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日本ならではの美しい言葉と幽玄な世界に酔いしれる…。
新感覚の朗読劇「極上文學」シリーズ第8弾、
『草迷宮』に出演の桑野晃輔、三上俊にインタビュー!

日本のさまざまな作家の文學作品を原作に、朗読劇として上演する「極上文學」シリーズ。朗読劇とはいえ、パフォーマンスや照明、音楽、舞台美術、衣装などの演出を取り入れたそのスタイルは、通常の演劇のような熱量も備えている。第8弾となる今回は、泉鏡花原作の『草迷宮』を上演。公演を前に、主役の明を務める桑野晃輔、女性役・菖蒲を務める三上俊のふたりが、本作の見どころや魅力を語ってくれた。

――東京公演の感触、手応えはいかがですか?

三上「泉鏡花の作品は、日本語も難しく、内容としても少し困難な作品だと思うんですけども、お客さんがすごく集中して観てくださり、その世界に入ろうとしてくださっているのを感じて、こちらもすごく素敵な空気の中で表現できたなと思っています」

桑野「題材が難しく、文学ってとっつきにくい部分もあるかと思うのですが、僕たちなりの極上文學の『草迷宮』を届けようというのは、みんなそれぞれ意識していたことだったので。自分たちの解釈を稽古場で作り上げて、それを提示できたなと思いますし、舞台ならではの『草迷宮』をお届けできたのではないかなと思っております。大阪公演はこれからなので、より良いものになるように頑張っていきたいと思っています」

――極上文學シリーズに出られるのは?

三上「僕は初めてです」

桑野「僕は第6弾の『ドグラ・マグラ』に続いて、二度目ですね」

――極上文學シリーズは朗読劇ですが、舞台美術も作り込まれていて、衣装もあって、普通のお芝居に近い部分もありますよね。

桑野「“朗読演劇”というブランドを築き上げていきたいとプロデューサーも仰っていて、まさにその通りだと思いますね。台本ありきの舞台で、台本もひとつの“共演者”というのを僕らも意識していきたいですし、極上文學というブランドをどんどんアピールしていけたらと思っています」

三上「僕は、顔合わせのときに演出家のキムラ真さんが仰ったふたつの言葉が、すごく極上文學というものを表しているなと思ったんですが、ひとつは、台本を持って芝居をやっているんじゃないぞ、ということ。もうひとつは、台本の使い方を考えてきてくれ、と。それはホンじゃないんだぞ、と仰っていて。あぁ、それが極上文學なんだなって」

――お芝居とも朗読劇とも違う意識でされているような感じですか?

桑野「そうですね。極上文學は覚えることがすごく多かったりもするので。なので、どっちかというと半分半分くらいですかね。気持ち的には朗読劇もお芝居と変わらないんですけど、聴くだけじゃなくて、観ても楽しめる作品だと思うので、そこは極上文學の魅力なんじゃないかなと思います」

三上「朗読劇ってホンを閉じないと思うんですが、結構、要所要所で閉じたりしてるんですよ。で、閉じることに意味はちゃんとつけられていて、ホン(命)を閉じようとするけど閉じさせない法師がいたりとか、ホンの世界を生きているけど、それを辞めるっていう意味で閉じたりもするし、違う意味で閉じる人もいますし。そこにすごく意味を持たせていて、それは本当に役者としても試される部分だろうし、すごく面白いところだなと思いますね」

――朗読劇とはいっても稽古もあるでしょうし、何度も繰り返していたら覚えてしまうんじゃないですか?

桑野「正直、覚えてしまいそうですよね(笑)」

三上「自然にね。でも僕は覚えないようにしています」

――この舞台の難しさはどこに感じられていますか?

桑野「特殊ですよね。ただ単にホンがあるというだけで、普通の舞台とは違うものになりますし、さっきのキムラさんの言葉にもあるように、ホンをどう生かすか、どう使うかというのが印象的になると思うので、ホンがあるないは一番のポイントかなと思いますね」

三上「自分のセリフと、他人のセリフと、ト書きと大きく分けて3つあるんですよ。それを、お芝居のようにちゃんと段取りするわけじゃなく、同じ場所で3つのことをやったりするので、その切り替えが難しいですね」

――先ほど、覚えることが多いと仰っていましたが、具体的にいうとどういうことですか?

