ホーム > インタビュー&レポート > ケラリーノ・サンドロヴィッチら 名だたる作家陣が脚本提供 人気コントユニット・親族代表が 過去作品の“ベスト盤”を上演!
――まず、今回はどんなことをされるのか、教えてください。
嶋村「過去公演のベスト盤という形でやらせていただきます。『好きなネタは何ですか?』と、ネット上でファンの皆様にお聞きして出た結果を参考にしつつ、メンバーそれぞれがやりたいネタを会議して6~7本、上演作品を選びました。ハイバイの岩井秀人さん、ケラリーノ・サンドロヴィッチさん、小林賢太郎さん、故林宏志さん、ブルー&スカイさん、演出もしていただいているピチチ5の福原充則さんの作品を上演します」
竹井「非常に作家陣が豪華で、それぞれの個性が出たバラエティに富んだ内容になるのではないかなと思っております」
野間口「これだけの作家さん方の作品を一度に全部見れるというのはなかなかないですしね」
嶋村「我々としても、本当に幸せなことだなと思っております。1本1本の内容に関しては来ていただいてのお楽しみで」
野間口「2013年の『第三次性徴期』という作品をしたとき、客層がガラッと変わったんです。それまでは小劇場好きの大人の方が比較的多かったんですけど、若い方が多くなって。昔の親族代表はこんなことやっていましたよ、ということも含めてお見せしたいなと思ったんです。それと、今回4都市での上演で、大阪は2度目ですが広島と福岡は初めてなので、新作を持っていくよりは、お披露目がてら、僕たちらしいものをやって知っていただきたいという想いがありますね」
嶋村「まだ僕たちを知らない方に観ていただけるのが嬉しいですね。もちろん一度観ていただいた方も楽しめるようなものに仕上げますが」
――全国ツアーは今回が初めてということですが、このタイミングでやろうと思ったのはどうしてですか?
野間口「僕が『THEATER View FUKUOKA』というフリーペーパーでコラムを書いていまして、その関係で福岡公演をやらないかとお声がけいただいたんです。それで、福岡に行くんだったら大阪も、大阪に行くんだったら間をとって広島も、と思って (笑)。東京もザ・スズナリで2日間やってから地方をまわって、もう一度駅前劇場に戻ってくるという、今までにない冒険をしています(笑)」
――大阪以外は初めてなんですか?
野間口「初めてです。大阪も前回はお客さんがほとんど入らなくて……(笑)。かなり苦い思い出があるので、リベンジする気持ちですね」
竹井「声がよく響いていましたよね(笑)」
野間口「僕らの声だけね」
――作風は結成当初に作・演出をされていた故林さんの影響が出ている感じですか?
野間口「故林さんと離れてからは変わりましたね。演出として福原さんが関わってくれるようになったので、親族代表らしさは残しつつ、新しいものにしていこうと思ってやっています。故林さんから離れた当初、作家さんに『今まで故林さんのところでやってないような感じにしたい』とお願いしたら、下ネタばかりが集まって(笑)。そういうこともあったので、それ以降はやんわり下ネタはお断りしています」
竹井「それでもしつこく書いてくる人はいるんですけどね(笑)」
――親族代表らしさというのはどういうことですか?
野間口「前に出ないところですかね。芸人さんのやっているコントだと笑いをとろうとがむしゃらにいくと思うんですけど、僕らはまず芝居ありきで、最終的な落としどころが笑い。お客さんの空気ももちろん読んだりはするんですが、ひとつハネた笑いがきたからってどんどん重ねていくということはなく、淡々と、ちゃんと芝居を見せるスタイルなんです」
――前回の大阪公演は観客が少なかったとのことですが、来てくださった方の反応、手応えはいかがでしたか?
