられないんですよ。でも、点と点が繋がった瞬間はものすごく快感で、これが全部繋がったらと思うと楽しみですね。辛さを乗り越えた先のご褒美というか、自分が思い描いていたステージに行けるんだなと思うと、頑張ろうと思います。こんなピュアな思いは近年なかったですよ(笑)。純粋に演出の言うことに応えながら、練習すればするほど理想に近づいていくのが嬉しい」
池浦「ダンスは稽古というか、練習ですからね。やればやるだけ上手くなるんです」
永野「ヨーロッパ企画って、反復練習というよりもエチュードで練り上げて作っていくので。男肉もそういう要素はあるんですけど、反復で磨き上げる楽しさはすごくあると思います」
――団長から見て、永野さんのリズム感はどうですか?
池浦「リズム感は…、あまり芳しくないかな(笑)。でも、男肉の団員も3人くらいリズム感ない人がいるので、そこはあまり問題ではないんです。永野さんは、動きを理解しようとしながらやっている姿勢がすごく良いと思います」
――作品ではいつも、最後は全員が死んで団長が生き返らせるというお決まりのシーンがありますね。
池浦「もちろん今回もありますよ!それ以外のところは今までよりもサービス精神旺盛な感じで作ろうとしていて、タイトルのつけ方もいつもと違うんです。マンネリを打破したいと思って作っているけど、結局はマンネリも大事で。ラスト20分はちゃんとマンネリします(笑)」
永野「そこがないと、物足りなさに繋がったりするもんね」
――以前のインタビューで、客席から「よっ!団長!」という掛け声がほしいと仰っていましたよね。最近の公演ではいかがですか?
池浦「それが、ちょっとずつかかるようになったんですよ。ただ、本当に恥ずかしそうな、か細い感じなんで、僕の求めてる“よっ!”ではないんですよね(笑)。こうなったら、前説でお願いしようかなっていう覚悟を決めつつあります」
永野「でも、年々お客さんが前のめりで観てくれる傾向になっていますよね。僕が観始めた頃なんて、みんな恐るおそる見ている感じがありましたけど、最近は自ら楽しみにきているお客さんが増えてきていると思う。頑張っていれば変わるもんなんですね」
池浦「ただ、お客さんがどんどん鋭くなってきているような…(笑)。みんなグッーと前に前に来て戦士だけが残って、後ろの方の人が削ぎ落とされている気がしますね」
――ハートの強い人たちだけが残っている(笑)。
池浦「そうなんですよ」
――今回何か新しいチャレンジはありますか?
池浦「お芝居の見せ方ですね。今まで叫んで騒いでラップしてということくらいしかなかったんですけど、紙芝居とか映像とか、いろんなシーンの見せ方にチャレンジしようとしています。今まで考えてなかったことにいっぱいこだわりたいですね」
永野「鉄球も出てくるでしょ。割と美術に近いものが舞台上にあるっていうことはなかったんじゃない?」
池浦「そうですね。変な小屋みたいなのは作ったりしましたけど(笑)。今回は、鉄球を使うことで、いろいろ制限していくパフォーマンスをしたいと思っています」
――制限がある中で。
池浦「僕ら、いつもやりたい放題だったので。人数制限とか、手が使えないとか、脚が使えないとか、制限してパフォーマンスを作ってみよう、と。必死にいっぱい踊るだけが能じゃないところを見せようと思っています」
――世界観的に参考にしているものはあるんですか?
池浦「映画の『ザ・ロック』『アルカトラズからの脱出』とか、『プリズン・ブレイク』ですね。でも、今のところロボットに乗って救いに行くシーンもあるんですよ」
――壮大ですね(笑)。
永野「スケールがでかい!」
池浦「壮大な設定で、ちっちゃい島に行く(笑)。で、いつも通り役名とかもなく、僕らは僕らで出るし、永野さんは“ヨーロッパ企画の永野さん”として出てもらう。等身大の僕らがロボに乗って助けに行くお話です」
――荒唐無稽な感じで(笑)。
池浦「そうです。永野さんは脱獄王でもあって、世を忍ぶためにヨーロッパ企画に入ったっていう設定です」
永野「虚実が入り乱れているのが男肉の魅力でもあるんですよね。僕的にはたまらないです(笑)」
――演技的な部分もありつつ。
池浦「もちろん。始めにそういうお芝居みたいなのを作って、見せ方を考えています。ただ、永野さんの“面白コント”はちゃんとお芝居をしてもらって見せます」
永野「面白コント(笑)」
――ハードル上がってますね。
池浦「爆笑コントをお願いします(笑)。本当に今回は、飽きのないようにめくるめく展開を考えていて、遊園地みたいな公演にしようと思っています」
永野「常に音を絶やさないというか。音楽がないときは役者の声なりで、常に音圧をキープしてね」
池浦「ディズニーランドの『ジャングルクルーズ』みたいに、出てくるものを楽しんでたら、気付けばゴールやった!みたいな。楽しみ疲れて帰ってほしいですね」
――アトラクションを楽しんだ後みたいに。
池浦「ぐったりして帰ってもらえるようにしたいですね。その分こっちも忙しいんですけど、今までで一番疲れる公演にしようと思っています。永野さんは冒頭で息切れしていますけど(笑)」
永野「そうなんです。冒頭の振付終わったくらいでフーフー言ってます(笑)」
――ラストの怒涛のダンスも楽しみですね。
永野「念願だったので踊れるのが嬉しいんです!今回ずっと動いているから、スタミナがない状態での怒涛のダンス。遺作になるかもしれないですね(笑)。そのくらいの気持ちで頑張りますよ!男肉の公演は燃え尽きてなんぼだと思うので。でも、それ以外にも覚えることがたくさんあるんですよね。歌もありますし」
――ラップですか?
池浦「歌もラップも。永野さんの歌謡ショーもしたいですね」
――見どころ盛りだくさんですね!
池浦「見どころしかないです(笑)」
永野「ディナーショーで回れるんじゃないかっていうくらいの演目になるんじゃないですか?」
池浦「“緩急”じゃなくて、“急急”で(笑)。でも、疾走感しかないのは逆に観ていてしんどいですからね。メリハリはつけたい」
――永野さんの新しい一面が見られそうで、楽しみです。
永野「頑張ります!僕も自分に物足りなくなった部分もあったので、本気で出ようと思ったんですよね」
――新しいことにチャレンジしたいと。
永野「そういう欲求が高まっていたんだと思います。で、たまたま男肉も新しいことにチャレンジしたいと思っているときで。そういう変化を求めた2組が出合いましたので、何か物足りなさを感じている方というか、変わりたいと思っている人に観ていただいて、変化のきっかけになるような公演になれば、と思います」
――期待しています!ありがとうございました。
取材・文:黒石悦子
(2015年5月16日更新)
発売中
Pコード:443-186
▼5月20日(水)19:00
▼5月21日(木)19:00★
▼5月22日(金)19:00★
▼5月23日(土)13:00/18:00★
★5月24日(日)13:00
元・立誠小学校 音楽室
一般-2500円(指定)
学生-2000円(指定)
男肉飛び散る席-2000円(指定)
絶対安全席-3000円(指定)
[出演]池浦さだ夢/江坂一平/小石直輝/高阪勝之/城之内コゴロー/すみだ/チェン/森本萌黄/吉田みるく/永野宗典
※★=公演終了後「おまけトークショー」あり。
※未就学児童は入場不可。学生は入場時要学生証提示。
※男肉飛び散る席は最前列・最も間近で出演者と触れ合えます。
※絶対安全席は最後列・このエリアには出演者は立ち入りません。