桑野「動きもそうですし、きっかけとか。今回マルチキャスティングで、毎回違う組み合わせで公演をやるので、きっかけはやっぱり大事ですね。覚えてなきゃいけないところというか、そこは皆共有してないといけないので」

――やっぱり相手が変わるとアプローチの仕方も変わりますか?

桑野「ぜんっぜん違います!お客さんもきっとそれが面白いと思いますし、それぞれでまた違った『草迷宮』の見え方になるんじゃないかな。見事にキャストも個性があってバラバラですので、見応え十分だと思いますよ」

――お互いの印象はいかがですか?

桑野「三上さんとは二度目の共演なんですが、今回は女性役の三上さんとの共演ということで、単純に、勉強になっています。僕も前回の『ドグラ・マグラ』で女役をやらせていただいたんですけど、深いんですよね。役作りの意識だったり、稽古場に向かう姿勢だったり、ふいに僕に見せてくれる顔がもはや女性なんですよ(笑)。もちろん恋をしているという間柄ではあるんですけど、メイクした途端に女性の表情になるから、正直目を合わせるのもこっぱずかしい。でも、温かく包み込んでくれる菖蒲を演じてくださっているなと思います」

三上「桑野君の明は素直というか、ほっとけないんですよね(笑)。まっすぐで、思ったことが本当に溢れ出ちゃうというか。幼なじみではあるんですが、僕はもう一人の菖蒲よりも年上の雰囲気で作っていて、だからなおさらというか、可愛いなという感じで見守っていますね」

――三上さんが女性役を演じる上で意識されているところは?

三上「男性で芝居をするときは、頭で理論的に考えながら読み解くんですよ。でも、女性を演じる場合はちょっと違っていて。昔ある演出家さんに“女性は子宮で考えるんだ”と言われたことがあって、そこから僕は気持ちの面で子宮を持とうと努力しているんです。結局、頭で考えても女性のお芝居はできないですし、男性と女性では同じシチュエーションでも全然違う感情が生まれてくるので、頭で考えることをやめましたね」

――普段から女性の振る舞いを研究したり?

三上「しいて言えば、下品な女性を見ていますね(笑)。ハイヒールでの歩き方とか。女性はどれだけ下品に振る舞っても女性ですが、僕がそれをすると女性になれないので。だから、素敵な女性よりは雑な女性を観察して、これはいけないんだなと感じています」

――反面教師的な感じですね(笑)。この『草迷宮』は少し難しい部分もあると思うんですが、最初に読んだ印象はいかがでしたか?

桑野「この作品に出演することになって原作を初めて読んだんですが、2~3ページ読んだだけで分からないぞって(笑)。早く解読したものを持ってきてほしいと思いましたね」

三上「その次に現代訳をいただいたんですが、それでも分からなかった(笑)」

桑野「それこそ、泉鏡花の独特の世界観だと思いますし」

――どうやって読み解いていったんですか?

桑野「やっぱり台本ですね。大まかなあらすじは原作で自分なりに解釈したんですが、上演台本を見て、自分が持っていた解釈とすり合わせしながら、皆に共有して伝えるというふうに僕はしていました」

三上「まさしくですね。だから、話し合いは結構しました」

――この舞台の言葉は、現代語ではないですよね?

桑野「そうですね。難しい言い回しだったり、現代では使わないような言葉もあるので、僕たちもできる限り分かってもらえるように、伝えようとしていますし、動きなり感情なりが入って、分かりやすくなっているのではないかと」

三上「全部が伝わらなくても良いと思うんですよ。何を持って帰るかは観ていただいた方にもよると思うんですが、美しかったなというだけでも良いですし、大まかな流れは分かるように丁寧に作られているので、プラスアルファで何かを持って帰っていただければ。一言一句理解できなくても成立するのが極上文學の魅力だと僕は思います」

――では、素敵だなと思った部分は?