竹井「空間に対してお客さんが少なかったということもあって、笑い声としてたくさんいただいた感じはしなくて。不安だなと思って終演後にロビーに行くと、意外とみなさんは楽しんでもらえていたことが分かって、想像していたよりは楽しんでもらっていたんだなという印象です」
――お笑いのジャンルではなく、お芝居なんですよね。
野間口「お笑いと括られるとプレッシャーがあるというか、以前テレビにも出たいなと考えていたんですけど、そこで『7秒に1回笑いをとってほしい』と言われたんですね。僕らは下手すると最初3分くらいネタ振りで笑いなく終わって、その後やっと積み重ねていくこともあったりしたので、テレビは無理だねっていう話になったんです。だからお笑いという括りではなく、芝居を観てもらうということになりますね」
竹井「もちろんネタの中でギャグはやっていますが、基本的には作品のお話をちゃんと成立させるという目的があって。笑いのためだけにやっている感じではなくて、お話の中でどう笑いが生まれるかというところを目指しています」
――コメディという位置づけになるんですかね?
野間口「何かしら括られるとどうなんだろう。芝居としてもどうなんだろうっていうところもあるんですけど……」
――そもそも、親族代表という名前はどこからつけられたんですか?
野間口「故林さんにつけていただいたんです。僕らがもしも有名になったとき、結婚式やお葬式で『親族代表の御挨拶です』って言われたときに子どもたちが、『親族代表のお兄ちゃんたち来てるの!?』っていう喜び方をしてほしいという願いをこめて(笑)」
嶋村「故林さんはどっちかというとお葬式のつもりだったんですけど」
――今回のネットでの投票はいつやられたんですか?
嶋村「2014年の6月、7月の2ヵ月ですね」
――投票の結果をご覧になってどう思いました?
竹井「順当と言って良いんじゃないですかね」
野間口「上位3本くらいはやっぱりこれかなという感じでしたね」
――それは以前上演された時に手応えがあったからですか?
野間口「そうですね。お客さんに喜んでいただけた印象はあります」
――上位作品は時期や作家さんに偏りがあったのか、それともまんべんなく?
野間口「まんべんなくありましたね。ただ観たばかりの印象が強かったというのもあるので、『第三次性徴期』のネタは多かったですけど、峯村リエさんにも出ていただいていたので、今回はそういうネタができないんです」
――作品にテーマがあって括られるわけではないんですね。
野間口「そうですね」
嶋村「岩井さんの作品と賢太郎さんの作品では演技が全然違いますしね(笑)」
――ツアーは全部一緒の演目で?
野間口「そうです。東京に戻ったときにゲストさんを呼ぶかもしれないっていうくらいですかね」
――それぞれの作品は今回演出が変わったりするんですか?
野間口「ありますね。ケラさんの作品は、前回福原の演出ではなかったので、新しい形になると思います」
嶋村「7~8年経っていると時事ネタとか、どうしても変えざるを得ないところが出てきたりしますね」
野間口「福原は上位だった作品とは別に、本人的に全国でやりたい作品を上演します」
――福原さん的に思われることがあるんですかね。
野間口「僕らをずっと見てきてくれましたし、結婚して子どもができたりとかいろいろあった中で、『親族代表にはこれ以上書けない。これが一番極まった台本だ』と言っていた作品なんです。それを全国で見せてどういう反応が得られるのかというのを試したいんだと思います」
嶋村「親族代表にはこれで書き尽くしたってね」
竹井「その後も書いているけどね(笑)」
――1本どれくらいの長さですか?
野間口「15分くらいですね」
竹井「故林さんの作品に関してはちょっと短めです」
――毎回豪華な作家さんが参加してくれて、自分たちのために書き下ろしてもらえる気分はいかがですか?
野間口「幸せですよ~」
嶋村「申し訳ないですね(笑)」
野間口「スズメの涙ほどのお金しかお渡しできないんですが、それでこんなに良い作品をいつも揃えてくれるな~と、本当に感謝しています」
嶋村「本当に贅沢ですよね」
竹井「皆さんが普段やられている長尺のものと違って、15分とかに凝縮させたものなので、やっていて旨みたっぷりという感じがしますね」
――これだけの作家さんたちが書きたいと思う、親族代表の力とはどこにあると思いますか?
