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朗読劇なのに走りっぱなし!?
新たなスタイルで見せる朗読劇「極上文学」が大阪に初登場!
『走れメロス』出演の川下大洋にインタビュー

日本文学の朗読劇に、パフォーマンスや照明、音楽、舞台美術などの演出も取り入れ、“新たな朗読劇”のスタイルで見せる「極上文学」。その第7弾となる太宰 治の『走れメロス』で、初の大阪公演が実現。12月27日(土)より大阪・OBP円形ホールにて上演される。今回、メロスを演じる大河元気ら若手俳優が活躍する中で、暴君ディオニス王役として舞台の空気をピリッと締めるベテラン俳優・川下大洋に、見どころや意気込みを聞いた。

――すでに東京公演を終えられましたが、感触はいかがですか?
 
「熱い芝居ですよ~。お客さんも熱いしね。昔の小劇場ブームって、お客さんは何を見ても笑うし、笑いに劇場に来る雰囲気があったんですよ。その頃の雰囲気を思い出したくらいお客さんもノリノリで、劇場にとても良い空気が流れていました。朗読劇は普通のお芝居ほど稽古で作り込まないんですが、このステージは動きがあるので、朗読劇にしては段取りがたくさんあるんですよね。だからすごく新鮮な気持ちでやれているのが良いなと思いますね」
 
――元々、作品に持たれていた印象はどんなものでした?
 
「おそらく多くの人と同じように、昔読んだなって思うくらいのものだったんですが、改めて読むと、人物が深く描かれているんですよね。インターネットでも全文読めるので、この機会にみんなに読んでいただきたいですね。事前に読んで、“これをどう見せるの?”と思って来ていただけると、より楽しめるんじゃないかな。今回の作品では、『駈込み訴え』や『女生徒』など、ほかの太宰作品も人物を深める要素としてプラスされているんですよ。それもすごく楽しめると思います」
 
――メロスと親友セリヌンティウスとの友情を軸に描かれた作品ですが、今回改めて『走れメロス』に触れて、新たな発見はありましたか?
 
「私は残虐な王の役で、このお話の王様って、威張っていて悪い奴という印象しか持っていなかったんですが、掘り下げてみると、そうならざるを得なかった部分があったんだな、ということを感じました。今回の作品では、太宰の原作をもとに、新たに書き込まれているところもたくさんあって、一人の人間としてしっかり深めて描かれているので見応えがあると思いますよ」
 
――この「極上文学シリーズ」は、朗読劇といってもパフォーマンスや照明、音楽、舞台美術などの演出もあり、聴く楽しみと観る楽しみもありますよね。
 
「やっぱり朗読って、人のフィルターを通して聴くことに意味があると思うんですね。最初はそれにさらに、衣装、舞台装置、照明効果、音楽をつけていいのかという気持ちは少しあったんですが、実際やってみると、新しい化学反応が起きるんですよ。でも、それなら芝居でやっちゃった方が良いんじゃないの?という話になるかもしれない。そこは朗読の良さがあって、朗読劇はセリフだけじゃなくて地の文もすべて読みますからね。舞台上にいる人全員が語り手として、交替で役割を持ちながら話が進んで行くんですよ。“メロスは立ち止った”とか“目の前を大きな川が流れている”と書かれた地の文をメロスが言ったり、そこにいないはずの王様が言ったりすることで、王様とメロスの距離がわかったりするんですよね。それは普段のお芝居にはないことで、演者同士でも、演者とスタッフとの間でも化学反応は起きるし、お客さんとの間にも新しい反応が起きるんですよ。それが朗読劇ならではの面白さだなと思います」
 
――普段のお芝居とは違う部分も多いかと思うのですが、朗読劇ではどういうところを意識されているんですか?
 
「何よりも大きな違いは、ホンを持っていること。本番前の舞台袖では『ちゃんとホン持っているかな?』って確認するし、『俺のホンかな、ページ抜けてないかな』ってすごく心配になりますね(笑)。朗読劇は覚えちゃダメで、読者が初めてホンを開いて、初めて読むときの気持ちでやることが理想だと思うんです。それで初めて読む感動を共有することがすごく大事だと思うんですけど、ずっとホンを見ていてもダメなんですよね。読み手それぞれのスタイルがあると思うんですが、私は、読みながらもお客さんに語るというのが朗読の基本だと思うんですよね。なので、お客さんに語りかけながら読むことを意識してやっています」
 
――そうなると、普段のお芝居とはまた違う難しさがあると思うんですが、実際いかがですか?
 