桑野「舞台にすることで、匂いもそうですし、聴くこともそうですし、僕らが届けられる熱量は必ずあって。それに、観ていただいた中で、私もこういう経験あったなとか、どこかしら共通する部分があると思うんです。だから、ストーリーがよく分からなかったって思われても、最後の最後に、絶対心には何か残るはずで、僕たちもそれを届けたいと思っています。すごいピュアなところをつついてくれたなと思ってもらえると嬉しいですし、僕もこの作品を通して気付けたところなので、そういうところを感じてもらえたらなと思いますね」

三上「個人としては、女心は分からないのですが、男のパワーは女性には出せないと思っていて。男性のパワーを備えた女性としてそこに存在して、女優さんとは違う芝居ができるというのも見どころのひとつなのかなと思っています。全体としては、セットからしてもすごく美しいんですよ。そこに読んでいることを具現化してくださる“具現師”や、演奏をしてくれる“奏で師”という存在がある。そうしたライブ感が見どころなんじゃないかなと思います」

――この作品に触れて、芝居に対する意識が変わったり、新たな発見はありましたか?

桑野「役者としてというよりも、日本語って美しいなと純粋に思いましたね。日本人に生まれて良かったな、と。観ている側も演じている側も日本語の美学のようなものが分かるというか。なので、役者として言葉を届けるにあたって、これからも一つひとつの言葉を大事にしていきたいなと思いました」

三上「日本語もそうなんですけど、日本の文化は全般に素晴らしいなと思います。女性役は初めてじゃないのですが、和の女性役を演じるのは初めてで。最初はちょっと戸惑いましたが、用意してくださった衣装も美しいですし、小道具の鞠も素敵なんですよね。日本の文化って、美しさ、繊細さによって作られているんだなって。だから僕たちも一つ一つ繊細に言葉を紡いでいかないといけないですし、大事に作り上げてこれからも存続させていかなければいけないなと思いました。本当に、この美しさは日本ならではのものだと思います」

――では、最後に関西の方に向けてメッセージをお願いします。

三上「極上文學『草迷宮』は、衣装も美しく、言葉も繊細で日本ならではの美しさがあります。ただの朗読劇ではなく、言葉を形で表す具現師、生演奏の奏で師もいて、生ならではの熱い朗読劇をお届したいと思っておりますので、ぜひ劇場へいらしてください」

桑野「文学というととっつきにくいような感じがありますし、好きじゃなければ読む機会も少ないと思うんです。今回は生の舞台で『草迷宮』とはこういうものだと提示するので、観ても楽しめるし、聴いても楽しめるし、香りでも楽しんでいただけると思います。肌で感じて心で楽しんでもらえる作品にしますので、シアター・ドラマシティにお越しください。お待ちしています!」

 

取材・文:黒石悦子

 




(2015年4月10日更新)


Check
写真左より、桑野晃輔、三上俊。

極上文學「草迷宮」

発売中

Pコード:442-737

梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

極上シート-8500円(グッズ特典付)
指定席-5900円

[原作]泉鏡花
[演出]キムラ真
[脚本]神楽澤小虎

▼4月10日(金) 19:00
[出演]桑野晃輔/荒牧慶彦/萩野崇/祁答院雄貴/斎藤洋介

▼4月11日(土) 13:00
[出演]荒牧慶彦/三上俊/中村龍介/祁答院雄貴/斎藤洋介

▼4月11日(土) 18:00
[出演]桑野晃輔/荒牧慶彦/中村龍介/祁答院雄貴/斎藤洋介

▼4月12日(日) 12:00
[出演]桑野晃輔/荒牧慶彦/中村龍介/祁答院雄貴/松田洋治

※未就学児童は入場不可。

[問]CLIE[TEL]03-6455-4771

公式サイト
http://www.gekijooo.net/8th-kusa-meikyu/

当日引換券もあります。詳細&ご購入はチケットぴあのサイトへ
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