ホーム > インタビュー&レポート > 同窓会で次々と暴かれる過去の事実… 蓬莱竜太が描く骨太なストレートプレイで主演 井上芳雄にインタビュー!
――蓬莱さんの作品に出演するのは2009年、2011年の『Triangle』シリーズ以来ですね。
「そうなんです。そのときはショー・ステージという形でやらせていただいて、こんなに才能のある同世代の脚本家がいるんだ、と驚きました。『Triangle』では、蓬莱さんにミュージカルの世界に入ってきていただいたので、今度は僕が蓬莱さんの世界に飛び込んでいきたいなと思ったんです。それをパルコの方が蓬莱さんに伝えてくださって、どんなことがやりたいかを一緒に話して実現できることになりました」。
――一見、まったく違う畑のふたりに見えますが…。
「そうですよね。僕も『Triangle』がなかったら出会っていなかったと思うんです。ミュージカルってリアルな生活を描くことが少ないと思うんですが、蓬莱さんの作品は、普段僕たちが生活している中で起きるようなことを戯曲にされていて、言葉もこうして喋っていることと変わらないから、最初は新鮮でしたね。蓬莱さんには才能があるのはもちろんですが、同世代で、何かしら共通した世の中に対する想いを感じるので、そういうところが好きですね」。
――その世の中に対する共通の想いというのは、何か具体的にありますか?
「例えば井上ひさしさんだと、戦争や平和、歴史のことについて、ハッキリと本人の想いや見方を出されると思うんですね。そこが素晴らしくて井上さんの本が好きなんですが、実際に僕たちは戦争を経験しているわけではなく、平和な生活の中でいろんな思い悩むことがあったり、問題があったりする。それは全然ドラマチックなことではなく、白黒つかない話なんですよね。この人が悪いと思っていたけど、この人も悪いかも…って。ただ、今は白黒つかないかもしれないけど、とにかく考え続けようという姿勢があって、その想いに共感できるんです。白黒つけにくい時代だからこそ、考えることを放棄しない。それくらいはできるだろうって思うんです」。
――なるほど。今回の作品にもそういう要素が含まれているんですか?
「そうですね。この作品は、ある地方都市を舞台にした同窓会の話で、そこで起きる出来事が描かれていきます。で、鈴木砂羽さん演じるかつてマドンナだった女性が、都会に出て色々あって戻ってくるんですが、何があったんだっていうくらい人間性が変わっていて。その今の良くない状況を、“あの時のあの一言が私をめちゃくちゃにした”と、先生に責め立てるんです。でも先生の立場から展開する理論も、もっともなことを言っているような気もしてくる。じゃあ正しさはどこにあるんだっていう話で、お客様も観ながら色々と考えると思うんですよね。これから生きていくにはどうすれば良いんだろうって思うんじゃないかな」。
――お客様にも繋がる部分があると。
「蓬莱さんはストーリーテリングがとても上手なので、興味を引きつけて離さない。今回も最初は“同窓会あるある”みたいなコミカルな場面から、段々とダークな部分を見せていく感じになると思います。ご自身も、今の自分たちと繋がっているものがやりたいと仰っていたし、この作品では、地方都市に残っている人と、出て行った人、戻ってきた人という風に、それぞれの立場で共感できる部分もあると思うんです。そういうところも観ていただけると嬉しいですね」。
――その中で、井上さんはどんな人物を演じるのですか?
「僕は元学級委員で、今は教師の設定。生徒から人気もあって、順調に生きている男だとは思うんですが、過去の問題が明らかになるにつれて、彼の闇も見え出してくるという。僕も学級委員をしたことはありますし、生徒会長もしていたので、そういう意味では共通点がありますね」。
――鈴木砂羽さんをはじめ、共演者も素敵な方々が揃いました。
「今回、初めてご一緒する人たちばかりで、僕が知っている人は誰も出さないっていう、蓬莱さんの狙いらしいんです。知っている人がいると安心だと思いますが、せっかくストレートプレイをするなら、よりアウェイ感のあるところでどれくらい自分ができるかを試したいと思っているので、有難いですね」。
――ストレートプレイの魅力はどこに感じられていますか?
「やりたいというよりは、やらなきゃという義務感みたいなものがありますね。ミュージカルだけをやっていては、お芝居が広がらない気がするんです。ストレートプレイの稽古場ではいつも、役者さんそれぞれが四六時中演技のことを考えているのに刺激を受けますし、単純に考えると、ミュージカルは踊りと歌があるので、100%演技のことだけを考えられるストレートプレイの現場に身を置いて得たものを、ミュージカルにも活かしたいと思うんです。で、その経験を重ねていったときに、いつかミュージカルとストレートプレイという境界線がなくなって、お芝居とか舞台という括りになれば良いなと思っています」。
――2015年はこの『正しい教室』の他に、ミュージカルでは『エリザベート』のトート役も決定していますね。
「ジャンルも色々と幅広くやらせていただけるようになりましたし、毎回挑戦ではありますが、広いなりにも落ち着いてやりたいなと思います。『エリザベート』では、またトート役で戻ってこれるのがとても嬉しいですが、キャストも一新されますし、どうなるか想像がつかないですね。すごく楽しみです」。
――お客様にも、色んな一面を観ていただきたいですね。
「そうですね。ミュージカルで知っていただいた方も、ストレートプレイの世界に脚を踏み入れていただけると嬉しいですね。蓬莱さんは、絶対面白い話を書いてくださるので、期待して待っていてほしいと思います」。
取材・文:黒石悦子
(2015年3月13日更新)
発売中
Pコード:441-257
▼3月28日(土) 14:00/18:30
森ノ宮ピロティホール
全席指定-7800円
[作][演出]蓬莱竜太
[出演]井上芳雄 鈴木砂羽 前田亜季 高橋努 岩瀬亮 有川マコト 小島聖/近藤正臣
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション
[TEL]0570-200-888
「正しい教室」
http://www.parco-play.com/web/program/tadakyo/
いのうえ・よしお●1979年生まれ、福岡県出身。2000年にミュージカル『エリザベート』のルドルフ役でデビューを飾る。以降、その高い歌唱力と存在感で数々のミュージカルや舞台に出演。役者以外にも浦井健治、山崎育三郎の3人ユニット“StarS”で、アルバムリリースやツアー、武道館公演などを行っている。近年は井上ひさし作、栗山民也演出の『組曲虐殺』などストレートプレイや映像作品にも出演、2013年の第20回読売演劇大賞優秀男優賞や、今年の第36回松尾芸能賞優秀賞を受賞するなど、俳優として高い評価を得ている。