「ありますね。どれだけ役になりきるかのバランスが難しいです。お芝居だったらなりきらなきゃいけないけど、朗読劇は役に入り込みすぎちゃいけないんですよね。常に語り手としていなきゃいけないので。かといって、地の文も役のキャラで語るので、奥深いなと思います」
 
――王様という役でありながら、語り手として読まなければならない。
 
「王様が『走れメロス!』とか言うんですよ(笑)。矛盾してるように思うかもしれないけど、そこも実は王様の心を表しているんですよね。人が信じられないからたくさんの人を殺してきたし、『遅れて帰ってこい』とか言うんですけど、心のどこかに信じたい気持ちも持っているからこそ、『走れメロス!』とも言うし。そういうところも感じていただけるとより楽しんでいただけるのではないかなと思います」
 
――それぞれの役はダブルキャストやトリプルキャストで、組み合わせによっても印象が変わりそうですね。メロス役に関しては、大阪公演では大河さんだけですが、印象はいかがですか?
 
「やるべきことはしっかりするし、読み方が誠実だなと思いますね。だからこのメロスの誠実なキャラクターにすごくぴったりだなと思います。誠実じゃないと話が成立しないですからね。この作品は、毎回組み合わせが変わるマルチキャスティングなんですが、同じ役でも演者によって印象が全然違うので、そういう部分でも楽しんでいただきたいです。ディオニス王も、私と名高達男さんとのダブルキャスト。名高さんとは見た目が全然違うんですよね。名高さんは大きくて立派で逞しくて、王様らしい威厳があるんですけど、私は威厳なんてまったくないですから(笑)。それくらいほかのキャストも全然違うキャラの人を当てはめているんですが、それが素晴らしい化学反応を生みだすんですよ。私たちもその化学反応を楽しみながらやっています」
 
――ディオニス王役については、どういうところを意識して読まれていますか?
 
「名高さんに負けないように、偉そうにしなきゃと思って読んでいます(笑)。あと、髭は伸ばしました」
 
――役作りで伸ばされているんですね(笑)。
 
「最初にパンフ撮影したときは伸ばしてなかったんですよ。その後、名高さんにお会いして、これはちょっと威厳を出さなきゃ、と思って髭を伸ばしたんです(笑)。あと、さっきも言いましたが、朗読するからには、お客さんが最大限に想像できるように伝えなきゃいけないので、あくまでも自分は語り手で、役になりきらないようにしています」
 
――誰もが知る作品を改めて朗読劇で見せることについては、どういう良さがあると思われますか?
 
「私自身がこの作品を改めて読んで、これをきっかけに別の作品も読みたいなと思うようになったんですよね。自分は知っていると思っていたけど、改めて読んだら『あれ、こんな話だったっけ?』って思うことも多いですし。日本には良い作品がたくさんあるのだから、この極上文学シリーズをきっかけに、いろんな作品に触れてもらえたら良いなと思うんです」
 
――日本文学の良さを再発見できる魅力がありますね。この作品ではそれぞれのキャラクターのほかに“具現師”や“奏で師”という方がいらっしゃると思うんですが、どんなことをされているんですか?
 
「具現師は、いろんな人物や物を具体的に表してくれる人たちで、主要な役の周りの人たちや犬を表現したり、セリフに合わせて絶妙なタイミングで舞台装置を動かしてくれたり。ほかの演者に合わせて動いて表現してくれているので、彼らが一番稽古をしていましたね。奏で師は、ステージ上でピアノを弾いている人。その日の空気に合わせて、アドリブで弾いてくれるんです。もちろん大体の曲は決まっていますが、響きや微妙なタイミングを調整しながら弾かれていますね」
 
――本当に、一般的に持たれている朗読劇の印象とは全然違いますね。
 
「朗読の枠を超えまくっていますね(笑)」
 
――大阪公演でのお客さんの反応、どんなことを期待されていますか?
 
「ビックリしてほしいですね。良い意味で『何この舞台!』って思うんじゃないかな。ぜひ、イケメン俳優のほとばしるエネルギーと、躍動する肉体を楽しみに来てください」

取材・文:黒石悦子



(2014年12月25日更新)


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本格文學朗読劇 極上文學 第7弾
『走れメロス』

発売中 Pコード:440-556

▼12月27日(土)14:00/18:00
▼12月28日(日)12:00/16:00

大阪ビジネスパーク円形ホール

極上シート-8000円(特典付・前方エリアシート)
指定席-5500円

[原案・原作]太宰治 [演出]キムラ真
[劇作・脚本]神楽澤小虎

[12/27(土)14:00出演]大河元気/村田充/
西村ミツアキ/天羽尚吾/川下大洋

[12/27(土)18:00出演]大河元気/村田充/
西村ミツアキ/鈴木裕斗/名高達男

[12/28(日)12:00出演]大河元気/萩野崇/
西村ミツアキ/鈴木裕斗/名高達男

[12/28(日)16:00出演]大河元気/村田充/
西村ミツアキ/鈴木裕斗/川下大洋

※未就学児童は入場不可。

[問]キョードーインフォメーション
■06-7732-8888

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