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プロジェクションマッピングと演劇の融合で
“人間の存在”を描いたハイバイの話題作
『霊感少女ヒドミ』が上演!

2012年に向田邦子賞、2013年には岸田國士戯曲賞を受賞した脚本・演出家の岩井秀人。彼が主宰する劇団・ハイバイでは、16歳から20歳まで引きこもりを経験した岩井自身の話や、家族の話などの身近なこと、外の世界で出会った人の話を題材に、可笑しくもどこか痛みを感じる物語を構築する。今回、1年ぶりに行われる関西公演では、プロジェクションマッピングと演劇を融合させた2006年初演の作品『霊感少女ヒドミ』を、兵庫・伊丹AI・HALLにて上演。公演を前に、本作について岩井に訊いた。

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舞台美術も照明も使わず、白いパネルに映し出したプロジェクションマッピングと役者の演技だけで成立させる舞台。映画好きの岩井が、ビョークやローリング・ストーンズのプロモーションビデオを手掛けるミシェル・ゴンドリー監督の映像を見て、取り入れたいと考えた。

「2006年の初演当時、演劇ではタイトルや俳優紹介くらいでしか映像は使われていなかったんですが、映像の世界ではプロジェクションマッピングは結構使われていて。演劇に取り入れると面白そうだなと思ったんです」。

物語は、福生(ふっさ)という土地に暮らす、胸に大きな空虚を抱いている女の子・ヒドミを中心に展開。叶わない恋をするヒドミと、その恋の相手・ヨシヒロ、そしてヒドミに恋をするふたりの幽霊が登場する。

「僕は引きこもりだったとき、“生きているのか何なのかわからない時期”があって、その状況って幽霊に変換できるんじゃないかな、と思ったんです。これは恋愛の物語で、メインは霊感少女ヒドミという実態のある女の子。でもこの子自身もあまり生きている感覚を持っていなくて、さらに部屋にはヒドミに愛されたい幽霊がふたりいる。愛されたい人に愛されていない限りは、存在している感覚はハーフになりかねないと僕は思うんです。この物語では、彼らがどうやって生きている人間に愛されようとするのかを描いています」。

初演時は映像も自作したが、映像作家・ムーチョ村松との出会いにより、2012年に再演。“目新しい演出”よりも物語の中身に心を動かされた観客が多かったことから、作品の可能性を感じ、今回再び上演することになった。

「2011年の『ある女』という作品でムーチョ村松という鬼才に映像を作ってもらったんです。そのときに、ものすごく情報量が多いけど全部拾える、ただ格好良いだけじゃない素材の選び方に感動したんです。それで彼にちゃんと作ってもらって再演をしました。映像の質は格段に上がりましたし、プロジェクションマッピングが新しいと思って上演したんですが、お客さんからの感想を読んだとき、映像についての感想がなく、自分の記憶や経験を思い起こさせられたという感想が多かったんです。そういう感想って、僕が演劇をしている中で一番大事なことで、観劇後にお客さんが自分の話をし始めるようなものが優れた演劇の作品だと思っているので、意外とこの作品はこれから再演していってもいいなと思ったんです」。

今回の再々演では、新たに映像を作り直して上演。映像内の美術と“実態”をうまく絡ませて見せたいと語る。

「単に映像を映し出すだけじゃなくて、たまに物自体も実際に動かすと、脳みそがずらされる感覚になってすごく面白いと思うので、今回はそういうことにもチャレンジしたいと思います」。

可笑しな状況に笑いながら、どこか共感したり、身につまされる感覚を覚える岩井作品。プロジェクションマッピングを使った演出を楽しみながら、スッと物語に引き込まれていく不思議な感覚をぜひ味わってほしい。

 

取材・文:黒石悦子




(2014年11月11日更新)


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撮影:曳野若菜

ハイバイ「霊感少女ヒドミ」

▼11月15日(土)17:00/20:00

▼11月16日(日)14:00

AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)

一般-3000円

学生入場券引換券-2500円(公演当日要学生証)

[作・演出]岩井秀人

[出演]石橋菜津美/富川一人/用松亮/平原テツ

※未就学児童は入場不可。

[問]ハイバイ
[TEL]080-6562-4520ハイバイ

「霊感少女ヒドミ」

▼11月15日(土)17:00/20:00

▼11月16日(日)14:00

AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)

一般-3000円

学生入場券引換券-2500円(公演当日要学生証)

[作・演出]岩井秀人

[出演]石橋菜津美/富川一人/用松亮/平原テツ

※未就学児童は入場不可。

[問]ハイバイ
[TEL]080-6562-4520

ハイバイ公式サイト
http://hi-bye.net/

AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)
http://www.aihall.com/


●プロフィール

岩井秀人(いわい・ひでと)

1974年生まれ、東京都出身。2003年にハイバイを結成。2007年より青年団演出部に所属。家族、引きこもり、集団と個人、個人の自意識の渦などの描写を続ける。2012年、NHKBSプレミアムドラマ『生むと生まれるそれからのこと』で第30回向田邦子賞、2013年『ある女』で第57回岸田國士戯曲賞を受賞。役者としても活動し、2014年はWOWOW『罪人の嘘』、映画『青天の霹靂』などに出演。