嶋村「礼儀正しいとは思いますね(笑)」
野間口「作家さんそれぞれに、稽古場に一度来ていただいて、ダメ出しをしていただくという作業を一回踏まえるんです。作家さんの意図を忠実にやろうとすることが、作家さん的にも損がないというか。それと、これだけ豪華な作家さんが揃うと、『いっちょやったろか!』みたいな気持ちが作家さんの中で生まれるんじゃないかと思うんですよね。ケラさんとかもきっとブルー&スカイに負けるものかみたいな気持ちもあるでしょうし。だから、僕ら自身が何か良いというのは思わないですね……(笑)。頑張っていますけど」
――いただいた作品に意見を言うこともなく。
野間口「ないですね」
嶋村「それは面白いので」
野間口「演出の福原さんも、このセリフはカットして良いとか、これは足そうというのがすごく上手なので、そこに安心して任せています」
竹井「例えば、岩井さんの脚本はそれぞれやったことのない種類の台本で、そういう意味の『これどうするんだ?』という戸惑いはありましたね。前田司郎さんとか」
――映像などでも個々で忙しくされている中で、親族代表の活動も15年続けてこられた理由はどこにあると思いますか?
竹井「自分にとっては修業の場なんですよ(笑)。他の劇団さんに客演させてもらったりとかしていますけど、親族代表ほど苦しい現場はないので。それにこれだけ面白い脚本でお客さんの前でやらせてもらって、お客さんが喜んでくれているというのは、他では得られない幸せがあるので、それもあって続けられているのかなと思いますね」
嶋村「役者が一現場でこれだけの方々とお仕事ができるというのは本当に贅沢。今後も手放したくないなと思ってやっております」
野間口「僕は、精神的なバランスを保つためです。真面目な芝居や重い芝居ばかりをやっていると精神的に破たんしそうになるので、『やろうよ』と言えばやってくれるホームグラウンドがあることで精神的なバランスをとっている気がします。あとは嶋村も言いましたけど、これだけの作家さんとずっと繋がっていられるというのも役者冥利に尽きますので、その2点ですかね」
――竹井さんは苦しいと仰っていましたが、どう苦しいんですか?
竹井「コントと謳っている以上、笑いを求めていかなくちゃいけないですよね。笑いについてすごく分かっていれば、お客さんがいない稽古場でもいろんなことが想像できると思うんですが、僕はどちらかというと苦手なので、想像しながら生み出すという苦しみがありますね」
――笑いに落とし込まなきゃいけない難しさ。
竹井「そうですね。そのためにお話の中でどういたらいいかとか、どう喋ったらいいかというのを考えなきゃいけない。普通のお芝居と違って笑いに移るようにやらなきゃいけないというのが僕にとって難しいことで、ハードルが高い」
――3人のお話を聞いているとお芝居がベースということなんですが、コントであることもブレずにされている理由というか、笑いにこだわる理由が何かあるのでしょうか?
野間口「ハードルを高く設けているだけだと思います(笑)。それと、知り合いにチラシを渡すときに言いやすいというのはありますね。『コントなので気軽に見に来てください』と(笑)。僕は観終わった後に何も残したくないというか、笑って楽しんでいただけるだけで満足なんです。それでお芝居と言っちゃうとどっちつかずな感じがするので、笑いを着地点にしていますというのを先に謳っておかないと、自分たちにも甘くなっちゃう」
嶋村「僕も単純に笑ってもらえるのが嬉しいですね。僕は岡山が地元で、高校卒業したら誰か相方を作って、一緒に大阪に出ようかなと思っていたくらい芸人さんに憧れていたんです。でも、縁があってこういうユニットが組めたので良かったですね」
竹井「僕もハードルが高いというだけで、笑ってもらうこと自体は好きですね」
野間口「笑いというのは一番難しいことをやっていると思うんです。芸人さんにしてもそうですけど、コントが面白い人って芝居が上手いこと前提じゃないですか。僕たちはあくまでも役者ですし、芝居はちゃんと作ろう、それで最終的に笑いとして落とそうという意識ですね」
嶋村「キングオブコントとか観てても、若い人でも演技がすごく上手いので、もっと修業しないと!と思いますね」
――アドリブはまったくナシで?
野間口「ないです」
――それぞれの脚本にある中の表情の作り方、言い回しでどう表そうかと研究されている感じですね。
嶋村「一人ひとり違うので大変ですね。5本のスタイルを一度にするので、そういう意味で辛いというのはありますね」
野間口「あと演出の福原さんが厳しくて。僕らに要求するのも『もっといけるでしょ、もっといけるでしょ』って要求してくれるので。有難いことなんですけど、毎度毎度泣かされながら稽古しています。一度すごく乱暴なダメだしがあって、『もう下手』って言われて3人とも絶句しましたね(笑)」
嶋村「返しようがなかったね(笑)」
野間口「すみません…って」
――ユニットを組まれたのは故林さんプロデュースのコントサンプルに参加したことがきっかけとのことですが、最初から相性が良かったのですか?
野間口「バランスは良かったんじゃないですかね」
嶋村「そこは故林さんのセンスですね」
野間口「よくぞ選んでくださいましたという感じですかね」
嶋村「故林さんが集めてくれなかったら多分友達にはなっていないタイプ(笑)」
竹井「良い距離感を保って15年やってきている気がするんです。友達からスタートしているわけじゃなく、面白いコントをするためにというのでずっときているので、そういう意味ではとても良い距離感でやれているなとは思います」
野間口「プライベートで会ったこと1~2度しかないでしょ」
竹井「3人だけで居酒屋行ったのは1回しかない。誰かが居てというのはあるんですけど」
――ツッコミ役はいるんですか?
野間口「比較的ツッコミが多いのは竹井ですね」
竹井「ツッコミというか、被害者です(笑)。何かおかしなことを言われて困る人。それがちょっと笑いになるタイミングだったりしますね」
野間口「それは故林さんのときからそうで、被害者と加害者みたいな構造になっていましたね」
嶋村「故林さんのときは役割がハッキリしていたんですけど。15年経つにつれて変わってきましたね。いろいろやるのが面白くなってきました」
竹井「僕らのことを何度か書いてくださっている作家さんはある程度知ってくれているので、今度はこんな役をやらせてみようという意図も少しはあるんじゃないかなと思います」
――様々な作品がある中で、タイトルはどういう風に決められているんですか?
野間口「喫茶店で1時間くらいで決めます(笑)」
嶋村「あまりタイトルにこだわってないんですよね」
竹井「作家さんって本当にすごくて、適当につけたタイトルでもリンクするように書いてくださって」
野間口「ちょっと踏まえてくれたりするんですよ」
――じゃあ最初にタイトルを伝えて書いていただくという。
野間口「そうです。ただ別にそこにこだわらなくても全然構わないとは伝えているんですけど。作家さん選びとタイトル決めが一番最初の作業ですね」
――今回は全国ツアーだから“旅行記”ですか。
嶋村「そうです。安易ですね(笑)。最初は親族旅行だったんですけど」
――いろんな場所で笑うポイントも違うんでしょうね。全国まわってみたら面白そうですね。
野間口「前回の大阪公演でも東京の方とはちょっと違うところで笑いが起きてたりしたので、楽しみですね」
嶋村「後はお客さんが増えてくれると嬉しいですね(笑)」
――今後の活動のペースは考えられているんですか?
竹井「僕らいつも終わってちょっとしてから、『次どうする?』って相談して」
野間口「次回公演に追われていないんですよ」
嶋村「普通の劇団さんだと公演中に次の小屋をとってとかするんですけど」
竹井「それも僕ららしくて良いのかなと思ったりします(笑)」
野間口「北海道、沖縄にも行きたいので。それの足がかりとして今回、感触を確かめたいですね(笑)」
嶋村「またツアーをして、大阪に戻ってこられるように頑張ります!」
取材・文:黒石悦子
(2015年1月 9日更新)
発売中
Pコード:440-270
▼1月17日(土)15:00/19:00
▼1月18日(日)15:00
HEP HALL
全席指定-4000円
[演出][作]福原充則
[作]ケラリーノ・サンドロヴィッチ(脚本提供)/ブルー&スカイ(脚本提供)/岩井秀人(脚本提供)/故林広志(脚本提供)
[出演]嶋村太一/竹井亮介/野間口徹
※当日喪服着用来場で会場にて500円返金。詳細は問合せ先まで。
[問]イマジネイション
[TEL]03-6325-0302
演劇系コントユニット親族代表公式ウェブサイト
http://shinzoku.pepper.jp/